海洋

ソマリア沖・アデン湾の海賊問題の現状と取り組み

平成24年2月

 ソマリア沖・アデン湾で海賊事案は,乗っ取り成功率が減少する一方で事案発生件数は増大する傾向にあり,海賊の展開海域もソマリア沖東方海域や西インド洋の広大な海域に拡大する傾向にあり,船舶の航行安全に大きな脅威となっています。日本をはじめ,各国はこの地域の海賊対処を国際的に重要な課題と捉え,事案発生防止に取り組んでいます。

  1. ソマリア沖・アデン湾における海賊発生状況
  2. 世界全体の海賊発生状況
  3. 国際社会による取り組み
  4. 我が国の取り組み
  5. 関連機関のリンク

1.ソマリア沖・アデン湾における 海賊発生状況

(1)2012年海賊発生件数等(2012年1月31日現在)

海賊発生件数 乗っ取られた船舶数 抑留された乗員数
13件 2隻 28(注)

(注)なお,現在抑留中の累計人数は159名

(参考)過去4年間の海賊発生件数の推移
  2008年 2009年 2010年 2011年
海賊発生件数 111件 218件 219件 237件
乗っ取られた船舶数 42隻 47隻 49隻 28隻
抑留された乗員数 815名 867名 1,016名 470名

(2)海賊発生の分布(IMB海賊情報センターにリンク)他のサイトヘ

(3)主な日本関連の海賊事案

発生日 場所 船名 船籍国 被害内容 邦人乗員の有無 その他
11年9月28日 紅海 邦船社運航タンカー2隻「ギンガオブキャット」及び「ライムギャラクシー」 パナマ及び香港 船体に被弾 なし  
11年3月5日 アラビア海 邦船社運航のタンカー「グアナバラ」 バハマ 乗り込み なし 海賊4名拘束
10年12月13日 アデン湾 邦船社運航のケミカルタンカー「オリエンタル・ローズ」 パナマ 船体に被弾,乗員2名軽傷 なし  
10年1月20日 アラビア海東部
(インド西岸沖)
邦船社運航のコンテナ船「NYK アルテア」 パナマ 船体に被弾 なし  
10年10月28日 アラビア海東部
(インド西岸沖)
邦船社運航のタンカー「スターライト・ベンチャー」 香港 銃撃 なし  
10年10月10日 ケニア沖 邦船社運航の多目的船「イズミ」 パナマ 乗っ取り なし 11年2月25日
解放
10年04月25日 アラビア海東部 邦船社運航のタンカー「イスズガワ」 パナマ 船体に被弾 なし  
08年11月15日 アデン湾 邦船社管理のケミカルタンカー「ケムスター・ビーナス」 パナマ 乗っ取り なし 09年2月解放
08年11月14日 ケニア沖 マグロ漁船「天祐8号」 中国 乗っ取り 邦人乗員1名
(船長)
09年2月解放

2.世界全体の海賊発生状況

(グラフ)全世界の海賊事案発生状況(IMB年次報告)

2011年の全世界の海賊発生件数439件:(2010年より6件減)。

  1. (1)ソマリア・アデン湾の海賊発生件数は237件であり,全世界の件数の54%を占めています。
  2. (2)マラッカ・シンガポール海峡を含む東南アジアの海賊発生件数は,前年より増加しています。

3.国際社会による取り組み

(1)国連安全保障理事会

国連安全保障理事会では以下の決議が採択され,海賊抑止のための協力を呼びかけています。

(1816号,1838号,1846号,1851号(2008),1897号(2009),1918号,1950号(2010),1976号,2020号(2011))

(2)ソマリア沖海賊コンタクト・グループ会合

ア.発足の経緯

 安保理決議第1851号(2008年12月採択)において,ソマリア沖海賊問題に関する国際的な協力メカニズムの設置が言及されたことを受け,2009年に本件コンタクト・グループが発足しました。それ以降,定期的に会合がニューヨークの国連本部にて開催されています。現在,60か国の国連加盟国,20の国際機関・民間団体が本件コンタクト・グループに参加しています(2012年2月現在)。

