海上の安全保障

ソマリア沖・アデン湾における海賊問題の現状と取組

平成29年8月21日

 ソマリア沖・アデン湾での海賊等事案(注)発生件数は,近年極めて低い水準で推移しており,これには自衛隊を含む各国部隊による海賊対処活動等が大きく寄与しています。他方,海賊を生み出す根本原因の一つであるソマリア国内の貧困や若者の就職難等は未だ解決しておらず,国際社会がその取組を弱めれば,状況は容易に逆転するおそれがあります。日本をはじめとする各国は,この地域の海賊対処を国際的に重要な課題と捉え,引き続き事案発生防止に取り組んでいます。

(注) 海賊等事案には公海上で発生したもの(海賊)及び領水内で発生したもの(武装強盗)の双方を含めています。

1 ソマリア沖・アデン湾における海賊等事案の発生状況

(1)海賊等事案発生件数の推移(国際商業会議所(ICC)国際海事局(IMB)等による)

  2008年 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年 2017年上半期
海賊等事案発生件数 111件 218件 219件 237件 75件 15件 11件 0件 2件 7件
乗っ取られた船舶数 42隻 47隻 49隻 28隻 14隻 2隻 0隻 0隻 0隻 3隻
拘束された乗員数 815名 867名 1,016名 470名 250名 34名 0名 0名 0名 39名

(2)主な日本関連の海賊事案

発生日 場所 船名 船籍国 被害内容 邦人乗員の有無 その他
2011年9月28日 紅海 邦船社運航タンカー「ギンガボブキャット」 パナマ 船体に被弾 なし  
2011年3月5日 アラビア海 邦船社運航のタンカー「グアナバラ」 バハマ 乗り込み なし 海賊4名拘束
2010年12月13日 アデン湾 邦船社運航のケミカルタンカー「オリエンタル・ローズ」 パナマ 船体に被弾,乗員2名軽傷 なし  
2010年11月20日 アラビア海東部
(インド西岸沖)
邦船社運航のコンテナ船「NYK アルテア」 パナマ 船体に被弾 なし  
2010年10月28日 アラビア海東部
(インド西岸沖)
邦船社運航のタンカー「スターライト・ベンチャー」 香港 銃撃 なし  
2010年10月10日 ケニア沖 邦船社運航の多目的船「イズミ」 パナマ 乗っ取り なし 11年2月25日
解放
2010年04月25日 アラビア海東部 邦船社運航のタンカー「イスズガワ」 パナマ 船体に被弾 なし  
2008年11月15日 アデン湾 邦船社管理のケミカルタンカー「ケムスター・ビーナス」 パナマ 乗っ取り なし 09年2月解放
2008年11月14日 ケニア沖 マグロ漁船「天祐8号」 中国 乗っ取り 邦人乗員1名
(船長)
09年2月解放

2 国際社会による取組

(1)国連安全保障理事会

 国連安全保障理事会では以下の決議が採択され,海賊抑止のための協力を呼びかけています。

  • 1816号,1838号,1846号,1851号(2008年)
  • 1897号(2009年)
  • 1918号,1950号(2010年)
  • 1976号,2020号(2011年)
  • 2077号(2012年)
  • 2125号(2013年)
  • 2184号(2014年)
  • 2246号(2015年)
  • 2316号(2016年)

(2)ソマリア沖海賊対策コンタクト・グループ会合

ア 発足の経緯

 安保理決議第1851号(2008年12月採択)において,ソマリア沖海賊問題に関する国際的な協力メカニズムの設置が奨励されたことを受け,2009年にソマリア沖海賊対策コンタクト・グループ(CGPCS)が発足しました。

イ 会合開催の実績

 発足以降,定期的に会合がニューヨークの国連本部等にて開催され,2009年1月から2017年8月までに20回開催されています(我が国は第4回会合(2009年9月)の議長を務めました)。各会合では,ソマリア沖海賊の現状及び国際社会の取り組みの概要をまとめたコミュニケを作成し,成果文書として公表しています。

ウ 作業部会等

 現在,同コンタクト・グループの下には次の作業部会等が設置されています。

(ア)対ソマリア能力構築グループ

ソマリアの能力構築支援。

(イ)対インド洋地域能力構築グループ

ソマリアを除く地域諸国の能力構築支援。

(ウ)海上行動作業部会

海上の安全に対する脅威のアセスメント。

(エ)法律問題フォーラム

海賊対処の法的問題への対処。

(3)その他の国際会議

ア IMOジブチ会合

 2009年1月,国際海事機関(IMO)はソマリア周辺海域海賊対策地域会合(ジブチ会合)をジブチにて開催し,ソマリア周辺の16か国が参加しました。この会合に参加した国は,周辺国の海上保安能力強化の重要性を強調する,海賊対策に関する「ジブチ行動指針(DCoC)」を採択しました。

