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人間の安全保障

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Last Updated: 2013. 6. 5

日本の取組


 日本は,21世紀の国際協調の理念として「人間の安全保障」を掲げ,その推進に努力しています。

 日本政府は,人間の安全保障の推進のために国内・国際社会における人間の安全保障の概念の普及と支援を通した人間の安全保障の現場での実践の両面から様々な取組を行っています。

概念普及に向けた取組

 国内外問わず政府,国際機関,それに市民社会に至る関係者の間で,人間の安全保障の重要性についての理解を得ることが重要です。

 日本政府は概念普及に向けた取組として,二国間や多国間の会議において人間の安全保障について議論するとともに,会議の結果作成される文書において人間の安全保障に関する記述を設けるべく努めてきました。また,人間の安全保障に対する関心国の拡大を目的として,2006年にニューヨークベースの非公式・自由なフォーラムである「人間の安全保障フレンズ」を立ち上げ,全7回の会合を開催しました。会合では,気候変動や保健,平和構築,世界経済・金融危機,女性に対する暴力,ミレニアム開発目標(MDGs),食料安全保障といった課題に人間の安全保障の概念がいかに貢献できるのか等が議論されました。

 人間の安全保障フレンズ会合を通じた概念普及の結果,2008年5月には国連総会で初めて人間の安全保障についての非公式テーマ別討論が開催されたほか,2010年4月には国連事務総長による事務総長報告も作成されました。さらに,2010年5月には初の国連総会公式討論が開催され,同年7月には人間の安全保障に関する初の国連総会決議が採択されました。この総会決議を受けて,2012年4月に人間の安全保障に関する2つ目の国連事務総長報告が発表されました。そして同年9月,国連総会において人間の安全保障の共通理解に関する総会決議が採択され,人間の安全保障をめぐる議論は大きく前進しました。今後,この共通理解に基づいて,人間の安全保障を更に推進していくことが重要であり,このような観点から,2013年5月に国連において人間の安全保障に関するハイレベルイベントが開催されました。また,2013年6月,第5回アフリカ開発会議(TICAD V)の機会に,人間の安全保障シンポジウムを開催しました。

 我が国は引き続き人間の安全保障の実現に貢献するとともに,人間の安全保障を指導理念としてMDGsを含む開発目標の達成に向けた取組やポストMDGs策定に向けた議論に貢献していきます。

人間の安全保障に関するハイレベル・イベント(2013年5月)(概要(PDF)

人間の安全保障の共通理解に関する国連総会決議(2012年9月)(全文(英文(PDF)概要(和文(PDF)

人間の安全保障に関する国連事務総長報告書(2012年4月)(全文(英文(PDF))/概要(和文(PDF)))

人間の安全保障に関する国連総会決議(2010年7月)(英文(PDF)仮訳(PDF)

人間の安全保障に関する国連事務総長報告書(2010年4月)(全文(英文(PDF))/概要(和文(PDF)))

人間の安全保障に関する国連総会公式討論(PDF)

高須外務省参与の人間の安全保障に関する国連事務総長特別顧問就任

 さらに,2011年1月及び2012年1月には世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)において人間の安全保障セッション(2011年(PDF)2012年(PDF))が開催されるなど,国連の枠を越えて,この概念の普及が進んでいます。

 このほか,人間の安全保障に関するシンポジウムを2000年以降ほぼ毎年開催しています。これらの活動を通じて,日本国内及び国際社会における人間の安全保障の概念の普及に積極的に取り組んでいます。

支援を通じた現場での実践

 人間の安全保障の推進のためには人間の安全保障という概念が何故重要なのかを人々の目に見える形で示す必要があります。そのため,日本政府は支援を通じた人間の安全保障の実践にも力を入れています。

 日本政府は2003年に改訂したODA大綱で人間の安全保障の視点に立った支援を援助政策の基本方針の一つと位置付け,これに基づく中期政策において具体的な援助アプローチを提示しました。日本政府は,日本の主導により1999年に国連に設置した人間の安全保障基金を始めとする国際機関経由の支援や,草の根・人間の安全保障無償資金協力等の二国間の支援を通じて,人間の安全保障の実現に向けた案件を積極的に支援しています。

外交青書: 第3章 第3節 人間の安全保障の推進に向けた地球規模の諸課題への取組(和文(PDF)英文(PDF)

