(1) |
吸収源
今次会合でも、森林等の吸収源の獲得吸収量をどのような基準で、また、どの程度制限するかが焦点となった。吸収量は一律に制限すべきとの姿勢を崩さないEU、途上国及び小島嶼国と、一律ではなく国別の事情に配慮すべきと主張するアンブレラ・グループ間の対立があったが、閣僚会合前の17日、日加豪露が共同提案を提出し、その後、EU、途上国が柔軟な姿勢を示し、我が国の主張する吸収量を確保することが出来た。また、吸収源CDM(クリーン開発メカニズム)活動についても、EU、途上国は反対していたが、新規植林、再植林については一定の上限値の下、認められることとなった。なお、昨年まで厳しい態度であったEUが一転して態度を軟化させた背景には、ボン会合を成功させ議定書を発効させるため(我が国による締結が不可欠)、我が国に意図的に譲歩したものと見られる。
|
(2) |
京都メカニズム
他国との間で排出量の売買を認める制度については、それが専ら経済合理的に行いうるようなルールを決定すべしとの我が方等と、環境十全性のためにはむしろ取引を管理すべきであるとのEUとの立場が対立した。削減義務達成のための京都メカニズムの使用については、定性的にせよ上限を設けるべしとのEU側主張は緩和されたが、他方、売りすぎ防止の観点から、排出量取引に係る約束期間の内部留保は90%、又は、直近年の排出量の5倍のいずれか低い方とすることが採用された。途上国の適応措置支援のための京都メカニズムへの課金については、CDM事業に限定し、課金の割合は2%となった。CDM及びJI(共同実施)に関しては、原子力施設から得られるクレジットの使用は差し控える(refrain from)との記述になった。また、CDMに用いられる公的資金は、ODAの流用となってはならないとの記述となった。
|
(3) |
遵守
我が国、加、豪等が、議定書への出来るだけ限り多くの国の参加を促すとともに、議定書を実施可能なものとすべしとの遵守促進的な制度を主張したのに対し、EUやG77は不遵守の場合の法的拘束力のある措置をとる方式の導入を求めた。採択文書では、各国の遵守に促進的ものとすべしとの我が国等の主張と、法的拘束力のある措置を導入すべしとのEU、G77等の主張のいずれにも解釈可能な内容となり、遵守制度の枠組みに含まれる基本的な要素については今次会合で採択し、具体的なルールは今後の交渉に委ねられることとなる。法的拘束力のある措置にするかどうかについては、京都議定書発効後のCOP/MoP第1回会合において、措置されることとなった。
|
(4) |
途上国関連
今次会合の結果、枠組条約の下での資金協力として、(i)政治宣言による十分な資金提供のコミット(その意志がある附属書Ⅱ国が行う)及び資金貢献の毎年のレビュー、(ii)特別気候変動基金、最貧国基金の設立等が合意された。また、京都議定書の下での資金供与として、京都議定書適応基金の設立が合意された。技術移転に関しても、専門家グループを設立することが合意された。
また、一部先進国(EU各国、加、諾、NZ、アイスランド、スイス)は政治宣言により、途上国への協力を強化する旨共同発表したところ、我が国はこれとは別個に、資金援助に関する声明を発表し、互いの宣言を歓迎し合った。同宣言では、我が国からは、毎年平均約24億ドル行っている現在の二国間支援を強調した。一部先進国の共同宣言は、2005年までに毎年4.1億ドル(内訳は、(i)GEFの気候変動関連活動への貢献、(ii)現在の資金レベルに追加的なバイ、マルチ支援、(iii)3つの基金への資金、(iv)CDMからの収益の一部)の貢献を行う用意があること等を表明したものとなっている。 |