○賠 償 関 係
日本国及びヴィエトナム共和国は、
千九百五十一年九月八日にサン・フランシスコ市で署名された日本国との平和条約の規定の趣旨に従って行動することを希望して、この賠償協定を締結することに決定し、よって、次のとおりそれぞれの全権委員を任命した。
日 本 国
外務大臣 藤山 愛一郎
ヴィエトナム共和国駐在特命全権大使 久保田 貫一郎
外務省顧問 植村 甲午郎
ヴィエトナム共和国
外務大臣 ヴ・ヴァン・マオ
日本国駐在特命全権大使 ブイ・ヴァン・ティン
外務省総務局長 ファム・ダン・ラム
これらの全権委員は、互に全権委任状を示してそれが良好妥当であると認められた後、次の諸条を協定した。
第一条
1 日本国は、現在において百四十億四千万円(一四、〇四〇、〇〇〇、〇〇〇円)に換算きれる三千九百万アメリカ合衆国ドル(三九、〇〇〇、〇〇〇ドル)に等しい円の価値を有する日本国の生産物及び日本人の役務を、この協定の効力発生の日から五年の期間内に、以下に定める方法により、賠償としてヴィエトナム共和国に供与するものとする。
2 前項に定める生産物及び役務の供与は、最初の三年の期間において現在において三十六億円(三、六〇〇、〇〇〇、〇〇〇円)に換算される一千万アメリカ合衆国ドル(一〇、〇〇〇、〇〇〇ドル)に等しい円の年平均額により、次の二年の期間において、現在において十六億二千万円(一、六二〇、〇〇〇、〇〇〇円)に換算される四百五十万アメリカ合衆国ドル(四、五〇〇、〇〇〇ドル)に等しい円の年平均額により行うものとする。
第二条
1 賠償として供与される生産物及び役務は、ヴィエトナム共和国政府が要請し、かつ、両政府が合意するものでなければならない。これらの生産物及び役務は、この協定の附属書に掲げる計画の中から選択される計画に必要な項目からなるものとする。
2 賠償として供与される生産物は、資本財とする。ただし、ヴィエトナム共和国政府の要請があつたときは、両政府間の合意により、資本財以外の生産物を日本国から供与することができる。
3 この協定に基く賠償は、日本国とヴィエトナム共和国との間の通常の貿易が阻害されないように、かつ、外国為替上の追加の負担が日本国に課されないように、実施しなければならない。
第三条
両政府は、各年度に日本国が供与する生産物及び役務を定める年度実施計画(以下「実施計画」という。)を協議により決定するものとする。
第四条
1 第六条1の使節団は、各年度の実施計画に従つて生産物及び役務の供与が行われるため、ヴィエトナム共和国政府に代つて、日本国民又はその支配する日本国の法人と直接に契約を締結するものとする。
2 すべてのそのような契約(その変更を含む。)は、(a)この協定の規定、(b)両政府がこの協定の実施のため行う取極の規定及び(c)当該時に適用される実施計画に合致するものでなければならない。これらの契約は、前記の基準に合致するものであることを日本国政府により認証されなければならない。この項に定めるところに従つて認証を得た契約は、以下「賠償契約」という。
3 すべての賠償契約は、その契約から又はこれに関連して生ずる紛争が、一方の契約当事者の要請により、両政府間で行われることがある取極に従つて商事仲裁委員会に解決のため付託される旨の規定を含まなければならない。両政府は、正当になされたすべての仲裁判断を最終的なものとし、かつ、執行することができるものとするため必要な措置を執るものとする。
4 1の規定にかかわらず、賠償としての生産物及び役務の供与は、賠償契約なしで行うことができる。ただし、各場合について両政府間の合意によらなければならない。
第五条
1 日本国政府は、第一条の規定に基く賠償義務の履行のため、賠償契約により第六条1の使節団が負う債務並びに前条4の規定による生産物及び役務の供与の費用に充てるための支払を、第九条の規定に基いて定められる手続によつて、行うものとする。その支払は、日本円で行うものとする。
2 日本国は、前項の規定に基く円による支払を行うことにより及びその支払を行つた時に、その支払に係る生産物及び役務をヴィエトナム共和国に供与したものとみなされ、第一条の規定に従い、その円による支払金額に等しいアメリカ合衆国ドルの額まで賠償義務を履行したものとする。
第六条