人間の安全保障分野における政策方針

・イニシアティブ・資金コミットメント

第1回「アジアの明日を創る知的対話」(1998年12月)(和文/英文)
  小渕総理(当時)が人間の安全保障とは「人間の生存,生活,尊厳を脅かすあらゆる種類の脅威を包括的に捉え,これらに対する取組を強化するという考え方である」と発表し,21世紀は人間中心の社会の世紀としていく必要があると表明しました。また,国連に「人間の安全保障基金」を設立することを発表しました。

国連ミレニアムサミットにおける森総理演説(2000年9月)(和文英文
  森総理(当時)は,日本が「人間の安全保障」を外交の柱に据えることを宣言しました。また,世界的な有識者の参加を得て,人間の安全保障のための国際委員会を発足させ,この考え方をさらに深めていくことを提示しました。

・政府開発援助(ODA)大綱・中期政策での扱い(抜粋)

ODA大綱(2003年8月)

I.理念 ――目的,方針,重点
2.基本方針
(2)「人間の安全保障」の視点
紛争・災害や感染症など,人間に対する直接的な脅威に対処するためには,グローバルな視点や地域・国レベルの視点とともに,個々の人間に着目した「人間の安全保障」の視点で考えることが重要である。このため,我が国は,人づくりを通じた地域社会の能力強化に向けたODAを実施する。また,紛争時より復興・開発に至るあらゆる段階において,尊厳ある人生を可能ならしめるよう,個人の保護と能力強化のための協力を行う。

ODA中期政策(2005年2月)

2.「人間の安全保障」の視点について
(1)「人間の安全保障」の考え方
(イ)近年,グローバル化の深化により,国際社会はこれまでにない緊密な相互依存関係を持つようになった。しかし,同時に,テロや環境破壊,HIV/エイズ等の感染症,国際組織犯罪といった国境を越えた脅威,突然の経済危機や内戦などによる人道上の危機が増大している。これらに対応していくにはグローバルな視点や地域・国レベルの視点とともに,個々の人間に着目した「人間の安全保障」の視点を導入する必要がある。
(ロ)「人間の安全保障」は,一人一人の人間を中心に据えて,脅威にさらされ得る,あるいは現に脅威の下にある個人及び地域社会の保護と能力強化を通じ,各人が尊厳ある生命を全うできるような社会づくりを目指す考え方である。具体的には,紛争,テロ,犯罪,人権侵害,難民の発生,感染症の蔓延,環境破壊,経済危機,災害といった「恐怖」や,貧困,飢餓,教育・保健医療サービスの欠如などの「欠乏」といった脅威から個人を保護し,また,脅威に対処するために人々が自らのために選択・行動する能力を強化することである。
(ハ)我が国としては,人々や地域社会,国が直面する脆弱性を軽減するため,「人間の安全保障」の視点を踏まえながら,「貧困削減」,「持続的成長」,「地球的規模の問題への取組」,「平和の構築」という4つの重点課題への取組を行うこととする。

 (2)「人間の安全保障」の実現に向けた援助のアプローチ
「人間の安全保障」は開発援助全体にわたって踏まえるべき視点であり,以下のようなアプローチが重要である。
(イ)人々を中心に据え,人々に確実に届く援助
支援の対象となっている地域の住民のニーズを的確に把握し,ODAの政策立案,案件形成,案件実施,モニタリング・評価に至る過程でできる限り住民を含む関係者との対話を行うことにより,人々に確実に届く援助を目指す。そのために様々な援助関係者や他の援助国,NGO等と連携と調整を図る。
(ロ)地域社会を強化する援助
政府が十分に機能していない場合には,政府の行政能力の向上を図るとともに,政府に対する支援だけでは,援助が人々に直接届かないおそれがあることから,地域社会に対する支援や住民参加型の支援を組み合わせる。また,地域社会の絆を強め,ガバナンス改善を通じて地域社会の機能を強化することにより,「欠乏」や「恐怖」から地域社会の人々を保護する能力を高める。
(ハ)人々の能力強化を重視する援助
人々を援助の対象としてのみならず,自らの社会の「開発の担い手」ととらえ,自立に向けての能力強化を重視する。具体的には,人々を保護し,保健,教育など必要な社会サービスを提供するだけでなく,職業訓練等を通じて生計能力の向上を図り,さらに,人々の能力の発揮に資する制度,政策を整備して,人々の「自立」を支援する。
(ニ)脅威にさらされている人々への裨益を重視する援助
「人間の安全保障」の視点を踏まえた援助では,貧困を始めとする「欠乏からの自由」と紛争のような「恐怖からの自由」の双方を視野に入れ,人々が直面している脅威に対して,可能な限り包括的に対処していく必要がある。
また,その際,生命,生活及び尊厳が危機にさらされている人々,あるいはその可能性の高い人々がどこに分布し,何を必要としているのかを把握した上で重点的に援助を実施する。
(ホ)文化の多様性を尊重する援助
人々が文化的背景のために差別されることなく,文化の多様性が尊重される社会の形成を支援する。また,文化の名の下に個人の人権や尊厳が脅かされないように配慮する。
(ヘ)様々な専門的知識を活用した分野横断的な援助
貧困や紛争が発生する国々では,人々が直面する問題の構造は極めて複雑である。これらの問題に対処するためには,問題の原因や構造を分析し,必要に応じて様々な分野の専門的知見を活用して,分野横断的な支援を実施する。

