(1)日本の中の国際社会

自分の国の地理や習慣などを
生徒たちに教えるスリランカ人講師
(神奈川県横浜市立宮谷小学校提供)

三重県が招待したパラオのハリス小学校の生徒たち。
初めての田植えで宮川村の人々と交流を深めた。
(三重県生活部国際課提供)
私たちの身近な日常の生活の中にも、外国を感じさせる様々な文化が見い出せます。
観光で日本にきた人、外国から日本に移住してきた人、日本にきた研修生・留学生の人々など、身近な外国人は世界の文化や意外な視点を日本人に紹介してくれます。
一つの例をあげると、以前ロシアから日本を訪れたある観光グループの人が「日本の人はなぜロシアに観光にこないのですか」と日本人に質問したことがありました。その質問の背景として、ロシアで生活する人は日本人をあまり見かけないということがあったのかもしれません。日本では気づかなかった現地の視点からの質問に意外性を感じたりします。
日本の学校生活の中でも国際社会を感じる機会もあるでしょう。外国の学校ではクラスの中に様々な民族の人々があたりまえのように存在していたりする場合があります。日本の学校でもクラスに外国から移住してきた生徒がいると、クラス全体でその母国に関心を深めたりします。クラスの日常の営みの中で、国際理解が自然な形で進んでいくことが望ましいことだと思われます。
食事の時間なども考え方によっては国際社会を感じるよい機会となり得ます。例えばメキシカンレストランで、現地スタッフが現地の料理を、味覚や嗅覚も導引して紹介してくれたり、横浜の中華街で現地スタッフが雰囲気たっぷりに得意な料理の腕を見せてくれたりします。
地域で開催されている海外の様々な語学教室も国際社会を感じさせてくれます。在日外国人の方に日本語を教えるボランティア活動や、海外の人が日本人に現地の言葉を教える国際交流行事などに参加するのもよいのではないでしょうか。
サッカーやメジャーリーグの試合観戦から世界への興味がわくこともあるでしょう。Jリーグの地元サッカーチームの外国人選手は、サッカーファンにとっては地域でも身近なヒーロー的存在かもしれません。スポーツも外国の文化を見るよい機会となるでしょう。
日本にやってきた外国人

ワールド集会で韓国人留学生と
(千葉県松戸市立幸谷小学校提供)

JICAの青年招へい事業で来日している
ジャマイカの女性が横須賀市立
大楠小学校(神奈川県)を訪れ、
生徒たちに自分の国の説明をする
私たちにとって最も身近な国際社会は地域です。ここには多くの外国人が住んでいます。こうした人々との交流学習が注目されています。国際交流学習の意義は、子どもたちが異質な文化をもった人、ないしはそれを体験した人と調べ学習を直接したり、共同作業やボランティアをすることにあります。
これは子どもたちにとって、交流の中で異文化とどうかかわるか、違いをどう乗り越えるか、という課題を解決していくものとして意味ある活動ですが、同時に地域は、こういう文化の異なる人を包摂した社会であることに気づくこと、そこから地域を見直すきっかけとなり得ます。また、学校教育の場に地域の人々が入ってくることにもなり、国際的な社会に向かって学校を地域に開く契機にもなります。
隣の外国人としては、大学の留学生やJICAの研修員がいます。留学生や研修員の出身国はアジア諸国を中心に広く世界からきていることや、様々な分野・職業の人がいるので、学習する地域や内容との整合性をもつことができます。JICA研修員の多くは公務員や研究者であるため、それぞれ国際的な視野をもっており、学校に招くには適当な地域の人材といえます。
大学の留学生の中には教員研修留学生として、教員や教員養成校の教員が主にアジア各国から国費で来日しています。またJICAの研修員の中にも教員や教育省のスタッフが多く含まれています。彼ら自身は学校教育に大きな関心をもっており、生徒たちとの交流を望んでいます。
学習を展開するにあたっては、予備的な学習を組み込むことと、交流が具体的な課題をめぐって行われることや、交流のプロセスを生徒たちとともに形成すること、交流が相互的であること、事後学習とその後の継続性をどう確保するか、などが課題といえましょう。
予備学習としては、自分たちの地域学習の中に海外の視点、外国との比較を取り入れる視点が必要です。例えば郷土の踊りや歌、食事、住まい、農作物、子どもの遊び、仕事などの郷土理解を深める中で、隣の外国人の目を組み入れるなどが考えられます。
交流においては、招待状はどうするか、挨拶は誰がするか、何を活動の中心にするか、子どもたちはどのようなパフォーマンスをするのか等々、具体的な事柄について生徒たちの参加を積極的に促すことが、交流をより深くできるポイントとなります。また、子どもたちは交流に触発されて、非常に積極的になる場合が多いので、時間的な余裕も必要です。
相互的な交流とは交流する双方が手を出し合うことです。例えば料理を交流の核にした場合、生徒は郷土の料理について教え、外国人はその国の料理を教える。またそうした料理をどんな機会に食べるのか、誰がつくるのかなど、料理にまつわる情報をも相互に交換することができます。
事後学習と継続性に関しては、隣の外国人との交流にとって大きな意味をもっています。JICA研修員は1カ月から数カ月で帰国しますが、留学生は1年以上、長い場合には数年滞在します。そこでは地域の一員となって生活しますので、定期的な交流が可能になります。また、地域に住む外国の人に対して、生徒たちが何ができるのかを考え、実践するきっかけとすることも考えられるでしょう。
留学生は子どもたちの生活圏内に住んでおり、学校関係者にとってアクセスは困難ではありません。大学の留学生課や留学生センターに連絡すれば対応してくれるでしょう。また、JICA研修員へのアクセスは各地のJICA国内機関が窓口になります。
地域別訪日外国人数(2002年)
(125KB)
出身国・地域別留学生数(2001年5月1日現在)
(125KB)
(執筆・監修:第3第1節 内海成治 大阪大学大学院人間科学部教授)
知人の関係者
身近な生活の中で、外国の方と交流する機会はないでしょうか。「国際交流」というと、少し難しいように感じてしまいますが、各都道府県の地域国際化協会やJICA国内機関、NGO団体などの扉をたたいてみると、意外と身近に「国際交流」のチャンスがあることに気がつきます。地元にある様々な情報をうまく活用して、身近な国際交流を楽しんでみましょう。
事例紹介

