平成22年5月
国際社会の平和と安全の維持は、日本にとって重要な課題であり、日本はこれまでブラジルと並んで加盟国最多となる10 回にわたり安保理非常任理事国を務め、安保理での意思決定に積極的な貢献を行ってきたほか、国連をはじめとする様々な機関や、アジア、アフリカなど紛争後の地域において、軍縮や不拡散、平和の定着や国づくり、人間の安全保障などの分野で様々な貢献を行ってきました。日本のこのような貢献の実績は、安保理において新たな常任理事国を務めるにふさわしいものであると考えています。
核軍縮・核不拡散は、2009年9月に安保理首脳会合で議論され、決議第1887号が採択されるなど、その機運はこれまでになく高まってきています。一方で、北朝鮮やイランなどの核問題などは国際的な核不拡散体制に対する懸念となっています。中でも、北朝鮮の核・弾道ミサイルの開発は、日本にとって深刻な脅威です。安保理を通じ、このような脅威に対処することは日本の平和と安全にとっても非常に重要です。

2009年5月に北朝鮮が行った核実験に対応するため、安保理において日本などの主導により、決議第1874号が全会一致で採択されました。同決議では、全ての加盟国による、北朝鮮との武器の取引の禁止や、核・弾道ミサイル、又はその他の大量破壊兵器の開発に関連する資産の凍結などの制裁措置を課しています。このように、日本の平和と安全に重大な影響を及ぼす北朝鮮の核実験を巡る安保理の対応について、日本が議論を主導することができたのは、日本が非常任理事国(2009~10年)として安保理に席を占めていたことに負うところが大きいと言えます。
世界で唯一の被爆国として、日本は国際社会の先頭に立って、核兵器をはじめとする大量破壊兵器等の軍縮・不拡散に取り組んできていますが、今日の核軍縮・核不拡散への機運の高まりを捉え、さらにその取組を加速させていく必要があります。将来の世代を含む人類全体への重要な貢献となるよう、日本には国際的な核軍縮・不拡散体制の強化を働きかける責任があります。
2009年9月に、オバマ米大統領のイニシアティブで、「核不拡散・核軍縮に関する安保理首脳会合」が行われました。同会合では、鳩山総理が「日本が核軍縮・不拡散を主導する積極外交を展開する」ことをスピーチで明言したほか、安保理決議第1887号が採択されました。同決議は、安保理の文書として初めて「核兵器のない世界」に向けた条件を構築することへの決意を記述、核軍縮・不拡散・原子力の平和的利用・核セキュリティなど、核関連の全分野を包括的にカバーしたものとなっています。

冷戦後の国際社会では、民族・宗教・歴史などの違いによる対立から地域・国内紛争が多発し、子どもを含む多くの一般市民が被害に遭ってきました。紛争は、難民や国内避難民を発生させ、人道問題や人権侵害問題を引き起こし、長年の開発努力の成果を損壊し、莫大な経済的損失を生み出します。このような紛争を繰り返さず、持続可能な平和を実現するには、紛争当事者間の調停、和平合意の履行の支援から、対人地雷の除去、元兵士の武装解除・動員解除・社会復帰(DDR)といった国内の安定・治安の確保、さらには難民支援や基礎インフラの復旧などの人道支援から、選挙の実施、警察への支援や社会基盤・経済インフラの整備といった国づくりまで、各国や国際機関、国連ミッション、非政府組織(NGO)などが連携し、幅広い分野において継ぎ目のない支援を行うことが求められます。

