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WTO新ラウンド交渉
(各交渉の現状と今後の日程)

平成15年5月

 2001年11月の第4回閣僚会議(於:ドーハ)で新ラウンド交渉(「ドーハ開発アジェンダ」)の開始が合意され、2002年1月から交渉が本格化している。各交渉グループの現状及び今後の見通しは次の通り。

1.交渉全体

(1) 枠組み 貿易交渉委員会(Trade Negotiations Committee :TNC)

(2) 議長 職責としてのWTO事務局長(スパチャイ事務局長)

(3) 交渉日程 2002年は、2月、4月、7月、10月、12月の5回開催された。2003年は、2月、3月、4月、5月、6月(2回)、7月の7回開催予定。

(4) なお、上記枠組みとは別途非公式閣僚会合(WTO加盟国の内、主要関心国が非公式に閣僚レベルで集まり、WTO新ラウンド交渉の進展状況、今後の取り組みについて議論するもの)が、今後、第5回閣僚会議までの間、必要に応じ数回開催される見通し。これまで、2002年11月(於:シドニー)、2003年2月(於:東京)の2回が開催され、今後、6月(於:エジプト)が予定されている。また、4月30日のOECD閣僚理事会(於:パリ)の際にも、NZ主催で非公式閣僚会合が開催された。今後の主要日程は次のとおり。

2003年6月下旬  
非公式閣僚会合(於:エジプト)
2003年9月10-14日 第5回閣僚会議(於:メキシコ・カンクン)
2005年1月1日まで 全ての交渉終結

(5) 現状 農業交渉のモダリティ確立期限が遵守できなかったが、各加盟国は交渉全体を停滞させるべきでないとの点で認識を共有している。



2.農業

(1) 枠組み 農業委員会特別会合(WTO協定に基づき、2000年から交渉が行われている)

(2) 議長 ハービンソンWTO官房長

(3) 交渉日程及び現状  

  【これまでの作業の経緯】
2002年6~9月に輸出競争、市場アクセス、国内助成に関するモダリティ(ルールを含む)の詳細な技術的検討を行った後、11月に、前3回の特別会合において技術的検討が不十分であったイシューについてのフォローアップを行った。また、特別会合の間に開催される累次の非公式会合にて、更なる技術的検討が必要な事項(例:輸出信用、関税割当運用等)について議論した。
2002年12月18日に議長がそれまでの議論を概括的に纏めた「概観ペーパー」を作成・配付し、1月にモダリティの包括的かつ実質的な検討を行った。
2月中旬には、それまでの議論を踏まえ、議長がモダリティ第一次案を提示した。その後、東京非公式閣僚会合、2月特別会合(24~28日)を経て、3月中旬にモダリティ第一次案改訂版(注)が提示された。
(注)本来、第二次案が提出される予定であったが、議長に第二次案を作成するための十分なガイダンスが与えられなかったため、第一次案の改訂版という位置付けになったもの。内容的にも、幾つかの微修正以外、改訂版は第一次案から変わっていない。
改訂版を受け、3月25~31日に特別会合が開催されたが、各国の立場の収斂はなく、ドーハ閣僚宣言パラ14で合意された2003年3月31日の期限にモダリティを確立することは出来なかった。