「ぎふ国際ふれあい運動会」で
在住外国人とスポーツを楽しむ
交流・協力を広げる「世界のふれあい広場GIFU」
【(財)岐阜県国際交流センター】
岐阜県在住の外国人は約2万8000名おり、(財)岐阜県国際交流センターでは在住外国人と県民の交流を促進しています。
毎年「ぎふ国際ふれあい運動会」を開催し、これまで650名の参加者がスポーツを通して交流を深めてきました。また、「ギフ・カルチャー塾」では、同県の代表的な伝統工芸である紙すきと陶芸に在住外国人がチャレンジしました。こうした中、「インターナショナルセンター・ギザン」をオープン。外国人の交流サロン、外国人と日本人の自由なふれあいの場所がつくられました。
このように、(財)岐阜県国際交流センターでは、県民と在住外国人の共生を促進する事業を展開しています。
(国際協力プラザ誌1999年3月号)
事例紹介
外国文化を体験する“学内留学”
【東京都荒川区立第六日暮里小学校】

学内留学でインドのサリーを体験する生徒
東京都荒川区立第六日暮里小学校では、英語圏の先生を招いて授業を行っているだけでなく、様々な地域の人を招いて異文化理解教育を進めています。名づけて学内留学。
学内留学は年に3回、一度に何カ国かの外国人をゲストに招いて、その国についての理解を深めようというものです。子どもたちはそれぞれ、自分が知りたいテーマごとにグループをつくります。外国の言葉を学ぶ、音楽に触れる、実際に楽器に触れる、その国独特の衣装を着てみる、一緒に遊ぶ、食べ物について話を聞き、味わってみます…。
自分の国との違いに戸惑いながらも、子どもたちは楽しみながら、その違いを受け入れ始めます。ゲストの呼びかけにも、最初は恥ずかしがっていた子どもたち。回を重ねるごとに、人と人とのつながりに心を開いていきます。
また子どもたちは、そのような活動を通し、授業やニュースで見聞きする世界を身近に感じ始めます。フィリピンの生活について学んだ子どもから次のような感想がありました。
「フィリピンはいろんなものが安いということがわかりました。なぜ安いのか、なぜ給料も安いのかも知りたいです」。「親しみがわけば関心が深くなります。授業もよい方向へと進むんですね」と担当の加藤先生は話しています。
(国際協力プラザ誌2001年2月号)
外国人留学生
日本には今多くの外国人留学生がいます。彼らが日本に来て学ぶものは、学校での勉強をはじめ、日本の人々との交流との中で知ることのできる文化や習慣であったりします。
一方、私たちは、彼らとの交流により、彼らの国や文化を知り、新しい視点から日本という国を知る機会を得ることにもなるのです。お互いの交流を通して、異文化を学ぶ楽しみを分かち合い、多くの国々の人とよりよい友好関係を築くことは、国際社会の中でもとても大切なことです。
事例紹介
世界を学び、日本を振り返る国際交流会
【福岡県大野城市立大野東中学校】