国際社会では、このような「平和構築」への取組の重要性が認識されており、日本は、これまでアフガニスタン、カンボジア、東ティモールやアフリカ各地で、国連PKOへの参加、難民の帰還、元兵士の社会復帰支援などに積極的に取り組んでいます。また、国連の場においては、2005年に新たに設立された国連平和構築委員会のメンバーとして貢献を行っているほか、人間の安全保障の実現に努めています。
平和構築委員会は、2005年に国連総会と安保理の政府間諮問機関として設立されました。平和構築委員会は、持続可能な平和を達成するために、紛争状態の解決から復興・開発に至るまでの一貫性ある統合戦略を助言・提案することを主要な目的とし、現在はアフリカの4か国(シエラレオネ、ブルンジ、ギニアビサウ、中央アフリカ共和国)を対象として活動するなど、国際社会の平和と安全の維持に大きく関わってきています。
日本は、2007年6月から2008年12月まで、平和構築委員会の主な機関である組織委員会の議長を務めるなど、同委員会の活動に積極的に貢献してきています。
日本は、国際平和協力法に基づき、これまでに12の国連ミッションに延べ5400人余りの自衛隊、警察の要員や選挙監視要員を派遣し、現在もゴラン高原における国連兵力引き離し監視隊(UNDOF)に司令部要員および自衛隊の輸送部隊、国連スーダン・ミッション(UNMIS)に司令部要員、国連ネパール政治ミッション(UNMIN)に軍事監視要員、国連ハイチ安定化ミッション(MINUSTAH)に司令部要員および自衛隊の施設部隊を派遣しています。

アフガニスタンの復興・国づくりを効果的に支援するため、日本は2002年1月に東京でアフガニスタン復興支援国際会議を開催したほか、農業、農村開発、インフラ整備、教育、医療、保健などの基礎生活分野への支援、元兵士の武装解除・動員解除・社会復帰(DDR)支援や、非合法武装集団の解体(DIAG)支援、地域総合開発支援、といった取組を行ってきており、国際社会の高い評価を得ています。また、2007年からは他の支援国が主導する12の地方復興チーム(PRT)と連携し、NGOや地方行政機関への無償資金協力を実施してきました。2009年春以降には、チャグチャランPRT(ゴール県)に日本人の文民を初めて派遣し、開発援助のための調査などを行ってきています。さらに2009年11月、同年からおおむね5年間で最大約50億米ドルまでの規模の支援を行うことを発表しました。

アフリカは世界の紛争多発地域と見られていましたが、近年、紛争の数自体は少なくなってきており、大部分の国は平和の定着と復興の兆しを見せています。一方で、スーダンやソマリア、コンゴ民主共和国東部など、一部の国々については、事態が依然として深刻であり、現地の劣悪な治安、人道状況が懸念されています。
アフリカ各国政府により設立されたPKO訓練センターは、アフリカ自身の平和維持活動を実施する能力を強化するため、PKOの様々な活動に関する研修を行っています。日本は2007年4月から、エジプト、マリ、ガーナなどの8か所のPKO訓練センターに対する機材供与、施設整備、研修の実施などの支援を行い、邦人講師の派遣も行っています。こうした日本の支援は、国連やアフリカ諸国、またこの分野での取組を進めている先進国からも歓迎されています。
日本は、グローバル化した世界で生じる多様かつ複雑な脅威に対処するため、人間の安全保障を外交の柱の一つとして位置づけ、国連の場を中心に概念普及に努めており、多くの国から支持と協力を得ています。また、これまで国連に設置した人間の安全保障基金などを通じて、小型武器の回収、紛争後のコミュニティの復興支援、所得向上のための技術支援などの幅広い分野を対象にした多くのプロジェクトを支援し、人間の安全保障の実現に努めています。

2010年4月16日、岡田外務大臣は、日本が安保理議長国として開催した「紛争後の平和構築」に関する公開討論に出席し、日本の外務大臣として初となる議長を務めました。冒頭、岡田大臣より、紛争後の国における政治的安定、治安の確保と並行して社会的安定をいかに達成するのか、そして、これらを実現するための包括的な戦略をいかに国際社会が支援して作っていくのかという問題提起を行いました。これに対して、アフガニスタン外相、ボスニア・ヘルツェゴビナ外相他、東ティモール、シエラレオネ政府の閣僚より、各自の経験や知見に基づく発言が行われ、安保理メンバー国を含む多くの国により活発的な議論が行われました。公開討論の最後には、安保理として政治、治安及び開発等に統合的に取り組むための戦略の必要性を指摘し、各分野でとられるべき政策及び国際協力の内容を盛り込んだ安保理議長声明が発出されました。日本のこうした公開討論開催のイニシアティブは、多くの国から評価されています。