【今後の作業計画】
当面、技術的検討を行うための非公式会合を随時、開催。
その後、6月26日~7月1日、7月16~18日に特別会合を開催。

(4) 交渉のポイント  

 
(イ) 総論
ハービンソン議長によるモダリティ第一次案及び改訂版に対し、日本は、関税のハーモナイゼーションの要素や輸出入国間のバランスの欠如など、根本的な問題があるため、総体として受け入れられないものであるとする一方、米、ケアンズ諸国等は、全体的に保護削減の水準が不十分であり、野心の水準が低いと批判している。
(ロ) 市場アクセス:
関税率:
<論点>削減について、品目毎の柔軟性を主張するUR方式(日本、EU等支持)vs. 関税率の一律削減となるスイス・フォーミュラ(米、ケアンズ諸国支持)が大きな軸。
<第一次案改訂版>第一次案は、全ての関税を3つのバンドに分け、高関税程、大幅に削減するハーモナイゼーションの考え方が打ち出されている。
関税割当:
<論点>日本、EUは運用、透明性の改善を優先する立場。米国は拡大、ケアンズ諸国は枠の大幅拡大及び運用に関する規律の強化を主張。
<第一次案改訂版>最終譲許の関税割当数量が国内消費量の10%に満たない場合、10%まで拡大。関税割当対象品目の4分の1を上限として、同数の品目について数量を12%に拡大することを条件に、一部の品目について数量の拡大を8%に止めることができる。関割運用についても規律の強化。
(ハ) 国内助成:
<論点>国内助成総額への規律の必要性、「緑」の政策の要件、「青」の政策の存続、「黄」の削減水準、削減方法及びデミニミスの水準等が主たる争点。
<第一次案改訂版>「緑」の規律強化、「黄」の政策の60%削減、「青」の政策の50%削減若しくは「黄」への編入、デミニミス水準の削減。
(ニ) 輸出競争:
<論点>基本的な構図は、輸出補助金削減・撤廃を巡る米国・ケアンズ対EU。但し、輸出補助金のメイン・ユーザーであるEUは、米がメイン・ユーザーである輸出信用、食料援助の規律強化を主張。
<第一次案改訂版>輸出補助金の半分を5年間、残りの半分を9年間で撤廃。輸出補助金、輸出信用、食糧補助、輸出国家貿易に関する規律強化。
(ホ) 地理的表示(追加的保護の拡大):
<論点>ECは、市場アクセスの観点から、地理的表示の追加的保護の拡大による、過去に取得した商標等へのロール・バックを主張。米・豪等新大陸諸国は反対。
<第一次案改訂版>非貿易的関心事項の文脈で間接的に言及。


3.サービス

(1) 枠組み サービス貿易理事会特別会合(2000年から交渉が行われている)

(2) 議長 ハラ大使(チリ)

(3) 交渉日程  

  (イ)各国の自由化約束を巡る交渉
初期リクエスト(相手国に対する自由化の要望事項の提示):2002年6月30日が一応の提出期限。5月中旬日現在、日本には37カ国・地域(米、EC、カナダ、中国、韓国、一部のASEAN諸国、豪、インド、ブラジル、メキシコ等)からリクエストが接到。日本は期限内に全WTO加盟国(当時)に対しリクエストを提出。
初期オファー(相手国からのリクエストに対する自由化の回答):2003年3月31日が提出期限。日本は期限内に提出したほか、5月19日現在、米、EC、加、豪、NZ、ノルウェー、ウルグァイ、スイス等25カ国・地域からの提出が確認されている。
(ロ)ルールの策定を巡る交渉
国内規制の透明性等、政府調達、補助金、緊急セーフガード措置についてのルール策定の交渉が行われている。
緊急セーフガード措置については2004年3月15日が交渉期限。

(4) 交渉のポイント  

  (イ)「交渉の指針と手続き」(2001年3月採択)のポイント
目的と原則
交渉はサービス貿易の漸進的に一層高い水準を達成することを目的とする。
交渉はサービス貿易における開発途上国の参加の増大を目的とする。開発途上国に対する柔軟性が認められ、後発開発途上国を特に優先する。
交渉は、現行のGATSの構造及び原則を尊重する。
交渉の範囲
如何なる分野や提供の態様も予め排除されない。途上国の関心に特別の考慮を払う。
最恵国待遇(MFN)免除は交渉対象。
(ロ)サービス貿易理事会やその下部機関では、サービス分野毎の論点、サービス貿易に関する新たなルールの策定、途上国の関心事項(LDC配慮やサービス貿易の評価等)等についてマルチの議論が行われている。2003年3月にはサービス貿易理事会特別会合において自主的自由化の取扱に関するモダリティが採択された。
(ハ)2002年後半以降は、バイのリクエスト・オファー方式による自由化約束交渉が開始され、相互のリクエストに関する照会・説明等が行われてきた。初期オファー提出(2003年3月31日)を受けて、今後交渉が本格化する見通しであると共に、未提出国の早期提出が強く望まれる。


4.非農産品市場アクセス

(1) 枠組み 市場アクセス交渉グループ

(2) 議長 ジラール大使(スイス)

(3) 交渉日程 2002年は、4月、8月、9月、11月、12月の6回開催済み。2003年には2月、4月に開催済み。モダリティ合意期限5月末までの会合日程は5月の予定。

