平成20年5月27日
5月12日(月曜日)から16日(金曜日)、ボン(独)において「生物の多様性に関する条約のバイオセーフティに関するカルタヘナ議定書」(以下、「議定書」)の第4回締約国会議(以下、「COP-MOP4」)が開催され、各締約国の代表団のほか、非締約国、産業界、NGO、教育界、国際機関等の代表がオブザーバー参加した。日本からは外務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省、環境省からなる代表団が参加した。
議定書の交渉時、遺伝子組換え生物の国境を越える移動から生じる損害についての責任と救済(liability and redress)について規定を設けるか否かは、交渉初期から最終段階まで紛糾した論点であったが、結果として、後の議論のプロセスを確保する条項(enabling clause)として第27条が設けられ、4年以内に完了するよう努めることとされた。その後、作業部会が5回、及び本会合に先立ち共同議長フレンズ(Friends of Co-Chairs)特別会合が開催され、テキスト案の作成作業及び交渉が行われた。今回のCOP-MOP4は、4年の交渉期間を経過した後に初めて迎える会合であり、同作業部会より報告が行われると同時に、共同議長フレンズ会合がコンタクトグループとして開催され、集中的な交渉が行われた。右交渉の結果として、責任と救済に関する規定作成を終了させるには至らなかったが、各国の立場の相違を埋めると共に、今後の作業方針について一定の共通認識を持ちつつ作業を継続することに合意した。
我が国は本交渉の主要な参加国として議論に積極的に参加し、責任と救済に関する規定が現実(又は実効)的で妥当なものとなるよう貢献すると同時に、参加国の合意形成のためにも大きな貢献を行った。
また、COP-MOP5の開催地については、5月16日から30日に予定される生物多様性条約第9回締約国会議(COP9)において併せて決定されるものとされたが、閉会の際の我が国代表団長の発言として、我が国(愛知県名古屋市)がCOP-MOP5の開催地として立候補しており、同地開催が実現することへの支援を要請する旨発言したところ、会場一面より賛意を示す拍手が起こった。
議定書の遵守を促進するために2004年に設立された遵守委員会より第4回会合までの報告がなされた後、関連決議が採択された。委員改選ではアジア地域から新たに中国とインドの委員が選出された。
締約国等に対してBCHに完全な情報の提出を求めること、事務局に対して情報提出様式の改善と手続の簡素化、BCHに掲載されている情報の有効性を確認する手続の実施を求めること等が決定された。
(能力開発)
締約国等に対し、新たな財政支援と能力開発行動計画の実施についての情報提供を求めること、教育と訓練に関しては、締約国にトレーニングに関するニーズ評価を求めること、大学等と協働して教育プログラムを開発すること等が決議された。また、議定書実施のための能力開発の実施をモニターする指標の改訂が決議され、この指標の利用経験に基づく情報を事務局に提出すること等が決定された。
(専門家登録制度)
登録する専門家に関する新たな基準の設定等が決定され、これまでの専門家名簿は改められ、締約国は新たな基準に従った専門家の登録を行うこと、名簿の活用に必要な資金の自発的な拠出を奨励すること等が決定された。
必要に応じて、イシュー別アプローチを利用、持続可能な人的資源能力(human resource capacity)の構築・強化・向上のための長期サポートの提供を通じて、バイオセーフティに関する以下のプログラムについて第五増資期(2010―2014)における資金拠出優先ニーズについて検討することを地球環境ファシリティー(GEF)に対し要請することを決定。
(i)通告手続きのための法的及び行政制度の実施
(ii)リスク評価及び管理
(iii)遺伝子組換え生物の探知といった執行措置の実施
(iv)「責任と救済」措置の実施
BS-II/6において言及されているすべての機関との協力的取り決めを実行、及び、強化し続け、財政面またはその他の側面で議定書の効果的な施行、とりわけ発展途上国のキャパシティーの増進に貢献できる他の関連機関及び措置の可能性を更に検討すること等について、事務局長に要請することを決定。
