租税条約の締結
わが国は、一九六一年までに、米国をはじめとしてスウェーデン、パキスタン、ノールウェー、デンマーク、インド、シンガポールの各国との間に二重課税防止条約を締結したが、その後一九六三年七月末までに、さらにオーストリア、ニュー・ジーランド、英国およびタイとの間の租税条約が発効し、合計一一カ国との間に租税条約を有することとなった(マラヤ連邦との間の条約も近く効力を発出させる手続がとられる見込みである)。
このような二重課税防止条約は、同一の所得に対して、所得が発生する国と所得が帰属する個人または法人の本国が異なる場合は、それぞれの国の税法が重複して適用されることとなるので、このような二重課税を回避することを主な目的として締結されるものであるが、あわせて、税制の面を通じて相互間の通商関係、経済協力および文化交流の促進を図るために租税の免除または軽減の措置を定めたものである。なお、このようにあらゆる所得を対象とした一般的条約が締結されていない国との間でも、国際海運または国際航空運輸の事業の安定した発展を助長する手段として、相手国の事業者の自国における所得を相互主義に基づいて免除する制度が国際運輸業を有する主要国で行なわれており、わが国は一九六二年「外国人等の国際運輸業に係る所得に対する相互主義による所得税等の非課税に関する法律」が制定され(従来は大正六年の法律に基づいて海運に関して相互免税の制度があり、新法に引きつがれている)、現在この法律に基づいて諸外国との間にこのような取極を締結する交渉が行なわれている。
以下、租税関係諸条約(取極)の一九六二年当初以降の締結状況を掲げると、つぎのとおりである。
1 日本・オーストリア間の二重課税防止条約(一九六一年十一月二十日ウィーンで署名、一九六三年四月四日東京で批准書交換、同日効力発生)
2 日本・ニュー・ジーランド間の二重課税防止条約(一九六三年一月三十日ウェリントンで署名、一九六三年四月十九日東京で批准書交換、同日効力発生)
3 日本・英国間の二重課税防止条約(一九六二年九月四日東京で署名、一九六三年四月二十三日ロンドンで批准書交換、同日効力発生)
4 日本・フランス間の海運航空運輸業の所得税相互免除に関する取極(一九六二年十二月二十一日パリで交換公文、一九六三年四月二十四日効力発生)
5 日本・タイ間の二重課税防止条約(一九六三年三月一日バンコックで署名、一九六三年七月二十四日バンコックで両国の承認の通告、同日効力発生)
なお、つぎの条約は既に署名が行なわれたが、いまだ効力は発生していない。
日本・マラヤ連邦間の二重課税防止条約(一九六三年六月四日、クアラ・ランプールで署名)