3.重点課題について
重点課題に取り組むに当たっては,ODA大綱の基本方針である開発途上国の自助努力(オーナーシップ)支援,「人間の安全保障」の視点,ジェンダーの視点や社会的弱者への配慮を含めた公平性の確保,政策全般の整合性の確保を含めた我が国の経験と知見の活用,南南協力の推進を含めた国際社会における協調と連携を踏まえる。

人間の安全保障基金(和文(PDF)英文(PDF)
 人間の安全保障基金は,国際社会が直面する貧困,環境破壊,紛争,地雷,難民問題,麻薬,HIV/エイズを含む感染症等の多様な驚異に対して,政府,国際機関,NGO,市民社会等のすべての主体が連携,協力し,包括的,分野横断的に対応するプロジェクトを支援するものであり,人間の安全保障を実現する支援スキームとして高い評価を得ています。 

草の根・人間の安全保障無償資金協力(和文(PDF)英文(PDF)仏文(PDF)西文(PDF)中文(PDF)
  多様なニーズに対応する援助を目的とし,開発途上国の地方公共団体,教育・医療機関及び途上国において活動している海外NGOなどからの要請に対し,小規模なプロジェクトに対して実施されます。本制度は,住民に密着した足の速い援助として現地をはじめとした各方面から高い評価を得ています。

人間の安全保障分野における事例

チェルノブイリ被災コミュニティにおける恐怖,問題及びリスク対策に向けた個人への支援 
(UNDP/ウクライナ/人間の安全保障基金)

 1986年のチェルノブイリ原子力発電所事故により放射能で汚染された地域の住民は,健康上の不安や強制移住に伴うストレスから心理的なケアを必要としており,脆弱な状況に置かれています。また,ソ連崩壊後の混乱期が重なったことや高齢化や人口減少などの問題も事故後の経済復興を困難にしており,被災地域は貧困に直面しています。
2004年から始められたこのプロジェクトでは,まず被災地域にコミュニティ組織を立ち上げ,参加する住民で規則を定めたり会費を集めます。それぞれの組織は,活動をとおして学校や医療施設の改修,水道整備など住民ニーズに沿った復興プロジェクトを住民自身の手で計画し,地域行政,地元企業などとも協力しながら計画を実現させます。また,被災地域の一層の経済発展を促すため,地元の中小企業を支援するための活動も行っています。
このようなアプローチを取る背景には,個人や地域の能力強化を通して開発を実現し人々を脅威から守るという人間の安全保障の視点を踏まえていることに加え,原発事故から20年以上が経った現在,被災地域が持続的に発展するためには人道支援から開発支援への移行を実践する必要があるからです。
プロジェクトの結果,活発なコミュニティ組織が多く立ち上げられ,中には次々に生活条件改善のプロジェクトを実現している組織もあります。自分たちの手によるプロジェクトの実現は,被災民として生きる希望を失った人々が人間としての尊厳を取り戻すことにも寄与しています。他方,プロジェクトの実現が進まない脆弱なコミュニティ組織に対しては,人間の安全保障における保護の視点をより重視し,きめ細かな支援を行っていくことが求められています。このプロジェクトをはじめ,チェルノブイリ被災地に対して長期的支援を行っていく必要性はまさにこの点にあると言えます。


コミュニティ・センター改装について話し合うUNDPのコミュニティ開発オフィサーと住民(写真提供:UNDP)

コミュニティの手で改装された診療所(写真提供:UNDP)


タンザニア北西部における持続的な人間開発を通じた人間の安全保障の強化
(UNDP,UNICEF,WFP, FAO,UNIDO,UNHCR/タンザニア/人間の安全保障基金)