1 日本国は、ヴィエトナム共和国政府の使節団(以下「使節団」という。)が、この協定の実施(賠償契約の締結及び実施を含む。)を任務とする同政府の唯一かつ専管の機関として日本国内に設置されることに同意する。
2 使節団の日本国における事務所は、東京に設置されるものとする。この事務所は、もつぱら使節団の任務の遂行のためにのみ使用されるものとする。
3 使節団の日本国における事務所の構内及び記録は、不可侵とする。使節団は、暗号を使用することができる。使節団に属し、かつ、直接その任務の遂行のため使用される不動産は、不動産取得税及び固定資産税を免除される。使節団の任務の遂行から生ずることがある使節団の所得は、日本国における課税を免除される。使節団が公用のため輸入する財産は、関税その他輸入について又は輸入に関連して課される課徴金を免除される。
4 ヴィエトナム共和国の国民である使節団の長及びその上級職員二人は、国際法及び国際慣習に基いて一般的に認められる外交上の特権及び免除を与えられる。
5 ヴィエトナム共和国の国民であり、かつ、通常日本国内に居住していない使節団のその他の職員は、自己の職務の遂行について受ける報酬に対する日本国における課税を免除され、かつ、日本国の法令の定めるところにより、自用の財産に対する関税その他輸入について又は輸入に関連して課される課徴金を免除される。
6 賠償契約から若しくはこれに関連して生ずる紛争が仲裁により解決されなかつたとき、又は当該仲裁判断が履行されなかつたときは、その問題は、最後の解決手段として、日本国の管轄裁判所に提起することができる。この場合において、必要とされる訴訟手続上の目的のためにのみ、4に定める使節団の長及び上級職員は、訴え、又は訴えられることができるものとし、そのために使節団における自己の事務所において訴状その他の訴訟書類の送達を受けることができるものとする。ただし、訴訟費用の担保を供する義務を免除される。
使節団は、3及び4に定めるところにより不可侵及び免除を与えられてはいるが、前記の場合において管轄裁判所が行つた最終の裁判を、使節団を拘束するものとして受諾するものとする。
7 最終の裁判の執行に当り、使節団に属し、かつ、直接その任務の遂行のため使用される土地及び建物並びにその中にある動産は、いかなる場合にも強制執行を受けることはない。
第七条
1 両政府は、この協定の円滑なかつ効果的な実施のため必要な措置を執るものとする。
2 ヴィエトナム共和国は、日本国が第一条に定める生産物及び役務を供与することができるようにするため、利用することができる現地の労務、資材及び設備を提供するものとする。
3 この協定に基く生産物又は役務の供与に関連してヴィエトナムにおいて必要とされる日本国民は、ヴィエトナムにおける所要の滞在期間中、その作業の遂行のため必要な便宜を与えられるものとする。
4 日本国の国民及び法人は、この協定に基く生産物又は役務の供与から生ずる所得に関し、ヴィエトナムにおける課税を免除される。
5 ヴィエトナム共和国は、この協定に基いて供与された日本国の生産物が、ヴィエトナム共和国の領域から再輸出されないようにすることを約束する。
第八条
この協定の実施に関する事項について勧告を行う権限を有する両政府間の協議機関として、両政府の代表者で構成される合同委員会を設置する。
第九条
この協定の実施に関する手続その他の細目は、両政府間で協議により決定するものとする。
第十条
この協定の解釈及び実施に関する両政府間の紛争は、まず、外交上の経路を通じて解決するものとする。両政府がこうして解決することができなかつたときは、その紛争は、各政府が任命する各一人の仲裁委員とこうして選定された二人の仲裁委員の合意により定める第三の仲裁委員との三人の仲裁委員からなる仲裁裁判所に決定のため付託するものとする。ただし、第三の仲裁委員は、いずれか一方の国の国民であつてはならない。各政府は、いずれか一方の政府が他方の政府から紛争の仲裁を要請する公文を受領した日から三十日の期間内に各一人の仲裁委員を任命しなければならない。第三の仲裁委員については、その期間の後の三十日の期間内に任命されなければならない。一方の政府が当該期間内に仲裁委員を任命しなかつたとき、又は第三の仲裁委員について当該期間内に合意されなかつたときは、いずれか一方の政府は、それぞれ当該仲裁委員又は第三の仲裁委員を任命することを国際司法裁判所長に要請することができる。両政府は、この条の規定に基いて与えられた決定に服することを約束する。
