軍縮・不拡散

軍縮・不拡散と我が国の取組(概観)

平成24年2月

1.軍縮・軍備管理・不拡散とは

(1)基本概念

 「軍縮」という用語は,一般的には,「国際的な合意の下であらゆる種類の軍備又は兵器を縮小,削減さらには廃絶する」ことを意味するとされます。また,冷戦時代には,軍備又は兵器の規制,検証・査察,信頼醸成,通常兵器の移転の規制などを意味する「軍備管理」という用語も登場しました。軍備管理は,1970年代に米国とソ連の間で行われた核兵器管理交渉から生まれ,主として核大国間の核管理の仕組みを作り上げることを目的とする概念として用いられるようになりました。

 これに対し,「不拡散」とは,兵器一般,特に核・生物・化学兵器といった大量破壊兵器やその運搬手段(ミサイル等)のほか,それらの関連物資や技術などの拡散を防止・抑制し,阻止することを意味します。冷戦終結後,大量破壊兵器等の開発・取得を企図する国やテロリストなど非国家主体への大量破壊兵器や,その関連物質・技術の拡散の懸念が高まったことを受け,国際社会はその防止のため,輸出管理や関連国連安保理決議の履行拡散に対する安全保障構想(PSI)等の取組を強化しています。

(2)なぜ軍縮・不拡散への取組がなされてきたのか

 世界には,領土紛争,宗教対立,民族対立など,潜在的に武力紛争に発展しかねない問題を抱えた地域が各地に存在しており,世界のほとんどの国が,自国の安全保障を確保するために,軍備を必要と感じています。

 軍備が各国の安全保障に必要なものであるとしても,その規模を適正水準に保ち,できれば縮小する方向で,各国間で強調して調整を進めていくことは,それぞれの国にとって以下の点で利益になります。

 第一に,軍備拡張競争や兵器の拡散は国際の平和と安全を損なうことにつながりかねません。無制限に増大した軍備や兵器は,たとえ侵略や武力による威嚇の意図がなくても,他国の不信感を高め,不必要な武力紛争を引き起こすことになりかねないのです。

 第二に,経済的な観点からも,莫大な軍事支出は,政府の財政を圧迫します。軍事支出をできる限り抑え,経済開発や福祉などに優先的に国家予算を振り向けることができるような条件を整えることも,軍縮・不拡散外交に期待される効果です。

2.軍縮・不拡散に対する日本の基本的考え方

我が国は、伝統的に以下のような基本的考え方に基づいて、軍縮不拡散外交を積極的に推進しています。

核軍縮・不拡散外交の推進

平和への願いと唯一の被爆国としての使命
  • 日本国憲法に謳われ,日本が拠って立つ世界の平和と安全の維持・確保を強く希求。
  • 我が国は唯一の戦争被爆国として,「核兵器のない世界」の実現に向け,核兵器使用の惨禍を訴える責務を有している。
  • 軍縮・不拡散における主導的な取組の実績は日本の貴重な外交資産。
日本の安全保障の観点
  • 日本周辺地域には,依然として大規模な軍事力が集中しており,領土や海洋を巡る問題や,朝鮮半島・台湾海峡を巡る問題など不透明・不確実な要素が残る。
  • 日本は,防衛力整備,日米安保体制の堅持とともに,周辺地域や国際環境の安定を確保するための外交努力により,自国の平和と安全を図るのが基本的立場。
人道主義的アプローチ及び人間の安全保障
  • 兵器の破壊力・殺傷力の向上に伴い戦争の悲惨さが加速度的に増大。人道主義的アプローチにより,軍縮・不拡散に取り組む意義が高まっている。
  • 紛争終結後も,紛争地に居住する人々の安全,生活を脅かす対人地雷などの兵器は,「人間の安全保障」に対する大きな脅威。

