平成20年度 あなたの目で見る国造りの現場 ODA民間モニター報告書 Official Development Assistance
ケニア共和国 Republic of Kenya
1. シニア海外ボランティア(視聴覚教材制作)活動現場(技術協力)
野生生物保全教育強化プロジェクト(技術協力)
視察プロジェクト概要
シニア海外ボランティア(視聴覚教材制作)活動現場(技術協力)
実施年度
配属先
職種
平成19年(2007年)3月27日~平成21年(2009年)3月26日まで
林業・野生生物省 ケニア野生生物公社本部
視聴覚教材制作
実施目的
必要性
 国立公園及び保護区近郊において、家畜への被害や野生生物の密猟など深刻な問題を抱え、両者の共生が課題になっている。また、木材の伐採などによる森林の減少も社会問題である。こうした課題への対応としては、住民への環境教育を行う有効なツールとして視聴覚教材の開発や管理・操作方法の定着を目指した指導が必要とされている。
事業概要
 配属先は国立公園の野生生物保護(密漁摘発、環境教育の実施等)施設維持管理(車両管理、公園内道路整備等)を目的とした公社である。各国立公園では、海洋、湖、森林などの自然環境の維持及び野生生物の保護にむけた活動が行われており、ナイロビ本部は、他の国立公園の統括も担っている。
 JICAは1980年代より、同公社へのボランティア派遣や個別専門家派遣を通じてこうした自然及び野生生物の保護強化に貢献するとともに、2008年3月まで「野生生物保全教育強化プロジェクト」を実施し、人材の育成や環境教育戦略の策定に協力している。
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効果
1.  配属先が視聴覚教材を活用して環境保全及び野生生物保護教育活動を活性化する。
2. 視聴覚機材の使用指導、良質な教材を作成できることによって、地域住民への教育を円滑に進めることができる。
3. 施設内に設置された機材の保守管理指導により、長期的な機材の活用が可能となる。
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野生生物保全教育強化プロジェクト(技術協力)
実施年度
実施機関
平成17年(2005年)12月~平成20年(2008年)2月
ケニア野生生物公社(KWS(Kenya Wildlife Service))
実施目的
必要性
 ケニアは世界でも有数の豊かな野生生物・生態系を有し、国内で27箇所の国立公園及び34箇所の国立保護区を設けている。野生生物を見せるサファリを中心とした観光業は重要な外貨獲得源となっており、観光資源の保全、そのための市民への生態系保全の重要性に係る教育が必要とされている。
 我が国は2003年3月から個別専門家を派遣して、野生生物保護計画、環境教育などに関する協力を行っていたが、ケニア野生生物公社の体制整備は不十分であることから、より効果的な野生生物保全教育を実施する能力を強化することを目的とするもの。
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事業概要
 長期専門家・短期専門家の派遣、研修及び機材供与を通じて、ケニア野生生物公社の野生生物保全教育の実施能力を強化した。主な活動は以下のとおり。 イメージ

1.  ケニア野生生物公社の環境教育に関する基本方針である「教育実施戦略」の策定
2. 実際に市民への環境教育を担当するオフィサーへの研修(ワークショップの開催など)
3. 教育ツール、教材、機材および施設の開発、使用、保守管理能力の向上。プロジェクトを通じて、教育ツールを作成するとともに、作成手法、保守管理能力の技術移転を実施。
効果  基本方針である「教育実施戦略」が作成され、更に本プロジェクトを通じて教育ツールの作成・維持管理に関する能力が強化されており、成果を生かして実際に市民への環境教育が行われている(プロジェクトで作成した資料、教材作成手法が活用されている)。以前に比べて展示方法に工夫がみられる(手で触れる資料を増やすなど)と共に、教育用の視聴覚機材の利用頻度が上昇した。
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モニターからの意見・感想
小田 宣博