第十一条
この協定は、批准されなければならない。この協定は、批准書の交換の日に効力を生ずる。批准書の交換は、東京でできる限りすみやかに行われなければならない。
以上の証拠として、下名の全権委員は、この協定に署名調印した。
千九百五十九年五月十三日にサイゴンで、日本語、ヴィエトナム語及びフランス語により本書二通を作成した。解釈に相違があるときは、フランス語の本書による。
日本国のために
藤山 愛一郎
久保田貫一郎
植村 甲午郎
ヴィエトナム共和国のために
ヴ・ヴァン・マオ
ブイ・ヴァン・ティン
ファム・ダン・ラム
附 属 書
1 水力発電所の建設
2 機械工業センターの設備
3 両政府間で合意されるその他の生産物及び役務の供与
日本国とヴィエトナム共和国との間の賠償協定の実施に関する細目に関する交換公文
(日本側書簡)
書簡をもつて啓上いたします。本全権委員は、本日署名された日本国とヴィエトナム共和国との間の賠償協定に書及する光栄を有します。日本国政府は、両政府が同協定第九条の規定に基いて次のとおり合意することを提案いたします。
I 賠 償 契 約
1 契約は、同協定第四条2に定めるところに従い、認証を得るため日本国の権限ある当局に提出されるものとする。認証の手続は、原則として十四日の期間内に行われるものとする。
2 賠償契約は、日本円で通常の商業上の手続によつて締結されるものとする。
3 賠償契約の実施に関する責任は、契約当事者である使節団及び日本国の国民又は法人のみが負うものとする。
4 日本国政府は、使節団に対し、賠償契約を締結する適性を有する日本国の国民及び法人を推薦することができる。もつとも、使節団は、そのように推薦を受けた者とのみ賠償契約を締結するよう拘束されることはない。
5 賠償契約であつて、輸送、保険又は検査のような付随的の役務の供与を必要とし、かつ、そのための支払が賠償により行われることとなつているものは、すべて、これらの役務が日本国民又はその支配する日本国の法人により行われるべき旨の規定を含まなければならない。
II 支 払
1 使節団は、自己の選択により日本国のいずれかの外国為替公認銀行と取極を行い、自己の名による賠償勘定を開設してその銀行に日本国政府からの支払の受領等を授権し、及びその取極の内容を日本国政府に通告するものとする。賠償勘定は、利子を付さないものと了解される。使節団は、必要と認めたときは、同じ目的のためその他の日本国の外国為替公認銀行を指定することができる。
2 使節団は、賠償契約の規定に基いて支払の義務が生ずる前の適当な期間内に、支払金額及び使節団が関係契約者に支払を行うべき日を記載した支払請求書を日本国政府に送付しなければならない。
3 日本国政府は、支払請求書を受領したときは、請求金額を前記の使節団による支払の日の前日までに1に定める銀行に支払わなければならない。
4 日本国政府は、両政府間の合意により、使節団の経費の支払、ヴィエトナム人技術者及び職人の訓練費の支払並びに両政府間で合意するその他の費用の支払を前項に定めると同一の方法で、行わなければならない。
5 3及び前項の規定に基いて支払われる金額は、賠償勘定に貸記するものとし、他のいかなる資金も、同勘定に貸記されないものとする。同勘定は、2及び前項の目的のためにのみ借記を行うものとする。
6 使節団が賠償勘定に払い込まれた資金の全部又は一部を契約の解除その他によつて引き出さなかつた場合には、未払金額は、日本国政府との間で適当な取極が行われた後に、2及び4の目的のための支払に充てられるものとする。
7 賠償勘定から支払われた金額の全部又は一部が使節団に返還された場合には、その返還された金額は、5の規定にかかわらず、賠償勘定に貸記するものとする。前項の規定は、これらの金額について準用する。
8 同協定第五条2の規定の適用上、「支払を行つた時」とは、支払が日本国政府により1に定める銀行に対して行われた時をいう。
9 同協定第五条2の規定に従い、日本国政府が同協定第一条の規定に基く賠償義務を履行したものとされる限度額の算定は、日本国政府が正式に決定しかつ国際通貨基金が同意した日本円のアメリカ合衆国ドルに対する平価で次に掲げる日に適用されているものにより、支払金額に等しいアメリカ合衆国ドルの額を決定することにより行うものとする。
