ODAとは? 実施体制・援助形態

技術協力
法制度整備支援に関する基本方針

平成21年4月
法制度整備支援に関する局長級会議

I. 基本的考え方

 平成20年1月の第13回海外経済協力会議において、法制度整備支援を経済協力の重要分野の一つとして位置づけることが決定された。
世界各地の開発途上国に対し、立法支援や制度整備支援を行う法制度整備支援は、良い統治(グッド・ガバナンス)に基づく開発途上国の自助努力を支援するものであるとともに、我が国が将来に渡り、国際社会での名誉ある地位を保持していくための有効なツールであり、戦略的な支援を展開していく必要がある。したがって、政府開発援助(ODA)大綱、ODA中期政策等に基づき、(1)自由・民主主義等普遍的価値観の共有による開発途上国への法の支配の定着、(2)持続的成長のための環境整備及びグローバルなルール遵守の確保、(3)我が国の経験・制度の共有、我が国との経済連携強化といった観点から、基本法及び経済法の分野において積極的な法制度整備支援を行うこととする。また、技術協力を主としていることから、我が国の顔の見える援助の一翼を担うことが期待される。
我が国の法制度整備支援は、現地に専門家を派遣して、相手国のカウンターパート機関と対話・調整を進めながら、相手国の文化や歴史、発展段階、オーナーシップを尊重し、国の実情・ニーズに見合った法制度整備を支援していることに特長がある。さらに、法の起草・改正にとどまらず、法が適切に運用・執行されるための基盤整備、法曹の人材育成や法学教育までを視野に入れ、相手国自身による法の運用までを見込んだ支援を行っているという特長もある。
今後もこうした特長を活かし、相手国のニーズ・案件に応じ、専門家の派遣、学者や法律実務家を中心とする国内組織からのサポート、訪日研修、留学生受入等の多様な手法を組み合わせ、また有機的に連携させて、柔軟でバランスの良い、効果的な支援を実施する。支援の充実を図るには、派遣される専門家はもちろんのこと、法制度整備支援に取り組むことに適当な人材をより多く確保することが不可欠であることから、人材の活用と育成のための基盤整備を図る。さらに、具体的な支援方針の策定・実施等においては、関係省庁の連携はもとより、日本弁護士連合会、経済団体等関係者間の官民連携が不可欠であることから、今後オールジャパンによる支援体制を強化していく。なお、我が国の援助リソースを効果的効率的に活用するためにも、他ドナーとの役割分担にも留意し、研究機関とも連携しつつ、選択と集中による支援を実施する。
本基本方針は、今後数年間の政府の法制度整備支援に対する姿勢をまとめたものである。方針は本文と具体的取組で構成され、本文については今後必要に応じて見直し、具体的取組(別表及び参考資料)については毎年改訂することとする。

II. 国別実施方針

 法制度整備支援の実施に当たっては、これまでの支援実績、我が国にとっての外交面及び経済面での重要性、被援助国のニーズ等を総合的に勘案する。また、特に基本法分野への支援は、その国の発展に必要な基盤整備の根幹部分であり、相手国の歴史や文化、生活習慣に深く根ざしていることから、それらの諸点で我が国との共通性・親和性を有している国について、法体系の同質性なども考慮する。
以上を踏まえた上で、当面の方針としては、中国、モンゴル、カンボジア、インドネシア、ラオス、ベトナム、ウズベキスタンの7ヶ国を中心に進めていくものとする。その際、これら7ヶ国については、国別の実施方針を定めることとする。
また、今後、民主化の促進、法の支配の定着、平和構築支援等の観点から、7ヶ国以外のアジア諸国やアフリカ諸国等に対しても、相手国のニーズや必要に応じて、支援の需要を更にくみ取っていくこととする。

1. 中国

(1)我が国は、中国の市場経済化加速への努力を支援し、中国経済の国際経済との関わりを一層強化するよう促すとともに、市場経済化の担い手である民間の活動を活発化させるために、民事訴訟法、仲裁法等の基本法分野の支援及び経済活動を律する法制度の確立などガバナンス(良い統治)強化を支援している。
これらの支援は、我が国企業が中国において円滑に企業活動を展開し、民間主体で日中経済関係が拡大発展するよう環境を整備することに大きく貢献しており、中国側から高い評価を得ている。