(4) 交渉のポイント  
 
今後、モダリティ提案に向けて閣僚宣言に記載された事項である関税及び非関税措置の引き下げ又は撤廃を如何なる手段で実現していくのか。
途上国からの要望であるタリフ・ピーク及びタリフ・エスカレーションの是正、並びに先進国からの要望である高関税の是正を如何に実現するか。
途上国に対する関税引き下げにおける相互引下げの条件の緩和や能力開発(キャパシティ・ビルディング)を如何に実施するか。
林水産品については、有限天然資源の持続的利用の観点を如何に主張していくか。

(5) 交渉の現状  

 
日本は、11月会合において、各国の譲許税率を係数とし、貿易加重平均により加盟国毎に引き下げの目標値を定める目標貿易加重平均関税率フォーミュラと特定の分野に対するゼロ・ゼロ(関税相互撤廃)及びハーモナイゼーション(関税率の平準化)を併用したアプローチを提案し、12月には林水産物に関しては有限天然資源の持続的利用の観点から品目毎の柔軟性が確保されるべきであり、ゼロ・ゼロには反対する旨提案した。
その後、議長は作業計画に基づき、2003年の第一回会合(2月会合)の前に各国からの18の提案をとりまとめたペーパーを作成し、2月会合においてはこのペーパーに基づき議論された。この会合中に日本はゼロゼロ・ハーモに関する詳細提案を提出し、18分野の中である程度具体的な対象範囲について言及した。
また、2月会合中に、議長は3月14日を目途として関税及び非関税障壁に関する提案をさらに歓迎する旨発言し、それまでに提出された提案をとりまとめ、議長のとりまとめペーパーの改訂版を提出。その中では関税に関しては25、非関税障壁については18の提案を論点毎にとりまとめている。
<関税に関する削減方式>
4月会合では、この議長による各国提案とりまとめペーパーに基づき、議論が行われた。その結果、大きく分けて(1)品目毎に削減(米、EU、NZ、チリ等)(2)平均値により削減(日本、メキシコ)(3)先進国には個別品目毎に大幅な削減、途上国に対しては平均値により先進国よりも低い削減率を適用し、最低削減率を定める(途上国10カ国共同提案(インド、エジプト他)等)の3つに分かれている。しかし、同じグループ内でも必ずしも削減方式に関して一致しているわけではない。
<非関税障壁(NTBs)>
本交渉グループにおいて取り上げられるべき措置の範囲を特定することに関して話し合われた。その際、他の交渉グループで取り上げられることが可能なものについてはそちらで議論すべき、現行協定の再交渉につながるようなことは避けるべきという点では議論が収斂しつつあるが、個別具体的措置の議論までには至っていない。
<議長によるモダリティの要素案>
5月16日に議長によるモダリティの要素案が各国に配布された。主な点は、(1)フォーミュラに関しては個別品目毎(ライン・バイ・ライン)での引き下げ、(2)分野別関税全廃については途上国の関心品目として7分野が例示されている。
今後は、作業計画で定められた5月末のモダリティ合意期限を控え、議長のモダリティ要素案を踏まえ、モダリティ合意に向けた議論が行われる。


5.ルール( (イ)ダンピング防止協定、(ロ)補助金協定、(ハ)地域貿易協定)

(1) 枠組み ルール交渉グループ

(2) 議長 グローサー大使(ニュージーランド)

(3) 交渉日程 ルール交渉グループ会合は、2002年は、3月、5月、7月、10月、11月に開催された。2003年はこれまで1月、2月、3月の3回開催され、今後カンクンの第5回閣僚会議までに、5月、6月、7月の3回開催される予定。