3.軍縮・不拡散をめぐる現状及び日本の取組

  1. (1)2009年4月のオバマ米国大統領によるプラハ演説以降,世界の軍縮・不拡散をめぐる状況は大きな変化を遂げました。2010年5月に開催された核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議は,核兵器国と非核兵器国の間の激しい対立の中で,国際的核不拡散体制の運命をかけた分水嶺とも言われていましたが,具体的な行動計画を含む最終文書を採択することに成功しました。世界に存在する核兵器のうち圧倒的多数を保有する米国とロシアは,戦略核兵器を削減する新START条約に署名し,この条約は2011年2月に発効しました。

     その一方で,条約発効から40周年を迎えたNPTを基礎とする国際的な核不拡散体制は,近年,核軍縮の進展の遅さ,北朝鮮やイランの核問題,核テロリズムの脅威や,原子力の利用の拡大に伴う核物質などの管理強化の必要性といった,重要な課題に引き続き直面しています。

  2. (2)日本は唯一の戦争被爆国として,「核兵器のない世界」の実現に向け,国際社会による核軍縮・不拡散の議論を主導してきています。日本は,すべての核兵器保有国に対し,軍備の透明性の向上を図りつつ核軍縮措置をとることを呼びかけ,具体的な行動を起こしています。

     2010年のNPT運用検討会議では,オーストラリアと共同で最終文書の合意の基礎となる具体的な提案を行うなど,会議の成功に重要な貢献を果たしました。また,2010年9月には日本とオーストラリアの外相が共同議長を務めて,核軍縮・不拡散に関する外相会合を開催し,地域横断的なグループを新たに立ち上げました。このグループ(軍縮・不拡散イニシアティブ(NPDI))では,NPT運用検討会議の最終文書に盛り込まれた行動計画を着実に履行し,核リスクの着実な低減に向けた実質的な貢献を行うことを目指しています。2011年9月に開催された第3回NPDI外相会合では,玄葉外務大臣が共同議長を務め,2012年4月~5月に開催される2015年NPT運用検討会議第1回準備委員会に向けて,行動重視の方向性を打ち出す必要を訴えました。2012年4月には第4回NPDI外相会合の開催が予定されています。日本は,志を共有する関係国とも連携しながら精力的に取組を進めていきます。

     さらに,2011年10月には、史上最多となる98か国と共に日本は,2010年のNPT運用検討会議の成果の着実な実施を呼びかける核軍縮決議案を国連総会に提出し,圧倒的多数の賛成を得て採択されました。

     日本は,こうした様々な取組を通じて,「核兵器のない世界」に向けた現実的な歩みを着実に進めていくことを重視しています。その第一歩として,包括的核実験禁止条約(CTBT)の早期発効や兵器用核分裂性物質生産禁止条約(カットオフ条約)の即時交渉開始は,緊急性の高い課題であり,国際社会には一刻の猶予も許されません。

  3. (3)また,核兵器以外の大量破壊兵器である生物兵器,化学兵器や,人道や開発などの様々な分野にまたがる緊急の課題である小型武器,地雷,クラスター弾などの通常兵器の分野における国際的な取組においても,日本は関連する条約・国際的規範の実施や普遍化への貢献,現場プロジェクトへの支援などを通じ,中心的な役割を果たしています。

     さらに,日本は,核不拡散体制の中核的措置である国際原子力機関(IAEA)の保障措置の強化・効率化に取り組みつつ,輸出管理協力の枠組みである国際輸出管理レジームや大量破壊兵器等の拡散を阻止するためのイニシアティブである「拡散に対する安全保障構想」(PSI)などの取組に積極的に参加・貢献しています。

     政府が軍縮・不拡散外交を進めていくためには,市民社会の熱意と関心も欠かすことができません。特に,日本には,核兵器の使用の惨禍の実相を国境と世代を超えて語り継いでいく責務があります。2010年創設した「非核特使」制度の活用を含め,政府として市民社会と連携しつつ,軍縮・不拡散教育を力強く促進していきます。

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