(a) 賠償契約に関する支払の場合には、日本国政府が当該契約を認証した日
(b) その他の場合には、各場合につき両政府間で合意する日。ただし、合意した日がないときは、日本国政府が支払請求書を受領した日とする。
III 使 節 団
1 使節団は、他の外国使節団に通常与えられる行政上の援助で使節団の任務の効果的な遂行のため必要とされるものを日本国政府から与えられるものとする。
2 もつぱら使節団に勤務することを目的として日本国に入国しかつ居住するヴィエトナム国民に限り、同協定第六条5の規定の適用を受けるものとして日本国における課税を免除されるものとする。
3 ヴィエトナム共和国政府は、賠償契約の締結及び実施に関して使節団を代表して行動する権限を与えられる使節団の長その他の職員の氏名を日本国政府に随時通知するものとし、日本国政府は、その氏名を日本国の官報で公示するものとする。この使節団の長その他の職員の権限は、日本国の官報で別段の公示がされるまでの間は、継続しているものとみなされる。
本全権委員は、さらに、この書簡及び前記の提案の貴国政府による受諾を確認される閣下の返簡を、賠償協定の効力発生の日に効力を生ずる同協定第九条の規定に基く同協定の実施に関する細目についての両政府間の合意を構成するものとみなすことを提案する光栄を有します。
本全権委員は、以上を申し進めるに際し、ここに閣下に向かつて敬意を表します。
千九百五十九年五月十三日にサイゴンで
日本国全権委員 藤山愛一郎
ヴィエトナム共和国全権委員 ヴ・ヴァン・マオ閣下
(ヴィエトナム側書簡)
書簡をもつて啓上いたします。本全権委員は、本日付の閣下の次の書簡を受領したことを確認する光栄を有します。
(日本側書簡)
本全権委員は、本国政府に代つて、閣下の書簡に述べられた提案を受諾し、かつ、前記の書簡及びこの書簡を、賠償協定の効力発生の日に効力を生ずる同協定第九条の規定に基く同協定の実施に関する細目についての両政府間の合意を構成するものとみなすことに同意する光栄を有します。
本全権委員は、以上を申し進めるに際し、ここに閣下に向かつて敬意を表します。
千九百五十九年五月十三日にサイゴンで
ヴィエトナム共和国全権委員
ヴ・ヴァン・マオ
日本国全権委員 藤山愛一郎閣下
(日本側書簡)
書簡をもつて啓上いたします。本全権委員は、本日署名された日本国とヴィエトナム共和国との間の賠償協定第二条2の規定に関し、両政府の次の了解を確認する光栄を有します。
同項ただし書の規定に基いて資本財以外の生産物の供与が行われる場合には、これらの生産物の価値の総額は、現在において二十七億円(二、七〇〇、〇〇〇、〇〇〇円)に換算される七百五十万アメリカ合衆国ドル(七、五〇〇、〇〇〇ドル)に等しい円の額をこえないものとする。
閣下が、前記の了解をヴィエトナム共和国政府に代つて確認されれば幸であります。
本全権委員は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向つて敬意を表します。
千九百五十九年五月十三日にサイゴンで
日本国全権委員 藤山愛一郎
ヴィエトナム共和国全権委員 ヴ・ヴァン・マオ閣下
(ヴィエトナム側書簡)
書簡をもつて啓上いたします。本全権委員は、次のことを本全権委員に通報された本日付の閣下の書簡を受領したことを確認する光栄を有します。
(日本側書簡)
本全権委員は、前記の閣下の書簡における了解をヴィエトナム共和国政府に代つて確認いたします。
本全権委員は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向つて敬意を表します。
千九百五十九年五月十三日にサイゴンで
ヴィエトナム共和国全権委員
ヴ・ヴァン・マオ
日本国全権委員 藤山愛一郎
日本国政府及びヴィエトナム共和国政府は、
両国間の経済協力関係を一層緊密にすることを希望し、よつて、ヴィエトナム共和国の産業開発計画の実現に寄与するため、日本国による借款の供与を目的とする協定を締結することを希望して、次のとおり協定した。
第一条