コア予算(BG基金)の予算額は5,492.7千ドル、各国の拠出総額は4,399.0千ドルであり、予算総額は、前回2カ年予算額4,723.1千ドルに比し16.3%増、同拠出総額3,983.1千ドルに比し10.4%増に決定。Gスタッフ1名増。余剰金について750千ドルをコア予算に充当することとした。
第2項aに関し、締約国等に対しサンプリングや検知技術の規則や基準に関する情報をBCHで利用可能とすること、第2項b及びcに関し、COP-MOP6において第2回国別報告書を基に各国の経験をレビューすること、第3項に関し、事務局に対して、オンライン会議を組織することとし、COP-MOP5に会合の概要や各国の見解をまとめること等が決定された。
特別な分野のリスク評価・管理に係る追加ガイダンスの検討に関し、オンラインフォーラムを開催するとともに、アドホック技術専門家グループを設置し、MOP5までに2回会合を行うこと等が決定された。
LMO(Living Modified Organism:いわゆる「遺伝子組換え生物」)の国境を越える移動から生じる損害についての責任と救済について、さらなる検討を行うための作業グループを設置し、COP-MOP5に作業結果を提出することが決定された。また、我が国は、作業グループ会合の開催費用への拠出を検討している旨表明し、会場から拍手を得た。
COP-MOPに対し、科学的及び技術的な事項について提言を行う、アド・ホックな技術的専門家会合を、必要に応じ、開催することが決定された。
議定書33条に基づく、各締約国内における議定書の履行状況の報告に関し、1)まだ報告書を提出していない締約国は速やかに事務局に提出すること、2)事務局は締約国から提出された報告書を分析するとともにこれまでの経験を踏まえた報告書様式の改善を提案すること、等が決定された。
事務局に対して、第1回国別報告書等を基に、議定書の第2回評価やレビューに役立つ手法の開発、COP-MOP5に戦略的計画を示すこと等が決定された。
能力開発に関する連絡会議の次期会合において、LMOの社会経済的影響に関する調査や情報交換のニーズを特定する協力の可能性について検討すること、締約国等は社会経済的影響を考慮した調査、調査方法、経験についてBCHを通じて情報共有すること、COP-MOP6においてこの議題について再検討することが決定された。
LMOの取扱に関する一般の意識、教育及び参画を進める作業プログラムを作成することを決議。そのために、締約国等は作業プログラムに盛り込むべき事項について事務局に提出し、事務局はそれを考慮し、COP-MOP5において検討できるよう作業プログラムを準備することが決定された。
第2回国別報告書(2010年予定)での通報実施状況の各国の報告を踏まえ、COP-MOP6でこの問題について検討することが決定された。
今次会合は、「責任と救済」の他に特段の大きなイシューがなく、NGO等を含め参加者の関心の多くは同問題の決着如何に注がれた。本問題については、依然関係国間で基本的な事項に関する立場に隔たりがあり、「責任と救済」に関する国際的なルールと手続を作成するとのプロセスを終結させるには至らなかったものの、各国の立場の相違を埋めると共に、今後の作業方針について一定の共通認識を持ちつつ作業を継続することに合意することができた。これは、今後の作業の進展に資するもので、今次会合の成果であったと言える。
「責任と救済」以外については、比較的議論がスムーズに進み今次会合を通じて、議定書の運営や発展に関する認識の成熟が進んだものと言える。
COP-MOP5の名古屋での開催については、事務局、議長国、参加国により賛同が得られた。
(参考)
「生物の多様性に関する条約のバイオセーフティに関するカルタヘナ議定書」は、遺伝子組換え生物の使用による生物多様性への悪影響を防止することを目的として2000年1月に採択され、2003年9月11日に発効。日本については、2004年2月19日から発効。2008年5月16日現在、146か国及び欧州共同体が議定書を締結している。第1回締約国会合は、2004年にクアラルンプール(マレーシア)で、第2回締約国会合は2005年にモントリオール(カナダ)、第3回締約国会合は2007年にクリチバ(ブラジル)で開催された。