(2)中国における法制度の執行・運用における改善は、広く同国における法の支配に基づいた健全なガバナンスの確立のために必要なものであり、また、我が国企業進出支援及び既進出企業の円滑な事業活動支援にも資することになる。

(3)我が国は今後、これまでの支援が効果を上げつつある競争法・金融法等の経済法分野における継続的な支援、民事訴訟法・仲裁法プロジェクトにおける効果的な支援、税関行政における適正化・迅速化への支援、知的財産法分野の執行支援に加え、司法人材育成、行政監理・監察や公務員の腐敗防止に係る制度整備・人材育成、環境・省エネ関連の制度整備、情報通信等のニーズにも対応することを検討する。

2. モンゴル

(1)我が国はモンゴル政府の市場経済を担う制度整備・人材育成に対する支援として、モンゴルの公的セクターを強化する観点から、調停制度及び税務等に関する協力や、留学生受入等の人材育成により、徴税制度の強化、法・規制の整備等の行財政管理能力向上、経済・社会分野の政策立案能力と専門能力の向上に関する支援を実施し、高い評価を得ている。

(2)同国では過去に制定された法令の再整備や法令間の整合性の確保が大きな課題となっている上、法案起草に対するモンゴル側の政策方針が必ずしも明確でない。また、様々な分野における法令の執行・運用面の体制の整備及び、在野法曹も含めた法運用に携わる人材の育成という課題があり、外国企業に不利な法令解釈や判断が行われるという問題も指摘されている。

(3)我が国は今後、法曹人材の育成や法制度が機能的に運用されるための継続的な支援(調停制度の導入、法律制定に際する既存の法律との整合性を統一的にチェックする機能・組織の整備への協力等を含む。)について検討する。

3. カンボジア

(1)我が国は、カンボジア政府が進める諸改革の成功に向けた支援として、重要政策中枢支援(法整備支援)としての民法・民事訴訟法の起草・成立支援や、税関、税制、税務等に関する協力を実施するとともに、裁判官・検察官養成校における組織的な学校運営・法教育のノウハウ移転といった人材育成を行っている。また、弁護士の人材育成についても様々な研修プログラムの活用を通して協力している。

(2)近年上記各分野において協力を行っているが、民事分野に関連したニーズが継続的に存在している。また、各省庁が起草する法令間の整合性を保つための、政府内部での調整機能の強化が必要である。

(3)我が国は、引き続き民事分野に焦点を当て、カンボジアにおける民法・民事訴訟法関連法令の起草、実務教育の更なる充実や、司法関係機関の組織強化、法曹の人材育成への更なる支援を検討する。

4. インドネシア

(1)インドネシアにおいては、通関、税務、労働法等、民間の事業活動に関わる様々な法制度整備とその透明かつ適正な運用が課題であるとの認識の下、我が国は、知的財産権法及び競争法に関し、適正かつ円滑な執行のための実施ガイドラインの策定支援、人材育成等の組織強化支援を行っている。また、司法に対する国民及び国際社会の信頼を得るとともに、投資環境改善の上でもガバナンス改革は極めて重要であることから、国家警察を民主的な組織としていくための国家警察支援や最高裁判所に対する調停制度に関する制度整備等の支援も行ってきた。

(2)これまで実施してきた、経済法整備関係では、知的財産権法や競争法に関し良好な成果を上げてきているほか、選挙支援や警察支援等のガバナンス支援でも、我が国の支援が十分効果を上げつつある。今後、インドネシアの経済発展の観点のみならず、我が国からの投資促進・日本企業保護の観点からも、関連法制度整備の必要性が高い。ただし、インドネシアの法制度整備分野は他ドナーも多くの協力を実施している。このため、我が国の援助リソースを効果的かつ効率的に活用するためにも、他ドナーとの役割分担にも留意しつつ、選択と集中の観点から真に必要な協力に注力して支援する必要がある。