(4) 交渉のポイント及び現状

 
ダンピング防止(AD)については、AD協定の規律強化に向けた改正に消極的な米国との関係に留意しつつ、ADフレンズのペーパーに対する支持を広げつつ、規律の強化を実現することが交渉のポイント。これまでの会合において、日本を含む規律強化を目指す国・地域(ADフレンズ)は、AD協定の明確化及び改善すべき項目(32項目)を示唆するペーパー、これまでのペーパーの基礎となる考えをまとめて提示するコンセプトペーパー、32項目のうちAD課税の賦課期間を例外なく5年とする具体的な提案を提出した。また、EC、加、中国、インド等も明確化及び改善の必要な項目を提示するペーパーを提出し、フレンズの関心と重なるものも多い。他方米国は、発動当局の立場からのペーパーを提出した。
補助金協定については、ADと相殺関税措置の整合性の確保、実施問題の対応などが主な課題となる。漁業補助金については、補助金の議論の中でどのように取り扱うかが論点。これまで、NZを始めとする8ヶ国が共同で漁業補助金に対する特別の規律の必要性を主張しているのに対し、日本は、漁業補助金に特化した規律強化は行うべきではないと主張。
地域貿易協定については、GATT24条(8項の「実質上のすべての貿易」等)や GATS5条(1項の「相当な範囲の分野」等)の解釈を中心とする実質的問題が主な論点である。まずは比較的容易に合意が得られると考えられる手続的問題(地域貿易協定のWTOへの通報時期や情報提供の在り方など)から先に、非公式会合も活用しつつ議論が進められている。



6.TRIPS協定(知的所有権の貿易関連の側面に関する協定)の下でのワイン、スピリッツの地理的表示の多国間通報・登録制度

(1) 枠組み TRIPS理事会特別会合

(2) 議長 チョン大使(韓国)

(3) 交渉日程 2002年は、4月、6月、9月、11月の4回開催。2003年は、これまで2月及び4月の2回開催され、今後、閣僚会議までに7月に開催予定。4月に先だって、議長名のドラフトが提示。

(4) 交渉のポイント 強力な制度を求めるEU等とこれに反対する米国等の新大陸諸国の対立をどう埋めるか。日本は米国等と共同で法的拘束力のない制度を提案している。

(5) 交渉の現状
EU等と日米等がそれぞれ提案を提出。議論はこれまでのところ平行線。議長名のドラフトは、これまでの議論で提示された考えが両論併記の形で示されてるものであり、議論が収束に向かっている状態ではない。特に意見が分かれているポイントは、本制度の法的効果(法的拘束力を持つのか否か)、参加(本制度への参加は任意か強制か)の2点。
また、議長ドラフト提示の直後に香港が独自案を提示。法的効果に関しては、一応の証拠(prima facie)としているが、参加に関しては任意であり非参加国に対しては法的効果は発生させないとしている。
なお、多国間通報・登録制度の交渉とは別に議論が行われている(TRIPS理事会通常会合)であるが、関連の深い議論として、地理的表示の追加的保護の産品のワイン・スピリッツ以外への拡大の議論がある。チーズ、ハムなど他の産品へも拡大すべきとするEUをはじめとする旧大陸諸国と、産品拡大に反対する米、豪などの新大陸諸国が対立している。地理的表示の産品拡大はTRIPS理事会のみならず農業交渉(2.(4)(ホ)参照)、実施(10.(2)参照)においても議論が展開される状況にある。


7.貿易と環境

(1) 枠組み 貿易と環境に関する委員会(CTE)特別会合

(2) 議長 ビケ大使(ガボン)

(3) 交渉日程 2002年は、3月、6月、10月、11月(但し、情報交換会合)の4回開催。2003年はこれまで、2月に1回開催され、今後4月、7月、10月の3回開催予定。

(4) 交渉のポイント  

 
WTOルールとMEAs(多国間環境協定)の特定の貿易義務との関係、MEAs事務局と関連するWTO委員会の定期的な情報交換手続及びオブザーバーの地位の承認基準、環境関連物品及びサービスに対する関税、非関税障壁の削減又は撤廃の3点について議論。

(5) 交渉の現状    

 
WTOルールとMEAsの特定の貿易義務との関係については、「特定の貿易義務」について一般的な定義をすべき(トップダウンアプローチ)か、MEAを一つ一つ検討して具体的に特定の貿易義務を持つMEAを限定的に列挙すべきか(ボトムアップアプローチ)議論がなされた。現在、両アプローチの可能性は残しつつ、事務局文書が提示したMEAs上の貿易措置について各条項の検討を行う方向で議論が進んでいる。交渉権限及び進め方を巡り、交渉推進派であるEC・スイス(我が方支持)と、米、豪及び途上国との間で、意見の懸隔あり。
MEAs事務局とWTOの情報交換については、より組織的なものとすべきことに広範な支持あり。他方、オブザーバーの地位については、引き続き議論。
環境関連物品については、環境物品の定義をどのようにすべきか等を巡って議論。先般、日本より、OECDのリストを基礎にして環境関連物品リストを作成、非農産品市場アクセス交渉グループ及びCTE特別会合に提出。