イ.コンタクト・グループ会合開催の実績

 2009年1月から2011年11月までに10回開催されています(我が国は第4回会合(2009年9月)の議長を務めました)。各会合では,ソマリア沖海賊の現状及び国際社会の取り組みの概要をまとめたコミュニケを作成し,成果文書として公表しています。なお,次回第11回会合は,本年3月に開催予定です(議長国:アラブ首長国連邦)

ウ.作業部会

 コンタクト・グループ発足と同時に同会合の下に4つの作業部会(WG:括弧内は議長国)が設置され,更に,第9回コンタクト・グループ会合(2011年7月)において,海賊の人定や海賊の資金の流れなどに関する5つ目の作業部会(WG5)が設置されました。各WGの会合は,定期的に開催されており,会合の結果はコンタクト・グループ会合に報告されています。

  1. (ア)WG1(英国)
    軍事的オペレーションの調整(SHADE会合(注)などと連携)
    周辺国の取締能力向上支援
  2. (イ)WG2(デンマーク)
    海賊の訴追関連及び法的枠組みの強化
    民間武装警備員の民間船舶への乗船に関する法的問題
  3. (ウ)WG3(米国)
    海運業界の意識・能力向上
    BMP(Best Management Practices)の随時改訂
  4. (エ)WG4(エジプト)
    外交・対外情報発信の強化
  5. (オ)WG5(イタリア)
    リーダー格の海賊の捕捉
    獲得した資金の遮断
  6. (注)SHADE(Shared Awareness and Deconfliction Meeting):ソマリア沖・アデン湾海域に艦船等を展開している各国海軍関係者による調整会議。

(3)その他の国際会議

(ア)IMOジブチ会合

  2009年1月,国際海事機関(IMO)はソマリア周辺海域海賊対策地域会合(ジブチ会合)をジブチにて開催し,ソマリア周辺海域の諸国が参加しました。この会合に参加した国は,周辺国の海上保安能力強化の重要性を強調する,海賊対策に関する「ジブチ行動指針」を採択しました。

(イ)G8プロセス

 2011年5月,フランス・ドーヴィルにて,首脳会合G8/アフリカ共同宣言において,特にソマリアを拠点とする海賊の深刻な脅威に引き続き懸念を表明するとともに,海賊の脅威に対して,断固たる対応を継続する決意を強調。参加国は確実な訴追及び収監のために国際社会の一層の支援が必要である旨合意しました。

(4)各国・機関による海賊対策概況(2012年2月現在)

EUNAVFORアタランタ作戦
<2008年12月より>

(画像)EUNAVFORアタランタ作戦

  • ドイツ:フリゲート(2),哨戒機(1)
  • スペイン:フリゲート(1), 哨戒機(1)
  • フランス:フリゲート(1)
  • オランダ:給油艦(1)
  • ルクセンブルグ:哨戒機(1)
  • エストニア:哨戒機(1)
NATOオーシャンシールド作戦
<2009年8月より>

(画像)NATOオーシャンシールド作戦

  • オランダ:駆逐艦(1)
  • ドイツ:フリゲート(1)
  • カナダ:駆逐艦(1)
CMF CTF-151
(有志連合海上部隊 統合部隊151)
<2009年1月より>

(画像)有志連合海上部隊 統合部隊151

  • 米国:巡洋艦,駆逐艦,フリゲート,補給艦,哨戒機等を随時派遣
  • 韓国:駆逐艦(1)
  • 英国:フリゲート(1)
  • シンガポール:揚陸艦(1)
  • トルコ:フリゲート(1)
各国独自の活動
  • 日本:護衛艦(2),哨戒機(2)
  • ロシア:駆逐艦(1),補給艦(1),曳船(1)
  • インド:駆逐艦(1)
  • 中国:ミサイル・フリゲート(2) ,補給艦(1)
  • マレーシア:海軍補助艦艇(2)
  • サウジアラビア:補給艦(1)
  • 豪州:フリゲート(1),哨戒機(1)
  • イラン:駆逐艦(1),補給艦(1)

