軍縮・不拡散

生物兵器禁止条約(BWC)の概要

平成21年12月

1.生物兵器禁止条約とその沿革

(1)生物兵器禁止条約(Biological Weapons Convention:BWC、正式名称は「細菌兵器(生物兵器)及び毒素兵器の開発、生産及び貯蔵の禁止並びに廃棄に関する条約」)は、生物・毒素兵器(以下、生物兵器(注1))を包括的に禁止する唯一の多国間の法的枠組みである。化学兵器及び生物兵器の戦時における使用を禁止した1925年のジュネーブ議定書を受け、生物兵器の開発、生産、貯蔵等を禁止するとともに、既に保有されている生物兵器を廃棄することを目的とする。

(2)1966年の第21回国連総会において化学兵器及び生物兵器の使用を非難する決議が採択され、更に1969年、ウ・タント国連事務総長が、「化学・細菌兵器とその使用の影響」と題する報告書を提出すると、国連などの場で化学兵器及び生物兵器の規制問題が活発に議論されることとなった。BWCは1971年の軍縮委員会において作成され、同年の第26回国連総会決議の採択を経て、1972年4月10日に署名開放され、1975年3月26日に発効した。

(3)現在の締約国数は163か国で、我が国は1972年4月10日(署名開放日)に署名、1982年6月8日に批准した。

(4)締約国による運用検討会議が5年毎に開催される(これまで、1981年、1986年、1991年、1996年、2001(2002)年、2006年に開催された)。

(注1):対象となるものは以下のとおり:

  • 防疫の目的、身体防護の目的その他の平和的目的による正当化ができない種類及び量の微生物剤その他の生物剤又はこのような種類及び量の毒素
  • 微生物剤その他の生物剤又は毒素を敵対目的のために又は武力紛争において使用するために設計された兵器、装置又は運搬手段(原料又は製法の如何を問わない)

2.条約の主な内容

(注2)【信頼醸成措置(Confidence Building Measures:CBM)】
条約上の義務ではなく、第3回運用検討会議の最終宣言及び国連総会決議に基づく措置として、締約国は自国内にある研究施設、生物防護計画、疾病発生状況等につき、毎年国連軍縮局に提出することを求められる。

3.条約強化に向けた試み

(1)検証議定書交渉の中断

 BWCは条約遵守を検証する手段に関する規定が不十分であることから、条約を如何に強化するかが課題とされている。そのため、第3回運用検討会議(1991年)は専門家会合を設けてこの強化手段について検討し、その報告を受けて開催された締約国特別会議(1994年)において、検証手段を導入するための議定書を作成することを目的として、「検証措置を含めた新たな法的枠組み」(検証議定書)を検討することを決定した。

 以来、6年以上にわたって検証議定書交渉が続けられたが、2001年夏、米国は、政策の見直しを行い、検証という手法はBWC強化のために有効ではないとして議定書作成に反対する姿勢に転じ、2001年11月に開催された第5回運用検討会議では、締約国間で意見がまとまらず、結局、同会議は具体的な成果を得ないまま中断された。

(2)3か年作業計画の採択

 2002年11月に再開された運用検討会議(再開会合)では、2001年秋の米国における炭疽菌事件以降の生物テロの脅威の高まりを受けて、締約国は、第6回運用検討会議(2006年)に向けて、毎年、締約国会合及びその準備のための専門家会合をジュネーブで開催し、条約の強化に関する5分野(注3)について、順次検討し、共通の理解と実効的な措置を促進していくこととなった(3か年作業計画)。

(注3)【3か年作業計画で議論した条約強化に関する5分野】

(i)条約の禁止事項を実施するための国内措置 (2003年)
(ii)病原体・毒素の保安管理・管理体制を確立・維持するための国内措置(バイオセキュリティ)(2003年)
(iii)生物兵器の使用の疑惑及び疑義のある疾病の発生に対処し、調査・被害の緩和を行うための国際的対応能力の強化(危機対処)(2004年)
(iv)感染症の監視・探知・診断に対処するための国内・国際的努力の強化(感染症サーベイランス)(2004年)
(v)科学者のための行動規範(2005年)

(3)第6回運用検討会議

 第6回運用検討会議(2006年11月20日〜12月8日)では、これまでの経緯を踏まえて、条約の運用状況を包括的に見直すことで今日の国際情勢におけるBWCの意義を再確認しつつ、今後とも、専門家会合と締約国会合を第7回運用検討会議(2011年)まで毎年開催し、条約の実施及び強化のために必要な方策について議論することに合意した。また、事務局機能を有する履行支援ユニット(ISU)の設置や信頼醸成措置(CBM)提出の合理化等、新たな措置に合意したことで、締約国間の情報共有が合理化され、未締約国に対する普遍化の働きかけが促進されることが期待される。

(4)2007-2010会期間活動(Intersessional Process)

 第6回運用検討会議での合意に基づき、3か年作業計画同様、専門家会合と締約国会合を年に1度ずつ開催し、各国国内法制の強化や病原体の安全管理、締約国間の相互支援、国際機関との連携等、条約の履行に関連するトピック(注4)について締約国間で議論していくこととなった。2011年までの年次会合では、3か年作業計画の時より進んで、条約の履行・強化につながる具体的な方策について締約国間で共通理解を深め、合意することができるかが重要な課題である。

(注4)【2011年までの年次会合で議論するトピック】

(i)国内法制度・機関の強化と法執行機関間の連携を含む、国内実施の強化手段(2007年)
(ii)BWC履行の地域的協力(2007年)
(iii)病原菌・毒素の実験室レベルでの安全を含む、バイオセイフティ・バイオセキュリティ向上のための国内的・地域的及び国際的な措置(2008年)
(iv)条約禁止目的に利用されうるバイオ科学技術の悪用を予防するための、監視、教育、意識向上及び行動規範(2008年)
(v)平和目的の生物学的科学技術の国際協力の向上のための、疾病サーベイランス、検知、診断及び封じ込め等の分野におけるキャパシティ・ビルディングの促進(2009年)
(vi)疾病サーベイランス、検知、診断及び公衆保健システムの国内能力向上を含む、生物・毒素兵器の使用疑惑に際した支援の提供と関係機関との連携(2010年)