8.紛争解決了解(DSU)の改善と明確化

(1) 枠組み 紛争解決機関(DSB)特別会合

(2) 議長 バラシュ大使(ハンガリー)

(3) 交渉日程 2003年5月までの合意を目指すこととされ、2002年中に7回、2003年は1月から4月の4回、公式会合が開催された。今後、5月の公式会合が予定されており、その前後に非公式会合が行われる予定。

(4) 交渉のポイント及び現状:  

 
DSUの改善に係る各国提案は多数に及んでおり、その内容はシークエンス問題の解決をはじめ、第三国の権利拡大、パネルの常設化、代償の活用、透明性の向上、S&D規定の強化、パネル・上級委報告の部分的削除等多岐にわたっている。
これまでの議論では、必要性についてほぼコンセンサスが形成されているシークエンス問題を除いては、ほとんどの論点について賛否両論があり、2003年5月までに議論が収束するかどうか予断できない状況。2003年5月というDSU交渉の目標期限内に合意をまとめるためには、現在のプロセスを相当程度加速化することが必要。
議長は、4月はじめに、各国提案がそのまま掲載された「枠組文書」を提示し、議論の収斂を加盟国間の協議に委ねる形をとっている。今後のプロセスを効率的なものにするため、論点を徐々に絞っていくことが不可欠。



9.シンガポール・イシュー

 投資、競争、貿易円滑化、政府調達透明性の、いわゆる「シンガポール・イシュー」については、まだ交渉が開始されていない。検討作業を続けた後、第5回閣僚会議でコンセンサスを得た上で、多国間のルールについて交渉を開始することとなっており、第5回閣僚会議までに検討作業をすすめ、同会議で交渉を立ち上げることが肝要。各項目の現状と見通しについては以下のとおり。



(1)貿易と投資に関する作業部会
(イ) 枠組み 貿易と投資に関する作業部会

(ロ) 議長 セイシャス・コレア大使(ブラジル)

(ハ) 会合日程 2002年に4回開催。2003年は、4月、6月の2回開催予定。

(ニ) 議論のポイント及び現状  

 
サブスタンスにかかる検討作業(明確化のための議論)は円滑に行われている。主な議論のポイント及び現状は次のとおり。
投資協定の対象を直接投資に限定するか、より広く捉えるか。米国があらゆる投資を対象とすべきとしているのに対し、一部の途上国はポートフォリオ投資を含めることに強く反対。日本他の推進派は、直接投資を基本としつつ、長期的な生産活動に寄与するポートフォリオ投資を含めるべきとの立場。
投資協定において、内国民待遇を投資拠点の設立前段階(いわゆる「プレ」)にも規定するか、設立後段階(「ポスト」)にのみ規定するか。日本他の先進国は、プレについて内国民待遇義務を規定すべきとの立場。途上国は概ねプレの内国民待遇義務を規定することに反対。


(2)貿易と競争に関する作業部会

(イ) 枠組み 貿易と競争に関する作業部会

(ロ) 議長 ジェニー仏競争評議会副議長

(ハ) 会合日程 2002年は4月、7月、9月、11月の4回開催。2003年は、これまで2月に1回開催され、今後、5月の1回開催予定。

(ニ) 議論のポイント及び現状  

 
WTOに競争に関する多数国間(マルチ)の枠組みを構築するか。日本及びEU、加はWTOに競争に関するマルチの枠組みを構築することに最も積極的な立場。米は、米国の競争法の域外適用に縛りがかかることを懸念してマルチの枠組みの構築に消極的であったが、ドーハ閣僚会議前から柔軟な態度を示し始め、積極派に転じた。印及びパキスタン、マレイシアなどはマルチの枠組みの構築に反対。香港及びシンガポールは、包括的な競争法を有していないことから、マルチの枠組みによって包括的な競争法の導入を強要されることを懸念。
その他、交渉の途中での離脱(オプトアウト)を認めるか。DSを活用するか、ピア・レビュー方式とするかといった論点がある。




(3)貿易円滑化

(イ) 枠組み 物品理事会公式会合

(ロ) 議長 ホボルカ大使(チェコ)