 野生生物保護は生物多様性の保全に貢献するともに、エコ・ツーリズム開発を通じての外貨獲得手段にもつながる。その保全管理は、ケニアの持続的発展にとって重要な意義を持ち、今後の発展の基盤となるものである。人口増加や経済活動の拡大に伴い、野生動物保護と地域住民との間の軋轢の問題は深刻化しており、野生生物等の自然環境を保全しつつ、人間の経済社会活動の両立を図るために、ケニア野生生物公社(KWS)の野生生物保全の教育・普及啓発活動は重要な役割がある。当初の車軸・建設機械からソフト面を重視した専門家及びシニア海外ボランティア派遣によって、効果的な自然保護教育活動が実施され、組織能力の体制の強化が図られていた。昨年末の騒動により、経営状態への影響は大きく、徐々に復活をしているとはいえ、経済的な自立発展への支援は重要である。今後もソフト面のニーズが拡大していく中で、的確に把握して自立を促進し、現地に密着した息の長い協力が望まれる。
萩森 健治
 野生生物観察ツアーはケニアの重要な産業である。ハンティング禁止、野生生物食肉禁止などの法規制の他、野生生物公社ではODA支援をうけて環境保護教育の充実を図ってきた。その結果、クロサイ、象などの生息数が倍増したとのこと。公社の総裁はじめ担当者の環境保全に関する見識と動物保護に対する情熱の深さには頭が下がる。また京都大学で博士号を取得された方もいて将来大いに期待できる。当面の問題について質問すると、すこし顔を曇らせ、密猟対策、マサイ族など放牧民との共生、政情不安による観光客の減少を挙げられた。動物保護に対する精一杯の努力にもかかわらず、政情不安や密猟で効果が低減するのはやりきれない思いだろう。
安田 尭彦
 サファリはケニアの貴重な財産だ。経済的に見ても、観光業(その中でもサファリが非常に大きな地位を占める)はケニアにおいて重要な外貨獲得産業であり、文化的にも非常に重要な役割を担っている。であるから、ケニア人全体で、ケニア全体の利益のために、国立公園とその自然を支えていくことが非常に重要だ。今回訪れたナイロビ国立公園の「サファリ・ウォーク」では、住民や子ども達に対しての環境教育に大きな力を入れていた。動物を間近に感じ、その生態を学ぶ機会が住民たちの身近にあることは、住民たちが野生動物を守っていくという意識の向上につながるため、非常に意義のあることだと感じた。
 また、総裁のリーダーシップの下、ケニア野生生物公社(KWS)の職員の方々の意識は非常に高かった。日本に頼るのではなく、日本をパートナーとしながらも、自分たちでプロジェクトを引っ張っていた。これは、援助に頼りがち、という途上国への先入観を覆すものであり、非常に印象に残っている。
鈴木 晴夫
 観光業がGDPの12%、そのうちサファリが60%という中で、サファリを守ることはケニア全体の経済力の確保、確立に関わってくる重要なことである。野生動物が減少している原因のひとつに密猟が問題になっているが、その対策に、ケニア野生生物公社は、土地の人や若い世代に自然保護や野生生物保全がいかに大事かということを判ってもらおうとODAの支援により、人材育成や環境保護教育に力を入れ、その結果、クロサイが15年で2倍になり、象も増えているという。野生生物公社のメンバーとの意見交換でも、その熱意が感じられた。
 しかし昨年の政情不安で観光客が減少していることは大きな問題である。一日でも早く正常に戻り、今後の観光客の増加に期待したい。
上口 恵
 ケニアの人々はサファリで野生の動物をよく目にしていると思っていたが、実際は経済的な理由で国立公園の入場料が払えず、野生の動物を見ることができない人々がいるということが衝撃的でした。
 そんな人々も身近に野生生物を感じることができるサファリ・ウォークという動物園のような施設があり、そこも視察しました。そこでも日本からの展示の指導が生かされていたり、特に日本からの機材が支援で役に立っていると言っていました。また、これらの日本の動物保護支援活動により黒サイは15年で約倍増にも一部貢献するなど確実に成果が出ていると感じました。ケニア市民への観光資源の保全・生態系保全教育を強化し、ケニアの人々を中心に世界的な遺産であるケニアのサファリの野生生物を大切に守っていくと同時に、観光業の安定・拡大へと繋がっていけばいいなと思いました。
古田 千奈津
