犯罪

国際組織犯罪に対する国際社会と日本の取組

平成23年12月

1. 背景

(1)グローバリゼーションの進展に伴い、国境を越えて大規模かつ組織的に行われる国際組織犯罪の脅威が深刻化している。国際組織犯罪は、社会の繁栄と安寧の基盤である市民社会の安全、法の支配、市場経済を破壊するものであり、国際社会が一致して対処すべき問題である。

(2)国際組織犯罪の主な例としては、薬物や銃器の不正取引、不法移民、人身取引、資金洗浄等の金融犯罪、詐欺・横領等の企業犯罪や経済犯罪、腐敗等が挙げられる。また、近年の特徴として、これらの犯罪にIT(情報通信技術)が駆使され、その手口が一層悪質・巧妙化している。

(3)このような国際組織犯罪に対処するためには、各国が刑事司法、法執行制度を強化するとともに、国際的な司法・法執行協力により法の抜け穴をなくす努力が必要である。また、国際組織犯罪は、しばしば司法・法執行制度の弱体な国を本拠地として活動を展開することから、途上国の刑事司法制度を強化するための支援も重要である。

2. 国際社会の取組

(1)国連における取組
 国連では、経済社会理事会の機能委員会の一つである犯罪防止刑事司法委員会(通称コミッション(注1))において、国際組織犯罪に対する取組につき、踏み込んだ討議が行われているほか、5年ごとに開催される国連犯罪防止会議(通称コングレス(注2)。)においても、近時、主要課題として国際組織犯罪が取り上げられている。また、国連には国連薬物犯罪事務所(UNODC)が設置されており、薬物犯罪その他の国際組織犯罪対策に関する様々な技術協力や調査研究活動を行っている。

(2)G8の取組
 G8においては、G8各国の刑事司法や法執行等の専門家によって構成される通称リヨン・グループ(国際組織犯罪対策上級専門家会合)が中心となって、実務的な観点から、国際組織犯罪対策と同分野における国際協力を検討してきており、平成8年(1996年)に「国際組織犯罪に関する40の勧告」を提出して以来、毎年G8司法内務閣僚会合及び首脳会合において、その成果や検討事項等について報告を行っている。近年では、児童ポルノやハイテク犯罪、腐敗対策をはじめ、組織犯罪に有効に対処するための捜査手法や司法協力のあり方などについて議論を行っている。

3. 国際組織犯罪防止条約及び議定書

4.個別の犯罪類型に関する国際的な取組

(1)サイバー犯罪条約(和文テキスト

 情報技術分野の急速な発達、コンピュータ・ネットワークの発展によって、世界中で電子メールの幅広い利用、インターネットを通じた各種サイトへのアクセス、電子商取引等が可能となった。このような情報技術の発展は、社会の一層の発展のための大いなる可能性を秘めているが、一方で、コンピュータ・システムを攻撃するような犯罪及びコンピュータ・システムを利用して行われる犯罪(いわゆるサイバー犯罪)が出現するようになった。

 サイバー犯罪は、犯罪行為の結果が国境を越えて広範な影響を及ぼし得るという特質を備えていることから、その防止及び抑制のために国際的に協調して有効な手段をとる必要性が高く、そのために法的拘束力のある国際文書の作成が必要であるとの認識が欧州評議会において共有されるようになった。

 このような状況の下、欧州評議会において、サイバー犯罪を取り扱う専門家会合が設置され、平成9年(1997年)以降、同会合においてこの条約の作成作業が行われてきた。その結果、平成13年(2001年)9月に行われた欧州評議会閣僚委員会代理会合においてこの条約の案文について合意が成立し、同年11月8日に行われた欧州評議会閣僚委員会会合において正式に採択された。

 この条約は、サイバー犯罪から社会を保護することを目的として、コンピュータ・システムに対する違法なアクセス等一定の行為の犯罪化、コンピュータ・データの迅速な保全等に係る刑事手続の整備、犯罪人引渡し等に関する国際協力等につき規定している。

