第3章 分野別に見た外交 

4 国際組織犯罪、薬物

(1)国際組織犯罪
 グローバル化やハイテク機器の進歩、人の移動の拡大等が進む現代社会において、国際組織犯罪が大きな問題となっている。これに対処するため、国際的な協力が強く求められており、国連、G8、経済協力開発機構(OECD)の金融活動作業部会(FATF)等において、精力的な取組が行われている。
 国際組織犯罪防止条約及びその補足議定書は、組織犯罪を防止し、これと闘うための協力を促進する国際的な法的枠組みを創設するものである。同条約は、5月に締結について国会の承認を得ており、締結に必要な国内担保法の整備が済み次第、締結の運びとなる見込みである。人身取引については社会啓発等の国際シンポジウムの開催や、国際機関を通じた防止対策への資金援助を行い、人身取引根絶のための国際協力を推進している。
 また、腐敗問題が、開発や民主主義の進展を阻害する重大な要因となっているとの認識の下、国連腐敗防止条約が、10月、国連総会において採択された。この条約は、腐敗防止のための防止措置、犯罪化条項、国際協力を含む包括的な条約であり、日本も積極的に交渉に参加した。12月にメキシコにおいてハイレベルの署名会合が開催され、阿部外務副大臣が出席して署名を行う等、計95か国が署名を行った。
 通称リヨン・グループと呼ばれるG8国際組織犯罪上級専門家会合は、G8サミット・プロセスにおける首脳・外相等による国際組織犯罪に関する議論に貢献してきたが、2003年にはハイテク犯罪対策の観点から、サイバー攻撃から重要情報インフラを守るための重要情報インフラ防護に関する11原則を採択し、司法内務閣僚会合で承認された。特に、米国同時多発テロ発生以降は、国際組織犯罪対策の知識や経験をテロ対策に効果的に役立てるという観点から、G8テロ対策専門家会合であるローマ・グループとの合同会合が開催されている。
 FATFは、資金洗浄(マネーロンダリング)及びテロ資金供与に関する国際的な対策と協力の推進に指導的な役割を果たしている。FATFの主な活動内容は、資金洗浄対策に関する国際的な基準となる「40の勧告」の策定、見直し及び実施状況の監視、「テロ資金供与に関する特別勧告(8の勧告)」の策定及び実施状況の監視等である。また、地域的かつ汎世界的な資金洗浄対策及びテロ資金対策として、地域的な対策機関の支援や、地域別のレビューグループを設置して非協力国・地域に関する取組を行っている。「40の勧告」については、2003年6月の改訂により、従来の資金洗浄対策のみならずテロ資金対策をも包括した新たな枠組みとなり、弁護士、会計士、不動産業者、宝石商・貴金属商、カジノ等の非金融機関・職業専門家も規制の対象とする等対策が強化された。日本は、「40の勧告」改訂を支持し、非協力国・地域に関する取組として設置されているアジア太平洋地域レビューグループの議長を務める等、FATFの中心的なメンバーとしてこれらの活動に積極的に参加している。日本は、地域レベルの取組を含め、資金洗浄対策及びテロ資金対策に関する国際的な取組の推進に引き続き積極的に貢献していく方針である。

 
国際組織犯罪防止条約及びこれを補足する3議定書

国際組織犯罪防止条約及びこれを補足する3議定書

 
▼国連腐敗防止条約署名式で演説する阿部外務副大臣(12月)

▼国連腐敗防止条約署名式で演説する阿部外務副大臣(12月)

 

テキスト形式のファイルはこちら

前の項目に戻る     次の項目に進む