 観光業を成長させる=失業率の改善、貧困の削減などケニアで抱える問題解決の一因を持っている。この案件は、そんな観光業成長のカギとなるプロジェクトであると感じた。特に、国立公園に隣接している日本の技術支援が入った動物園は、地元住民がよりケニアの生態系を理解してもらう為にあるものだが、近隣の治安が回復すれば観光客にも喜んでもらえる施設でもあると感じた。また、取り組みとして、資金を多く持たない学校などには、無料で子供達がこの動物園を見学できるようになっている。学校に通っている子供だけでなく、学校にも通えない子供達にもここを訪れる機会を与えてもらえればと思った。最後に、観光資源の保全を主として、さらなる観光客集客の為の努力をも期待したいと思う。
近江 佳永
 ケニアの観光業はGDPの12%を占める。そのためケニアの発展において、この分野への支援は重要な位置にある。
 サファリ・ウォークでは動物の生態を生かした見せ方をしており、視聴覚教材からは人々が動物に関心を持つよう様々な工夫が見られた。環境教育においては若者も重要な対象であるため、子ども向け施設も併設されていた。学生を招いたり、協力隊員が学校で出前学習を行ったりすることもあるそうだ。ただ、環境教育が学校教育にどの程度含まれているか正確に分からなかったが、今後どれだけ根付かせていけるかという点が課題のひとつになるのではないか。しかし、それに関する今後の具体的な計画を聞くことができなかったため、そうした点において改善可能なことがあるのではないかと考える。
鈴木 まり子
 日本の協力も得て、ケニアの野生生物公社が環境教育に力を入れようとしている姿勢を感じることができた。まだ十分に機能していない部分もあるかもしれないが、さらなる活用に期待したい。
 観光はケニアの主要な産業だ。ケニアの貴重な自然を守るだけでなく、観光資源として国全体を支える産業の柱にもなる。環境教育の指導者の育成やわかりやすい教材づくりによって、若い世代が自分たちのまわりの環境に気づき、考えるきっかけになればいいと思う。環境についての理解を深めることで、人々の生活と環境保護が共存していく道を見つけられるのではないだろうか。
長田 良一
 サファリ等、観光立国として既に世界的に著名なケニアに対して、なぜ日本が野生生物保護についての援助を行う必要があるのか、ということが視察前の疑問であった。その疑問に対する答えの一つが、サファリはあくまで外貨獲得を目的とした外国人対象のものであり、一般国民がその存在価値を理解することは難しいという事実である。従って、野生生物保護を含めた環境教育の充実は、確実にケニアの国益につながると言える。ケニア野生生物公社(KWS)の現地スタッフからは、日本の環境教育プログラムや指導カリキュラム支援が大きな効果を上げているという声を聞いた。それらの援助と連動した、一般国民のための施設「サファリ・ウォーク」が印象的だった。
園部 芳男
 日本でも動物園は教育施設であるが、ここは日本以上に教育的な施設であると実感した。詳しい説明書きや、サバンナの生活を想定しての飼育が見られた。
 野生生物公社総裁は「野生生物は世界の財産なのだ。」と言っていた。
 その大きな考えを、若い世代に教えるには最適である。現在は来場者に受動的に説明書きで保護を訴えているが、将来的には、学校の生徒への積極的な活用を望む。フィールドワークを更に取り入れるとよいと思う。この公園で、生徒がテーマを決め、そのテーマに沿って研究、発表させることで保護の考えは深く定着するであろう。より確かな保護が可能となるであろう。
武田 直子
 ケニアの観光資源であり世界的にも貴重な財産である野生生物が、実際には人間との共生の問題を抱えていることがよくわかった。ほとんどのケニア人がサファリを体験することなく、野生生物の理解に乏しいとすれば、環境の再現を重視したサファリ・ウォークは、動物園以上に教育的意義が大きい。サファリ内の掲示板がすべて英語とスワヒリ語の併記である点にも、単に観光目的ではない多言語社会への配慮を感じる。私もかつてサファリをしたことがある。今後、他の国立公園や保護区において、住民対象の教育活動を海外の観光客にも広げられるような支援を日本がすれば、PRや外貨獲得につながり、より自立的な運営の手助けになるのではないか。
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