 タンザニアの北西部地域には,近隣諸国の内戦や部族対立を逃れてきた28万人もの難民が現在も国連機関からの支援を受けながら生活しています。一方,難民を受け入れている北西部地域はタンザニアの中でも貧しい地域で,しかも難民の長期居住により,森林の伐採,水源,野生動物の減少,エイズ感染の拡大,犯罪率の増加といった問題に直面しています。
こうした状況を踏まえ,難民を受け入れているコミュニティが抱えているこれらの問題に加え,脆弱性の高い貧困状況を少しでも改善するため,2005年から人間の安全保障基金を通じて様々な支援が実施されています。具体的には,不法な小型武器の回収,食糧の生産性向上,安全な水や衛生状態の改善,エイズ予防教育,正規教育から阻害されていた若者への基礎教育の提供などが行われています。
また,このプロジェクトの特徴は,6つの国連機関がそれぞれの専門性を生かしながら,他の機関とも協調して協力を行っているところにあります。タンザニアの国連機関の中でも組織間連携のベストプラクティスであるとの高い評価を受けています。
近隣諸国で和平が達成されたのを受けて,国連の支援の下,難民も徐々に自主的に本国への帰還を始めています。難民への支援とコミュニティへの支援のバランスを図っていかなければならないところに,このプロジェクトの難しさがあります。


ノン・フォーマル教育の授業風景(写真提供:在タンザニア日本大使館)

2007年1月の小型武器撲滅イベントの様子(写真提供:UNDPタンザニア事務所)

・二国間支援と国際機関・他ドナーとの連携

ボスニア・ヘルツェゴビナにおける人間の安全保障基金とJICAによる開発調査との連携

 日本政府は,人間の安全保障基金を通じて国連開発計画(UNDP)及び国連教育科学文化機関(UNESCO)が実施する「貧困削減を通じた地域での民族融和」プロジェクトに約235万ドル(約2億7,255万円)の支援を行っています。
ボスニア・ヘルツェゴビナでは,民族間紛争終結から10年以上経過したにもかかわらず紛争後の諸問題が引き続き存在しており,また,観光産業に大きな可能性を持ちながら,高い失業率,貧困及び大量の地雷等のために経済復興と発展が阻害されています。
このプロジェクトは,このような状況を改善するために,(1)所得創出活動に必要な土地18万平方メートルから地雷を除去,(2)地域住民の公衆衛生の実現とよりよい住環境の改善のための地方行政及びコミュニティの廃棄物管理能力の強化,(3)技術支援や小規模融資の実施を通じた,地方政府,NGO及び市民による観光分野での小規模事業の立ち上げ支援,(4)民族融和の取組の一環としての文化財や史跡の修復支援などを行っています。
このうち,技術支援や小規模融資の実施を通じた,地方政府,NGO及び市民による観光分野での小規模事業の立ち上げ支援のための活動は,JICAによる2005年の「ボスニア・ヘルツェゴビナ国エコツーリズムと持続可能な地域づくりのための開発計画調査」を基に立案・実施されています。

コンゴ民主共和国における人間の安全保障基金とコミュニティ開発支援無償との連携

 日本政府は,人間の安全保障基金を通じて国連開発計画(UNDP),国連食糧農業機関(FAO),国連児童基金(UNICEF)及び国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が実施する「イツリ地方における統合されたコミュニティ強化と平和構築支援プロジェクト」に約516万ドル(約5億8,334万円)の支援を行っています。
コンゴ民主共和国のイツリ地方では,内戦と政治的不安定の結果,大量の避難民が生まれ,社会インフラが破壊されたため,社会・経済条件が悪化し,現在,住民の80%が絶対的貧困に苦しんでいます。
このプロジェクトは,このような状況を改善するために,農業・漁業・畜産分野の協同組合に対する機材・種子・家畜等の供与,生産・保存方法に関する技術指導,青年・失業者向けの職業訓練,医療関係者・コミュニティに対する保健・衛生に関する教育・訓練,青年リーダー間のネットワーク構築などを行っています。
これに加え,日本政府は,コミュニティ開発支援無償としてUNICEF経由で実施している「イツリ地方におけるコミュニティ参加を通じた子供のための環境整備計画」(供与額3億7,600万円)において学校20校,補習校10箇所,産院15箇所等の建設又は改修を行うとともに,小学校20校及び村落103箇所を対象とする衛生施設を建設し,衛生・環境改善のための啓蒙活動を行っています。
これら2つのプロジェクトを組み合わせることで,イツリ地方の社会・経済の再建を通じた平和構築の進展とコミュニティレベルでの人間の安全保障の実現を効果的に達成すること目指しています。

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写真出典:外務省「ミレニアム開発目標MDGs」ハンドブック

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