4.我が国の取り組み

(1)我が国のソマリア沖・アデン湾への護衛艦・哨戒機の派遣(2009年~)

 2009年3月より,我が国は護衛艦2隻(海上保安官8名が同乗)を派遣し,アデン湾を航行する船舶の護衛にあたっています。また, 同年6月よりP-3C哨戒機2機を派遣し,ジブチを拠点に警戒監視活動を行っています。

 2012年 1月11日現在,護衛艦による護衛実績は318回で,2,427隻(日本関係船舶は693隻,その他外国船舶は1,734隻)。1回あたり平均約8隻を護衛しています。

 また,2011年7月には,海賊対処行動を2012年7月23日まで延長することが閣議決定されました。

(2)海賊対処法の制定(2009年6月19日成立,7月24日施行)

 2009年6月に,「海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律」が成立しました。法律成立以前に実施していた海上警備行動では,日本に関係する船舶のみ防護可能でしたが,本法律により,船籍を問わず,すべての国の船舶を海賊行為から防護することが可能となるなど,より適切かつ効果的な海賊対処が可能となりました。

【海賊対処法の骨子】
国連海洋法条約に則して,国籍を問わず海賊行為を処罰し,適切かつ効果的に対処。
  • 海賊行為を犯罪として処罰
  • 日本関係船舶に限らない,外国船の護衛
  • 民間船舶に著しく接近するなどの海賊船に対する停船射撃

(3)ジブチにおける自衛隊独自の派遣航空隊のための拠点開設(2011年6月)

 2011年6月,運用の効率性向上を図るなどの観点から整備してきた,P-3C哨戒機部隊が独自に使用する活動拠点が完成し,運用を開始しました。同年7月7日に,ジブチ共和国側からディレイタ首相を招待し,小川防衛副大臣(当時)主催で,新活動拠点開所記念式典を実施しました。

 なお,2009年3月,外務省はジブチに連絡事務所を設置するとともに,2012年1月にはこの事務所を大使館へ格上げしました。

(4)我が国の沿岸国の海上保安能力向上支援

 我が国は,ジブチ行動指針の実現のために,国際海事機関(IMO)に1,460万ドルを拠出し,これを元に信託基金が創設されました。この基金により,イエメン,ケニア,タンザニアの海賊情報センターの整備・運営を支援するとともに,ジブチに訓練センターを設立する予定です。

 また,我が国は海賊被疑者訴追費用等を目的とした国際信託基金に150万ドルを拠出しています。この信託基金は,国連薬物犯罪事務所(UNODC)が管理し,ソマリア沖・アデン湾の海賊の取締りと,ソマリア周辺国の海賊を訴追するための制度の整備,手続きなどのためのプロジェクトに充てられています。

 また,我が国は,イエメン,オマーン,ケニア,ジブチ及びタンザニアの海上保安機関職員を招請し,海上保安能力の向上を支援しています。

(5)我が国の対ソマリア支援【2007年以降総計:1億8,400万ドル

治安向上への支援:
3,800万ドル
  1. 1)ソマリア暫定「政府」警察支援:2,400万ドル
  2. 2)国境管理強化による治安改善支援:100万ドル
  3. 3)「アフリカの角」地域等における小型武器の回収・廃棄計画等:350万ドル
  4. 4)アフリカ連合ソマリア・ミッション(AMISOM)支援:950万ドル
人道支援・インフラ整備への支援:
1億4,600万ドル
  1. 1)食糧援助,保健,水,衛生,教育,基礎インフラ整備:1億0,955万ドル
  2. 2)若年層や被災民の職業訓練,雇用創出:2,520万ドル
  3. 3)食糧運搬船が入港する港湾施設改修:825万ドル
  4. 4)人身取引・不正規移住対策:300万ドル

5.関連機関リンク

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