(ハ) 会合日程 2002年は、5月、7月、10月、12月の4回開催。2003年は、3月に開催され、今後6月、7月の2回開催予定。(7月会合については、6月会合において開催の必要性に合意される場合に開催)

(ニ) 議論のポイント及び現状  

 
基本的に貿易円滑化のメリット(GATT第5条、第8条、第10条)については共有がすすんでいる。
日本を含む貿易円滑化交渉開始推進派の国は、拘束力のない努力目標の作成には反対。他方、途上国は、紛争解決手続きに付されることを懸念し、ガイドラインなどの非拘束的ルールを志向。途上国の懸念に応えるため、一部先進国は、ルールを作成した場合には、途上国に対するS&D条項を設ける必要があると主張する状況。
2002年までの議論においては、GATT第5条、第8条、第10条に関連する貿易円滑化措置を、日本を含む先進国が貢献文書にて提案。2003年の議論においては、これら提示された貿易円滑化措置をふまえて、途上国が特に望む措置及び優先課題を具体的に特定。交渉開始推進派の国が技術支援・キャパシティ・ビルディングの実施実績について紹介し、交渉開始への途上国の理解を求めていく。


(4)政府調達の透明性に関する作業部会

(イ) 枠組み 政府調達の透明性に関する作業部会

(ロ) 議長 サボリア・ソト大使(コスタリカ)

(ハ) 会合日程 2002年は、5月、10月、11月に開催。2003年はこれまで2月に1回開催され、今後6月に1回開催予定(4月現在)。

(ニ) 議論のポイント及び現状  

 
協定を複数国間貿易協定ではなく多数国間協定とすることについては各国の合意がある。現在の政府調達に関する協定は複数国間協定であり、WTO加盟国が同協定を締結するかどうかは任意となっているため、締約国数は現在28の国・地域に限定されている。多数国間協定ができれば、すべてのWTO加盟国による一括受諾の対象となる。
各国の意見が分かれている主な論点は次のとおり。
  • 政府調達透明性の要素をどの範囲にするか(国内苦情申立制度、紛争解決規定の適用を含めるか)。
  • 適用対象機関を中央政府のみとするか、地方政府、政府系法人を含めるか。
  • 適用対象は物品の調達のみとするか、サービスの調達も含めるか。


10.途上国問題

 新ラウンド交渉では、上記の交渉グループや作業部会での検討に加え、途上国問題に関する議論が活発に行われている。その背景に、加盟国の4分の3を占める開発途上国がWTOのルールや規律を守り、新ラウンド交渉に参加する上で様々な困難に直面していることが挙げられる。大きな柱としては、貿易関連技術支援及びキャパシティ・ビルディング、WTO協定の「実施」問題、途上国に対する特別かつ異なる扱い(S&D)条項の見直し、TRIPS協定と公衆衛生の4つがある。

(1)貿易関連技術支援及びキャパシティ・ビルディング(TRTA/CB)

ドーハ閣僚会議での合意をうけ、途上国の交渉への参加促進のため、先進国はTRTA/CBに誠実に対応して第5回閣僚会議までに目に見える成果を挙げることが必要とされている。途上国全体に対する技術支援の枠組みである、「技術協力計画」については、2002年11月に貿易と開発委員会(CTD)「2003年計画」を着実に実施していくことが求められる。
「ドーハ開発アジェンダ・グローバル・トラスト・ファンド」(DDAGTF:「技術協力計画」の予算)については、2002年12月の行財政委員会で「2003年計画」について2400万スイスフラン(CHF)(通常予算計上分、2002年度の余剰金、プレッジ済み額を差し引くと、新たに拠出を要する額は約1500万CHF)が目標予算額として承認された(わが国は2月の非公式閣僚会合で約60万CHFの拠出を表明し、さらに3月には21万CHFを拠出した)。
さらに、「先進国が必要なTRTAを行ってこなかった」として途上国が交渉に応じないことを防ぐため、WTOとOECD事務局の共同管理の下、2002年末貿易関連技術支援データベースが発足。本件データベースをどのように活用していくかについては今後議論が必要。9月のカンクン閣僚会議に向け今年度の改定作業を進めている。

