気候変動枠組条約第18回補助機関会合(SB18)
概要
平成15年6月13日
I.全体の概要
- 気候変動枠組条約第18回補助機関会合(科学上及び技術上の助言に関する補助機関会合(SBSTA))及び実施に関する補助機関会合(SBI))は、4日から13日、ボンで開催された。
- 今次会合では、京都議定書の発効が待たれる中、COP9での正式決定に向けて京都議定書の実施に係る技術的事項(CDM新規植林及び再植林プロジェクトのルールや各国排出量の審査指針)の協議が進捗した。また、開発途上国が気候変動の悪影響に対する「適応(下記3.参照)」を重視しその実施の促進を主張する中で、日本を含む先進国は、2013年以降の全ての国を含む将来の枠組みを検討する際に重要な緩和措置(排出削減)の検討を進めるべく努力し、今後更に協議を続けることとなった。
II.個別議題の議論
- COP9
COP9は、2003年12月1日から12日、ミラノにおいて開催される。閣僚級会合の日程は12月10日から11日で合意された。COP9議長は、ハンガリーが務めることとなった。閣僚級会合は、COP9が京都議定書発効により第1回京都議定書締約国会議(COP/MOP1)となる場合には各国からのステートメント方式で行い、COP9が単独で開催される場合には、円卓会合の形式をとることで合意した。
- 吸収源CDMの定義及び手続き
再植林の基準年、非永続性、ベースライン、追加性、社会経済・環境影響の分析・評価等の論点について各国提案を絞り込む作業が行われ、複数の選択肢を含む交渉用テキストが作成された。吸収源CDMについて積極的に推進しようとする日本、カナダ、中南米諸国等と慎重なEU及び一部の途上国との対立がある中で、COP9での合意に向けて多くの論点が残されており、COP9の直前にも協議を行うこととなった。
- IPCC第三次評価報告書
IPCC第三次評価報告書の科学的知見を今後の国際交渉にどう活用していくかが議論された。次々回(SBSTA20)会合から、科学的・技術的・社会経済的側面から適応措置、緩和措置を検討するための2つの議題を新設し、緩和措置と適応措置の結合に留意しつつ、恒常的に議論することとなった。また、COP9の直前にIPCCや産業界、地方政府、NGO等も交えた会合を開催し、新規議題の下での作業等について議論することとなった。 (注)適応措置(洪水対策、防波堤構築等)、緩和措置(温室効果ガス削減対策)
- 京都議定書の実施ルール(議定書5,7,8条関係)と技術的作業のレビュー
各国の排出量の算出方法がIPCCガイドラインから逸脱している場合に審査チームが調整を行う際の指針、審査員の訓練プログラム、首席審査員の選定基準等の議定書実施ルールについて、今次会合で合意された。排出量取引等に必要な国際取引ログについては、技術的検討を引き続き進めていくことになった。
また、日本等の主張により、排出量、排出トレンド、人口、GDPなどの気候変動関連情報を利用しやすい形で提供するデータベースを構築することが基本的に合意された。
- 研究及び組織的観測
条約上必要な気候観測データの継続的な収集と交換のため、気候に関する統合地球観測に向けた実施計画作成の調整をGCOS事務局に対して要請する決議をCOP9で検討することに合意。日本より、先のエヴィアンG8サミットの行動計画を受けて、2004年春に東京で閣僚級会合を開催し、地球観測の実施計画の策定に貢献する旨表明した。
- 2004-2005年度予算
2004-2005年度予算案については、EUは、京都議定書未発効の状況では、全ての条約締約国が国連分担率に従って、議定書関連予算も含む予算総額を分担すべきと主張し、米国は、拠出が議定書関連予算に振り向けられることに反対した。結局、米国に対しては議定書関連予算を除く条約関連予算に限って拠出を要請することとなった。予算総額については、COP9に決定が先送りとなった。
- 将来の枠組みに関する議論
2013年以降の将来の枠組みについて、各国政府間で個別に議論が行われるとともに、関連研究機関やNGOによる多数のサイドイベントが開催された。日本は、これら議論にも積極的に参加し、政府のみならず幅広い関係者の参画、全ての国の参加の必要性、経済と環境の両立などを訴えた。また、7月に主要国を招待して主催予定の「将来の更なる行動」に関する非公式会合については各国から高い関心が寄せられた。
- 主要国の動き
(1)ロシアより、現在、京都議定書の批准に係る検討を各省庁間で行っていること、9月にモスクワで開催予定の世界気候変動会議について、各国よりの支持を求めるとの発言があった。日本から、ロシアの京都議定書早期批准を強く求めた。
(2)日米協議を開催し、次回日米ハイレベル協議に向けた準備を行った。
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