イ G7プロセス

 2009年以降,外相会合議長声明等において,ソマリア海賊問題に言及。2017年4月の「G7ルッカ外相会合共同コミュニケ」においても,海賊対策について次のとおり言及されています。

「我々は,海賊行為及び海上武装強盗,海洋空間での国境を越えた組織犯罪及びテロ,人身取引,移民の密輸,武器及び麻薬の取引,違法・無報告・無規制(IUU)漁業,並びにその他の違法な海上活動に対する非難を改めて強く表明する。我々は,海における実行される違法な活動との闘いを追求する中での,国及び地域のオーナーシップの重要性を再確認する。我々は,ソマリア沖海賊対策コンタクト・グループ(CGPCS),G7++ギニア湾フレンズ・グループ,アジア海賊対策地域協力協定(ReCAAP)によってなされた取組,並びにEU,NATO 及びその他の多国間海上作戦や独自の派遣国によって達成された成果を称賛する。我々は,既存の極めて重要な地域における海洋安全保障の改善において,引き続き鍵となる,国及び地域の取組,並びにそれらのオーナーシップを支援するためのより全体的なアプローチを追求することにコミットする。地域協力メカニズムは,海洋安全保障強化のための活動を,それらの設立文書の範囲を最大限活用しつつ,継続させるべきである。」

ウ アフリカ開発会議(TICAD Ⅵ)

 2016年8月,ケニアのナイロビで開催された第6回アフリカ開発会議(TICAD Ⅵ)にて採択された「ナイロビ宣言」及び「ナイロビ実施計画」において,海賊対策の重要性について以下の通り言及されています。

ナイロビ宣言:「我々は,海賊,違法漁業及びその他の海上犯罪を含む海洋安全保障に関する地域的及び国際的な取組を促進すること,及び海洋法に関する国際連合条約(UNCLOS)に反映された国際法の原則に基づく,ルールを基礎とした海洋秩序を維持することの重要性を強調する。我々は,また,海洋に関する国際法に従い,アフリカ統合海洋戦略(AIM戦略2050)に反映された,国際的及び地域的な協力を通じて,海洋安全保障及び海上安全を強化することの重要性を強調する。海賊や武装強盗に対する海上安全及び海洋安全保障を強化し,海上保安に関わる人々の能力構築により,海事法の遵守を強化する地域的,大陸的,国際的な取り組みを支援する。」

ナイロビ実施計画:「海賊や武装強盗に対する海上安全及び海洋安全保障を強化し,海上保安に関わる人々の能力構築により,海事法の遵守を強化する地域的,大陸的,国際的な取り組みを支援する。」

(4)各国・機関による海賊対処概況

EUNAVFORアタランタ作戦
<2008年12月開始>

(画像)EUNAVFORアタランタ作戦

  • 参加国は,オランダ,ドイツ,スペイン,ルクセンブルグ,フランス等。
CMF CTF-151
(連合海上部隊第151連合任務部隊)
<2009年1月開始>

(画像)第151連合任務部隊連合海上部隊 統合部隊

  • 参加国は,日,米,英,トルコ,シンガポール,韓国,パキスタン,デンマーク,タイ等。
各国独自の活動
  • 日本,ロシア,インド,韓国,中国,マレーシア,豪州,イラン等。

3 我が国による取組

(1)我が国のソマリア沖・アデン湾への護衛艦・哨戒機の派遣(2009年~)

 2009年3月より,我が国は護衛艦(海上保安官8名が同乗)を派遣し,アデン湾を航行する船舶の護衛にあたっています。また,同年6月よりP-3C哨戒機2機を派遣し,ジブチを拠点に警戒監視活動を行っています。

 2017年7月31日現在,海賊対処法に基づく護衛艦による護衛実績は797回で,3,802隻(日本関係船舶は690隻,その他外国船舶は3,112隻)。1回あたり平均4.8隻を護衛しています。