(2)WTO協定の「実施」問題

途上国が、途上国の義務履行は遅らせる等途上国に特別な配慮を与え、また、先進国の義務履行は前倒しにせよと主張している問題。その理由として、途上国は、ウルグァイ・ラウンドの恩恵を受けていない、ラウンド後も市場アクセスの改善が見られない、協定の実施段階で予期せぬ困難が生じている、また協定は文言通り実施されているがその精神に反する運用がなされている、等を挙げている。
途上国からの101項目の要望のうち、42項目はドーハで決定し、残りの59項目は新ラウンドで継続検討となった。残りの59項目のうち、交渉グループに入る34項目(農業、補助、AD)については交渉グループで検討し2004年末までに結論を出す一方で、それ以外の分野(TRIPS,SPS,TBTなど)の25項目については、2002年12月のTNCへ報告することとなっていた。しかしながら、報告の対象となる項目が、そもそもドーハ閣僚会合で合意ができず残った案件であったこともあり、各機関で議論がまとまらず、SPSを除いて加盟国間のコンセンサスができた項目はなかった。そのため、TNCへの報告書は両論併記のものばかりとなった。特に、TRIPS理事会においては、地理的表示(GI)の追加的保護のワイン・スピリッツ以外への拡大に関して意見の対立が非常に大きく、TNCへの報告内容すら合意できなかった。
2002年12月末までに結論が出なかったことを受け、今後の進め方について、2003年2月のTNC会合において、TNC議長より次の五つの選択肢が提示された。(1)問題を解決する、(2)これ以上何ら作業を進めない、(3)各交渉グループに委ねる、(4)TNCの監督権限を拡大し、かつ明確な期限(おそらく2003年6月)を設定した上で関連機関での作業を継続する、(5)TNCレベルでさらなる作業を行う。この五つのオプションについて、EC及び途上国は、(5)のTNCレベルで一律に実施問題を扱うことを強く主張しているのに大使、米国及びカナダは、(4)の関連機関にて作業を継続することを主張。日本は、ケース・バイ・ケースで最も適当な進め方を検討すべきという立場を表明している。

(3)途上国に対する特別かつ異なる取扱(S&D)条項の見直し

S&D条項の見直しを検討するために、「貿易と開発」委員会(CTD)特別会合を別途設置。途上国(アフリカやLDC諸国など)からの85項目の個別提案(その多くはS&D条項を義務化せよというもの)につき2002年7月末までに何らかの具体的解決策を提示することされたが、7月段階では議論のための十分な時間がなく、継続検討となり、新たに同2年12月末までに勧告を一般理事会に提出することとなった。
これを受け、CTD特別会合と各関係委員会において、多数の個別提案について議論がなされた。この過程で、既存のS&D条項がどのように使われているか検討する「監視メカニズム」の設置については、途上国が個別提案が解決されるまでこれを設置する意味はないと主張するようになり、議論は進んでいない。
2003年2月までに12項目について大筋合意されたが、今後の作業の取り進め方について先進国側と途上国側の溝が埋まらず、議論が中断された。このような状況の中、4月、一般理事会議長より、個別提案を合意可能性や交渉グループの有無などの観点から、これまでの88提案全てを検討対象にするとの前提の下、3つのカテゴリー(合意可能性のあるもの、交渉会合等の場で議論するもの、意見の違いが大きいもの)に分類し、議論していくとの提案がなされた(5月に具体的な分類された提案が提示)。

(4) TRIPS協定と公衆の健康 (医薬品アクセス問題)

特許制度により医薬品が高価になることで途上国における医薬品へのアクセスが阻害されてしまうという医薬品アクセスの問題に関しての解決策が求められている。具体的には、自国内で医薬品を生産する能力がある国については強制実施権の利用により特許に係る医薬品を生産することが可能であるが、自国内において医薬品を生産する能力のない国への対応が求められている。
2001年11月のドーハ閣僚会議にて発出された「TRIPS協定と公衆の健康に関する宣言」(「ドーハ特別宣言」)パラグラフ6によれば、迅速な解決策について2002年末までに一般理事会に報告することになっており、2002年11月のTRIPS理事会を延長して大使級を含む集中的な協議が行われたが、2002年12月末に開催された年内最後の一般理事会までに議論がまとまらなかった。
これを受け、2003年2月10日の一般理への報告を目指したが、そこでも合意に至らず、東京非公式会合(2/14-16)、TRIPS理事会(2/18-20)、パリ非公式会合(4/30)を経て引き続き協議が続けられている。


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