G8環境・開発大臣会合 (概要と評価)
平成17年3月18日
外務省
環境省
林野庁
【ポイント】
- 3月18日、英国ダービーシャーにおいてG8環境・開発大臣会合が議長国英国の主催で開催され、わが国からは高野環境副大臣、河井外務大臣政務官、小西地球環境問題担当大使、黒木林野庁次長等が出席した。議長は英国のベケット環境食糧農村大臣及びベン国際開発大臣。
- 会合の結果、「アフリカと気候変動」に関するG8議長総括が作成され、アフリカの観測体制強化や気候変動対策の開発政策への統合を支援していくことが盛り込まれた。また、「森林違法伐採」に関するG8閣僚声明が採択され、公共調達及び貿易政策による違法伐採対策への取組、木材生産国への支援強化、G8森林専門家による進捗状況の評価などが盛り込まれた。本会合の議長総括及び閣僚声明は、7月のG8グレンイーグルズ・サミットに向けた検討の材料となる。
- この他、17日にG8環境大臣会合が開催され、「アフリカ委員会報告」と「生物多様性」について非公式な意見交換が行われた。18日にG8開発大臣会合が開催され、「アフリカ委員会報告」と「人道支援改革」について非公式な意見交換が行われた。
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(注)なお、G8環境大臣会合および開発大臣会合は、通常その年のサミット議長国の判断により開催されるが、両者の合同会合は今回が初めて。
1.会合の概要
- (1)環境・開発大臣合同セッション
- (イ)「アフリカと気候変動」
英国よりアフリカは気候変動の悪影響に対して脆弱であり、適応策実施の基礎となる人材育成や気候変動の観測体制の強化が必要と説明。
高野環境副大臣及び河井外務大臣政務官より、英国の基本認識を支持しつつ、気候変動対策の開発政策への統合の重要性を指摘した。また、全球観測システム構築のために我が国が衛星打ち上げを予定していることを紹介し、更に気候変動の悪影響への対処として植林やネリカ稲などの改良品種の導入が重要であると指摘して、我が国の具体的な支援内容を紹介した。各国もかかる取組の方向性に賛同しつつ、さらなる認識の共有と対策強化を求める意見が出された。
- (ロ)「違法伐採」
各国からG8として違法伐採対策に取り組むことの重要性が強調された。また、英国の調達政策や、EUの貿易政策等各国による違法伐採対策の取組が紹介された。
高野環境副大臣より、木材生産国に対する支援をさらに推進すること、公共調達からの違法伐採木材の排除に基本的に賛成であること、貿易政策の実施には国際社会のコンセンサス形成が必要であること、本問題を7月のグレンイーグルズ首脳会合で取り上げるべきであること等を発言した。
- (ハ)今次会議の成果として、上記の論点を盛り込んだ「アフリカと気候変動に関するG8議長総括」が作成され、「違法伐採に関するG8閣僚声明」が採択された。
- (2)環境大臣セッション
- (イ)「アフリカ委員会報告書」
アフリカにおける気候変動の悪影響や都市環境悪化などについて同報告書を基に議論。環境対策の開発への統合、ガバナンス強化の必要性等に関し指摘があった。
- (ロ)「生物多様性」
2010年までに生物多様性の損失速度を大幅削減するとの目標の重要性を確認。
- (3)開発大臣セッション
- (イ)「アフリカ委員会報告書」
英、仏より、サブサハラ・アフリカへの援助額の大幅な増額の必要性等を主張。わが方より、アフリカにおける平和の定着、農業開発、東アジアの経験を踏まえた貿易投資の促進、及び自助努力支援の重要性を指摘し、我が国の貢献を紹介した。
- (ロ)「人道支援」
英国より、人道支援強化のために新基金設立と国連人道調整官の権限強化等を提起。我が方より、新たな基金設立は慎重に検討すべきであるとし、世銀や地域開発銀行、他のドナーが災害予防の視点を取り入れて開発活動を行うことを支持。
2.会合の評価
- (1)持続可能な開発の達成に向けてG8の環境および開発大臣が一致
G8の環境大臣および開発大臣が初めて一同に会し、アフリカをはじめとする開発途上国において気候観測体制の強化や気候変動対策を開発政策に統合すること(例えば、気候変動を念頭に置いて農業品種改良、植林、土壌・水管理を推進)の重要性について一致したことは意義深い。
- (2)違法伐採問題について更なる取組強化の方向性を打ち出した
違法伐採問題について、公共調達及び貿易政策による違法伐採対策への取組、木材生産国への支援強化、G8森林専門家による進捗状況の評価が打ち出されたことは、今後の国際的な取組を強化していく上で重要な意義がある。
- (3)グレンイーグルズ・サミットでの検討に向けた有益な貢献を提供
「アフリカと気候変動」は本年のG8サミットの主要議題であり、議長総括は7月のグレンイーグルズ・サミットに向けて有益な検討材料を提供した。
- (4)環境及び開発政策の重要課題に関する我が国の立場を主張
我が国は、「アフリカと気候変動」についてはアフリカの観測体制強化支援と気候変動対策の開発政策への統合の重要性を、また「違法伐採」については木材生産国と消費国による取組の重要性を主張し、成果文書に反映された。
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