(3)我が国は今後、我が国企業の活動円滑化等の観点から実体規定、手続規定の改正や、必要な立法措置やガイドラインの整備・拡充が望まれている競争法分野を始めとする経済法整備関連の支援を重点的に進める。その際は、情報通信等の制度整備のニーズに対応することも検討する。ガバナンス支援では,引き続き国家警察民主化支援を重点的に推進し、健全なガバナンスの基礎となる司法分野の包括的な法制度整備支援については、廉潔性と実務処理能力を兼備した法曹等の法律職による司法制度運用を進めるべく、中長期的な視点で支援の可能性を検討する。

5. ラオス

(1)我が国はラオスのASEAN地域経済統合、WTO加盟へ向けた歩みを支援すべく、法整備のための基盤づくり・人材育成、司法制度の強化等、法制度の信頼向上に向けた支援を行っている。

(2)近年は、ラオス側からの司法分野・法教育分野における人材育成へのニーズが非常に高いことから、長期研修等により計画的かつ着実に人材育成を実施している。

(3)今後、我が国は、法の分野においてインドシナ半島内での地域格差が生じることにより同地域が不安定化することを回避するため、司法関係機関及び大学等の法教育・研究機関の人材育成の更なる強化や,ラオスへ進出している日系企業からのニーズが高いラオスの投資環境整備に関する法制度整備への支援を、ラオス政府の援助受入態勢を勘案しつつ検討する。

6. ベトナム

(1)我が国はベトナムが経済成長促進・国際競争力強化、社会・生活面の向上と格差是正及び環境保全のそれぞれの開発課題に対応していく上での基盤として、健全なガバナンス体制の確立が必要であるとの認識の下、民法、民事訴訟法等、各種法律の制定への支援や、金融、中小企業等に関する政策的な助言、競争法、知的財産権、通関等の法令の執行にあたる人材育成への支援等の経済法分野の支援を行っている。近年、基本法分野では、ベトナムの課題の変遷に合わせて、起草支援に加え、法の適正な運用の確保という観点から司法制度の整備及び地方も含めた法曹・法律職等の人材の育成への支援面を強化し、高い評価を得ている。

(2)ベトナムでは法令の執行・運用における改善という課題がある。この面での改善は、同国における法の支配に基づいた健全なガバナンスの確立のために必要であり、また、我が国企業の活動の円滑化のためにも資することになる。

(3)今後、ベトナム自身が定めている法制度整備戦略及び司法改革戦略との整合性に留意しつつ、法律の運用面での徹底を図るため、人材育成等を通じた立法能力の強化及び法律の実施体制強化支援(裁判所、検察院、行政府(地方を含む)の能力強化等)を継続する。経済法分野では、税務、税制、競争法、金融、知的財産法分野で、関係部局の職員の能力向上に関する支援を行うとともに、近年市場経済化の進展に伴ってニーズが高まっている、消費者保護法への支援、PPP(官民連携)、公共調達における品質確保等の関連法制度整備、環境・省エネ関連の制度整備について支援の可能性を検討する。

7. ウズベキスタン

(1)我が国は、ウズベキスタンが着実に経済・社会改革を実施し、長期的には民主化を達成するよう、経済構造改革に伴う困難を緩和する援助、持続的経済成長の基盤作りへの支援に努めており、国別援助計画においても、「市場経済発展と経済・産業振興のための人材育成・制度構築支援」を援助重点分野の一つとしている。

(2)ウズベキスタンでは、各種法令の執行・運用における改善という課題がある。民間セクターの発展や貿易、外国投資の円滑化などに必要なビジネス環境の整備を主な目的として、法制度、税務、人材育成等の支援を行っていく。

(3)今後は、行政手続法令の改正、法令データベースの整備、倒産法注釈書の作成等、これまでの我が国の協力の成果を踏まえ、平成20年まで実施した技術協力プロジェクト「企業活動の発展のための民事法令および行政法令の改善」のフェーズ2の実施を検討するとともに、引き続き法令の適切な適用のための人材育成についても支援の可能性を検討する。

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