留学生とけん玉を楽しむ生徒たち

日本の伝統スポーツ、剣道で交流する
福岡県大野城市にある大野東中学校は「豊かな人間性と自ら学ぶ意欲をもち、実践力のあるたくましい生徒の育成」を学校の教育目標に掲げ、特色ある学校づくりを推進しています。
外国人留学生に伝統文化を紹介
同校では、毎年、地元にいる留学生などを招待し、世界を学び、「世界の中の日本」を考えることを目的とした国際交流会を行っています。
今回は中国、マレーシア、エジプト、韓国、米国、タイ、ギリシャ、オーストラリアの合計21人がゲストとして招かれました。
全体交流会では、「七夕」「むすんでひらいて」を全校生徒で合唱、日本文化紹介として選択音楽「邦楽コース」の3年生が三味線・太鼓などの演奏や民踊を次々と披露しました。
この「邦楽コース」とは、3年生の選択教科の一つで、毎週地域の方をゲストティーチャーとして招き、三味線、和太鼓、民謡などの日本の伝統文化を学んでいます。3年生の学習の成果をみた2年生は、「伝統のある日本の音楽や踊りを披露することができて、とてもよかったと思う。文化を少しでも伝えられたことは、とても大きな意味をもつと思った」と語っています。
その後、学年別交流会となり、1年生はクラス別に留学生の自国紹介、質問会、剣道や柔道など日本の伝統的なスポーツの紹介やゲーム、2年生はドッチボールでスポーツ交流を行いました。実際に外国の人たちと話したり触れ合うことによって、生徒たちは国際交流の大きな意義を学んでいます。
初めて参加した1年生は、「今、世界は狭くなっていると感じた。言葉が通じなくても同じ感情をもった人間だから、うれしいときには一緒に笑えることがすごくうれしくて、世界を身近に感じた一日だった」と感想を綴っています。
(国際協力プラザ誌2001年3月号)
事例紹介
国際的な視野をもつ、主体的な取り組み
【神奈川県立神奈川総合高等学校】

JICA職員によるロングホ−ムル−ム

外国の方を迎えたフランス語の授業
自主性と国際性を身に付ける公立高校
生徒が自分で時間割を組み、年齢の異なる生徒が一緒に授業を受ける――神奈川県内初の「単位制普通科高校」として1995年に開校した神奈川総合高等学校は、個人の自主性を尊重するユニークな教育方針をとっている。
生徒たちは「個性化コース」と「国際文化コース」の2つから、希望のコースを選択できる。また、海外からの帰国生徒、県内在住外国人生徒を特別募集し、各国からの留学生を受け入れている。学校生活の中で様々な文化を理解し、豊かな国際性を身につけられるのが特色だ。
同校には、「個別選択LHR(ロングホームルーム)」という授業がある。これは、各教師が工夫して練り上げた企画を、生徒が選んで参加するもの。外部から講師を呼んだり、校外活動をするなどスタイルは様々だ。
生徒自身の企画による勉強会
このLHRの時間に、昨年11月14日、国際協力機構(JICA)の職員をゲストティーチャーに迎えて、「国際協力の若きハート」と題するプログラムが行われた。国際協力や異文化理解に興味をもつ各年次の生徒18人が参加。JICAの活動の説明を受け、インドネシアでの環境保護を取材した国際協力事業のビデオを観賞した後、活発なディスカッションを行った。将来何らかの形で国際的視野をもって社会と関わろうと考える生徒たちにとって、意義深い学びの場になった。
一方、12月18日には、生徒たちの別企画でJICA横浜国際センターを訪問した。国際協力ボランティアの同好会を設立するための勉強会が目的だ。
同校では、国際協力を目的とした「ワンコイン(チャリティー)コンサート」を生徒有志がボランティアで開催したり、留学生や外国の方との交流を企画するなど、国際的な分野に関心をもつ生徒が多い。また、生徒たちは与えられた枠組みの中で動かされるのではなく、何事にも自ら主体的に取り組み、行動するという。
「生徒は、JICAの活動から国際協力の実態を学び、その成果や課題などについて考えを深めています。目を輝かせて熱心に討議する生徒の姿に、しなやかで新しい明日の日本を、国際社会に拓く力の萌芽を感じました」と、JICA職員を招待した松岡潤治先生は語っている。
(国際協プラザ2003年2月号)
海外からの研修員
日本は海外から多くの研修員を受け入れています。海外との技術・技能の交換や人材の交流は、国内外の経済社会の発展や国際交流につながります。日本に海外の文化を伝えてくれる研修員のみなさんを通じて、もっと世界を広く知りましょう。
![]() JICA沖縄国際センターでの研修風景 |
事例紹介
日本語とともに多くを学ぶ研修員
【兵庫県和田山町】