 また,2017年7月31日現在,海賊対処のために派遣されたP-3C哨戒機は累計1,850回飛行し,警戒監視活動を実施しています。

 さらに,従来のエスコート方式による護衛に加え,2013年12月10日から第151連合任務部隊(CTF151)に参加し,ゾーンディフェンスを実施しています。ゾーンディフェンスの実績では,2017年7月31日現在,実施日数は累計1,034日,確認した商船数は累計約14,3800隻です。2014年2月から自衛隊P-3C哨戒機もCTF151に参加しています。日本は,2015年5月から同年8月までの第1回に続き,2017年3月から6月まで,CTF151司令官として海上自衛隊海将補を派遣しました。

(2)海賊対処法の制定(2009年6月19日成立,同年7月24日施行)

 2009年6月,「海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律」が成立しました。法律成立以前に実施していた海上警備行動では,日本に関係する船舶のみ防護可能でしたが,本法律により,船籍を問わず,すべての国の船舶を海賊行為から防護することが可能となるなど,より適切かつ効果的な海賊対処が可能となりました。

海賊対処法の骨子

 国連海洋法条約に則して,国籍を問わず海賊行為を処罰し,適切かつ効果的に対処。

  • 海賊行為を犯罪として処罰
  • 日本関係船舶に限らない,外国船の護衛
  • 民間船舶に著しく接近するなどの海賊船に対する停船射撃

(3)ジブチにおける自衛隊独自の派遣航空隊のための拠点開設(2011年6月)

 2011年6月,運用の効率性向上を図るなどの観点から整備してきた,P-3C哨戒機部隊が独自に使用する活動拠点が完成し,運用を開始しました。同年7月7日に,ジブチ共和国側からディレイタ首相(当時)を招待し,小川防衛副大臣(当時)主催で,新活動拠点開所記念式典を実施しました。

 なお,2009年3月,外務省はジブチに連絡事務所を設置し,2012年1月にはこの事務所を大使館へ格上げしました。

(4)海賊多発海域における日本船舶の警備に関する特別措置法(2013年11月13日成立,同年11月30日施行)

 2013年11月,「海賊多発海域における日本船舶の警備に関する特別措置法」が成立しました。本法律は,海賊行為が多発している海域を航行する日本船舶(原油タンカー等)において,小銃を所持した民間警備員による警備の実施等の措置を規定しています。

(5)我が国の沿岸国の海上保安能力向上支援

 我が国は,ソマリア及び周辺国の海上保安能力の向上支援として,国際海事機関(IMO)のジブチ行動指針(DCoC)信託基金に1,460万ドルを拠出し,イエメン,ケニア,タンザニアの情報共有センターの設立,ジブチに地域訓練センターの建設及び海上保安能力強化のための研修プログラムが実施されています。

 また,我が国はアジア海賊対策地域協力協定(ReCAAP)情報共有センター(ISC)に対する資金拠出を通じて,アジアにおける海賊対策の経験及びノウハウをDCoC署名国(ソマリア及び周辺国を含む)に共有し,これら諸国の海上保安能力向上支援を実施しています。

 加えて,我が国は国連開発計画マルチパートナー信託基金事務所(UNDP-MPTF)が資金管理を行っている海賊訴追・取締能力強化を目的とした国際信託基金に450万ドルを拠出し,ソマリアや周辺国の法廷などの整備や法曹関係者の訓練・研修のほか,セーシェルなどのソマリア周辺国で有罪判決を受けた海賊のソマリアへの移送などを支援しています。

 上記の他,我が国は,ソマリア及び周辺国の海上保安機関職員を招請のうえ訓練を実施し,海上保安能力の向上を支援しています。

(6)我が国の対ソマリア支援【2007年~2016年度総計:4億3,250万ドル】

 ソマリア海賊問題の根本的解決には,ソマリアの復興と安定が不可欠との認識であり,この観点から,我が国はソマリア連邦政府による国造りを支援しています。

基礎サービス改善支援:
3億1,366万ドル
食糧援助,保健,水,衛生,教育,基礎インフラ整備,人間の安全保障強化等の人道支援
(UNICEF,UNHCR,UN-HABITAT,UNFPA,UNOPS,WFP,ICRC,IFRC,IOM,ILO,SRSG,人間の安全保障基金等経由)
治安向上への支援:
9,897万ドル
ソマリア政府警察支援,国境管理強化による治安改善支援,爆発物処理の支援
(UNDP,UNMAS,UNSOM等経由)
国内経済活性化の支援:
1,987万ドル
若年層や被災民の職業訓練,雇用創出,生計手段向上,マーケット修復及び企業開発
(UNDP,UNIDO,UNOPS,ILO等経由)

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