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今次サミットは、イラク情勢をめぐり立場が分かれたG8間の協調関係を如何に再構築するか、また、世界経済の成長確保にG8として如何に取り組むかといった課題を背景に開催された。また、サミット直前、ブッシュ米大統領が、中東和平推進を目指しエジプト等訪問のため、サミット2日目午後にエビアンを発つことが決まった。
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こうした背景の下、議長国フランスのシラク大統領は、2002年のカナナスキス・サミット同様、落ち着いた雰囲気の中、首脳同士が親密且つ自由に意見交換を行うための環境造りに意を用いた。
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結果として、世界経済、開発、テロ、大量破壊兵器の不拡散、中東和平等の地域情勢につき、率直且つ実りのある議論が行われ、米仏間を含め、G8間の協調と結束を再確認することが出来たと考えられる。
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なお、2002年に続き、今次サミットでも、いわゆる「コミュニケ」は廃止され、代わりに、実際の首脳間の議論を反映した「議長総括」が議長国の責任で取り纏められ、発出された。また、今次サミットは、新たな約束ではなく、これまでの約束の実施に重点を置くという仏の考えもあり、テロ対策の強化や持続可能な開発の実現に向け、G8が今後執るべき具体的行動を列挙した各種行動計画等もG8首脳による承認を得た上で計13本発出された。更に、2002年採択された「G8アフリカ行動計画」の進捗状況を記した実施報告書もアフリカ個人代表により作成され、G8首脳に提出された。
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今次サミットに先立ち、G8首脳の会合とは切り離された独自の会合として、仏の招待で開催された新興国・途上国との対話には、G8の他、中国、インドなど12カ国の首脳、アナン国連事務総長を含む4国際機関の長が招待され*1、成長と国際協力をテーマに貿易、援助等につき活発な意見交換が行われた。
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(6) |
小泉総理は、サミットに先立つ訪欧、訪米、訪ロ等を通じて築いたG8各国首脳との強い信頼関係に基づき、中心的役割を果たした。日本にとっては、G8間の協調を確認し、途上国との対話の促進を図ると共に、北朝鮮情勢、東アジアを中心に蔓延する重症急性呼吸器症候群(SARS)といった重要な課題への対応、更には日本の経済運営につき、G8首脳や国際社会の関心と理解を高めることが求められていたが、所期の目的を達成することができた。
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*1 |
エジプト、アルジェリア、ナイジェリア、南アフリカ、セネガル、メキシコ、スイス、ブラジル、中国、サウジアラビア、マレーシア、インド、国際連合、世界銀行、国際通貨基金、世界貿易機関の計12カ国、4国際機関(以上、仏政府発表順。なお、モロッコは、招待されていたが出席せず)。
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世界経済
世界経済については、マクロ経済運営と構造改革に多くの時間が割かれた他、WTOドーハ・ラウンドの推進やエネルギー政策についても意見交換が行われた。世界経済の先行きについては、米のみならず他のG8諸国の経済成長の確保が重要であること、そのためには国内経済改革が必要であること等が強調された。また、WTOに関しては、ドーハ・ラウンドの成功のためには各国毎の努力が必要であること、途上国への配慮が必要であること等につき意見の一致が見られた。
小泉総理からは、ブッシュ大統領の強いドル政策の表明に対し歓迎の意を述べたほか、構造改革、財政改革、規制緩和等の現状につき説明しつつ、改革を緩めない、デフレ対策にも取り組んでいくとの決意を改めて表明した。
なお、本セッションでは、成長と責任、腐敗と透明性に関するG8宣言、貿易に関する行動計画が採択された。
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持続可能な開発