町が中国から受け入れた日本語研修員と
交流授業をする和田山中学校の生徒
日本語学習の盛んな内蒙古自治区
中国の内蒙古自治区は、日本の進んだ科学技術を学ぶため日本語教育を重視し、多くの学校が日本語を第一外国語としていますが、指導者と指導用資料の不足に悩んでいました。この現状を知った兵庫県和田山町では、日本語学習への支援を日中友好交流の柱に決め、同自治区から日本語研修員を受け入れるプロジェクトを進めることとなりました。
1989年、内蒙古自治区フフホト市立蒙古族学校から2名の日本語研修員を受け入れて以来、すでに11回目を数えた研修員受け入れ事業は、予想以上の成果をあげています。92年からは中国側の要望で、フフホト市だけではなく同自治区全土から選ばれた教師が訪れています。
研修員は約3カ月間、和田山町の小中学校の教師からマンツーマンで日本語の指導を受けます。学校の授業も参観し、昼休みや清掃の時間には生徒たちと進んで会話をしています。滞在中はいくつかの家庭にホームステイし、日本の習慣や伝統文化を学んでいます。
交流の拠点として研修センターを設立
日本語研修のほか、内蒙古自治区との交流は多彩です。教育関係者の相互訪問、ジュニア使節団やモンゴル少年少女芸術団の来町、中国児童の書画展や内蒙古展などを開催しています。
中学校同士で始まった友好校関係も小学校に広がり、数々の友好提携を結んで活発な交流が続いています。町民の間でも、日本の大学に留学を希望する内蒙古教師の身元保証人になったり、友好校に自動車を寄贈するために浄財を提供するなど、内蒙古に対する支援・交流の輪が広がっています。
![]() 中国内蒙古自治区の蒙古族学校で 日本語の授業をする和田山中学校の先生 |
(国際協力プラザ誌1999年9月号)
事例紹介
異文化を肌で感じた体験が変化をもたらす
【東京都八王子市立由井中学校】

マレーシアからの留学生を招いた授業
八王子市立由井中学校では、年1回、国際協力機構(JICA)八王子研修センターの研修員を招き、交流会を行ってきた。昨年はフランス語圏の方々を招き、PTAや地域の方々の協力を得て、楽しい交流会となった。
こうした外国の人たちとの交流が発展し、昨年4月からは「総合的な学習の時間」の試行として、1年生を対象に国際理解教育を行っている。「自国文化・他国文化の学習を通して国際理解を深め、課題解決の能力を伸ばす」ことを目的に、前期は日本の文化、後期は世界の文化を知るというもの。
2学期から始まった「他国文化理解」では、元青年海外協力隊員や留学生を招いた授業が行われた。生徒たちは事前に各グループで、ケニア、マレーシア、コロンビア、ルーマニアの4カ国の中から調べる国を決め、テーマを設定。インターネットや図書館などで各自の課題について知識を深めた。
それぞれの国に赴任していた元協力隊員や各国からの留学生を招いた授業では、生徒たちから積極的な質問が相次いだ。最終的な成果はグループごとにまとめられ、校内に展示された。
実際に外国で生活した人や外国人と接することは、異文化を肌で感じる貴重な体験。活動を通じ、学校で行っているユニセフ募金活動が活発になったり、英語の授業に積極的になったり、日常生活の中にも国際理解教育の成果が表れているという。
今後は街に出て、外国人に直接インタビューをしたり、インターナショナルスクールを訪問するなど、外国人接する新しい試みも計画中だ。
(国際協力プラザ誌2002年2月号)
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