 平成16年(2004年)7月発効。締約国32か国、署名済み未締結国15か国(平成23年(2011年)12月現在)

 我が国では、平成16年(2004年)4月、この条約を締結することにつき国会の承認を得ており、締結に向けた手続きが進められている。

(2)国連腐敗防止条約(和文テキスト

 公務員に係る贈収賄、公務員による財産の横領等腐敗に関する問題は、グローバル化の一層の進展に伴い、持続的な発展や法の支配を危うくする要因として、もはや地域的な問題ではなく、すべての社会及び経済に影響を及ぼす国際的な現象となっている。また、腐敗行為とその他の形態の犯罪(組織犯罪等)との結び付きについても指摘がなされるようになり、効果的に腐敗行為を防止するためには国際協力を含め包括的かつ総合的な取組が必要であるとの認識が共有されるようになった。

 このような状況の下、平成12年(2000年)11月に国際連合総会において採択された国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約に、腐敗問題に対処するための簡潔な規定が盛り込まれたが、同規定の作成交渉において一層効果的に腐敗問題に対処するために、別途、包括的な国際文書の作成を検討することが提唱された。これを受けて、平成12年(2000年)12月、腐敗行為の防止に関する包括的な条約を起草するための政府間特別委員会が国際連合総会決議によって設立された。

 政府間特別委員会は、平成14年(2002年)1月に審議を開始し、平成15年(2003年)9月に開催された第7回特別委員会において、この条約の案文についての合意が成立した。この条約は、平成15年(2003年)10月31日に国際連合総会において採択された。

 この条約は、腐敗行為を防止し、及びこれと戦うため、公務員に係る贈収賄、公務員による財産の横領等一定の行為の犯罪化、犯罪収益の没収、財産の返還等に関する国際協力等につき規定している。

 平成17年(2005年)12月発効。

 我が国では、平成18年(2006年)6月、この条約を締結することにつき国会の承認を得た。

(3)資金洗浄(マネーロンダリング)

(4)薬物犯罪

(5)人身取引

 近年、グローバル化の一層の発展や、経済格差の拡大等に伴って、人身取引は国境を越える深刻な脅威となっている。我が国は、人身取引は重大な人権侵害であるとの認識の下、平成16年(2004年)に人身取引対策に関する関係省庁連絡会議を設置し、人身取引対策行動計画を策定、この計画に基づく各種対策によって大きな成果を上げた。一方で、人身取引の手口の巧妙化・潜在化など、人身取引をめぐる情勢の変化を踏まえ、平成21年(2009年)12月にはこれを改訂し、人身取引対策行動計画2009を策定した。

 なお,2010年中に日本政府が保護した人身取引の被害者数は43名(注3)であった。同行動計画に基づき,被害者の帰国支援,ODAを活用した国際支援,国際捜査共助の充実化などの人身取引撲滅のための国際的な取組へ積極的に参画している。

 人身取引根絶のための国際協力の状況及び行動計画

 また,2011年11月,我が国政府は,人身取引対策に関する政府協議調査団をフィリピンへ派遣した。政府協議調査団は,フィリピン政府関係機関等と両国間および国際的な人身取引対策につき協議を行ったほか,フィリピン国内の人身取引被害者のための保護施設の視察を行った。


(注1) 毎年開催される政府間会議であり、国連の犯罪防止及び刑事司法分野における取組にガイダンスを与えている。

(注2) 昭和30年(1955年)以来、5年ごとに開催され、参加国、国際機関、NGO及び個人の専門家等が一同に会し、犯罪防止・刑事司法全般にわたって、より広い角度から議論を行い、勧告、提言等を行う。第11回コングレスは、本年5月に、タイ・バンコクで開催された。

(注3) 警察庁,法務省,厚生労働省の統計より重複を除いた人数。

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