ミレニアム開発目標達成に当たっての資金確保の方途、途上国側の良き統治の必要性、成長と環境保護の両立のための科学技術の役割、京都議定書の重要性、HIV/エイズ(世界エイズ・結核・マラリア基金への拠出増加のための協力等)、森林問題等幅広い分野の問題について議論が行われた。
小泉総理からは、低公害車の政府公用車としての導入や厳しい排ガス規制など日本の取組に触れつつ、環境と経済成長を両立するための鍵として科学技術を利用することが重要であると指摘。また、京都議定書については、ロシアの参加が重要である、将来、米国も途上国も参加できるようにすべきであると述べたほか、プーチン露大統領からの前向きな発言を受け、プーチン大統領の発言には勇気づけられたと述べる一幕もあった。この他、違法伐採対策、人間の安全保障委員会や東アジアを中心に被害を受けているSARSについても、総理は発言し、議長総括にも反映された。
なお、日本は、世界水フォーラム・閣僚級会合の開催国として、右会合の成果も踏まえ、仏との協力の下、水問題に関する行動計画の策定に主導的役割を果たした。また、米英とともに、持続可能な開発のための科学技術に関する行動計画策定にも中心的役割を果たした。この他、飢餓、保健、海洋環境に関する行動計画が採択された。
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(3) |
アフリカ
1日夕食時、2002年に引き続き、オバサンジョ・ナイジェリア大統領ほか「アフリカ開発のための新パートナーシップ(NEPAD)」主要国首脳*1及びアナン国連事務総長とG8首脳との対話の機会が設けられた。G8アフリカ個人代表により提出された「G8アフリカ行動計画」実施報告書に基づき、G8及びNEPAD双方の過去1年間の取組につき再評価が行われた他、今後も非G8の関心国や国際機関を交えつつ、このような交流(パートナーシップ)を続けていく旨確認された。
小泉総理からは、阪神・淡路大震災の例を引きつつアルジェリアの復興につき協力していきたい、日本とアフリカは距離的にも遠く、歴史的なつながりも浅いが、それにも拘わらず、日本は10年前に第1回アフリカ開発会議(TICAD)を開催し、それ以降アフリカ問題で種々イニシアティヴを発揮してきた旨発言。また、2003年秋に開催するTICAD III につき、アフリカ諸国はもとより、G8各国からも積極的な参加を強く期待している旨述べた(本件会合後のアフリカ側共同記者会見でも、オバサンジョ大統領より、日本のTICAD III 開催を評価する旨の発言あり)。
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アルジェリア、ナイジェリア、南アフリカ、セネガル。エジプトは途上国との対話には参加したものの、本件対話には欠席。
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テロ対策・大量破壊兵器の不拡散・地域情勢
中東和平に関する議論に多くの時間が費やされた他、北朝鮮、イラク、イラン、アフガニスタン、テロ、大量破壊兵器の不拡散、小型武器について意見交換が行われた。
北朝鮮については、小泉総理より、同国を国際社会の平和なメンバーとすべしとのブッシュ大統領の考えに賛意を表明した上で、核問題をはじめとする安全保障上の問題や拉致問題等の懸案を包括的かつ平和的に解決したい旨強調し、各国の理解を得、この点は議長総括にも反映された。なお、不拡散に関する宣言にもある通り、G8として、北朝鮮に対し、目に見え、検証可能かつ不可逆的な形で、如何なる核兵器計画をも廃棄することを強く求めていくことで一致した。
イラク情勢については、日本の呼びかけを受け、国連がイラク復興支援に関する国際会議の開催に向けた準備会合を開催する旨発表したことに対し、G8としても右提案を歓迎するとの点で意見の一致を見た。
中東情勢については、最近の進展及び米国の努力について評価する旨の発言が相次いだ他、中東和平の進展によりテロ対策の効果も得られるとの点で意見の一致を見た。
イランによる核開発についても、不拡散に関する宣言の中で、「核計画の現状が拡散に及ぼす影響を無視しない」として、直ちに無条件でIAEA追加議定書を受け入れ、履行することを求めることで、ロシアを含むG8は一致した。
なお、本セッションでは、2002年のサミットの際に採択された「大量破壊兵器及び物質の拡散に対するG8グローバル・パートナーシップ」や「交通保安に関するG8協調行動」をフォロー・アップするための行動計画の他、日米主導で作成された、途上国のテロ対策対処能力向上を目的とする行動計画等が採択された。
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