1 日本国は、現在において二十七億円(二、七〇〇、〇〇〇、〇〇〇円)に換算される七百五十万アメリカ合衆国ドル(七、五〇〇、〇〇〇ドル)に等しい円の額までの貸付を、この協定の規定に従い、この協定の効力発生の日から三年の期間内に、ヴィエトナム共和国に対して行うものとする。
2 前項の貸付は、この協定の規定に従い、両政府が合意する計画の実施に必要な日本国の生産物及び日本人の役務のヴィエトナム共和国による調達に充てられるものとする。
第二条
両政府は、前条の貸付の各年度の限度額を毎年協議により決定するものとする。
第三条
1 ヴィエトナム共和国政府又はその所有し、若しくは支配する法人で第一条2の規定に従つて、決定される計画の実施に当るものはその計画の実施に必要な生産物及び役務を調達するために必要な資金を、第一条1の総額及び前条の規定に従つて決定される毎年度の限度額の範囲内で貸付を受けるため、日本輸出入銀行と契約を締結するものとする。
2 日本国政府は、日本輸出入銀行が前項の規定に従つて締結される契約に基いて貸付を行うために必要とする資金を確保することができるように、必要な措置を執るものとする。
3 ヴィエトナム共和国政府は、1の規定に従つて締結される契約に基いて行われる元本の償還及び利息の支払が日本国の関係法令の規定に従つて円貨で行われるように、必要な措置を執るものとする。この円貨は、ヴィエトナム共和国政府又はその所有し、若しくは支配する法人がアメリカ合衆国ドルを日本国における外国為替公認銀行に売却して取得されるものとする。
4 ヴィエトナム共和国政府は、同政府が所有し、又は支配する法人が1の規定に従つて締結される契約に基いて行う元本の償還及び利息の支払を保証するものとする。
第四条
両政府は、ヴィエトナム共和国政府又はその所有し、若しくは支配する法人が第一条2の規定に従つて決定される計画を実施するために調達する生産物及び役務の各年度の調達計画を毎年協議により作成するものとする。
第五条
この協定の解釈及び実施に関する両政府間の紛争は、まず、外交上の経路を通じて解決するものとする。両政府がこうして解決することができなかつたときは、その紛争は、両政府間で行われることがある取極に従つて解決のため仲裁に付託されるものとする。
第六条
この協定は、批准されなければならない。この協定は、批准書の交換の日文は千九百五十九年五月十三日にサイゴンで署名された日本国とヴィエトナム共和国との間の賠償協定の批准書の交換の日のいずれかおそい日に効力を生ずる。
以上の証拠として、下名の全権委員は、この協定に署名した。
千九百五十九年五月十三日にサイゴンで、日本語、ヴィエトナム語及びフランス語により本書二通を作成した。解釈に相違があるときは、フランス語の本書による。
日本国政府のために
藤山 愛一郎
久保田貫一郎
植村 甲午郎
ヴィエトナム共和国政府のために
ヴ・ヴァン・マオ
ブイ・ヴァン・ティン
ファム・ダン・ラム
日本国とヴィエトナム共和国との間の借款に関する協定第一条及び第二条に関する交換公文
(日本側書簡)
書簡をもつて啓上いたします。本全権委員は、本日署名された日本国とヴィエトナム共和国との間の借款に関する協定の第一条及び第二条に関し、両政府の次の了解を確認する光栄を有します。
1 同協定第一条に関し、借款は、ダニム水力発電所建設計画に充てられるものとする。
2 同協定第二条に関し、第一年度の貸付の限度額は、現在において九億円(九〇〇、〇〇〇、〇〇〇円)に換算される二百五十万アメリカ合衆国ドル(二、五〇〇、〇〇〇ドル)に等しい円の額とする。ただし、この限度額は、計画の細目の検討の結果、両政府の合意により、変更されうるものとする。
閣下が、前記の了解をヴィエトナム共和国政府に代つて確認されれば幸であります。
本全権委員は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向かつて敬意を表します。
千九百五十九年五月十三日にサイゴンで
日本国全権委員 藤山愛一郎
ヴィエトナム共和国全権委員 ヴ・ヴァン・マオ閣下
(ヴィエトナム側書簡)
書簡をもつて啓上いたします。本全権委員は、次のことを本全権委員に通報された本日付の閣下の書簡を受領したことを確認する光栄を有します。
(日本側書簡)
本全権委員は、前記の閣下の書簡における了解をヴィエトナム共和国政府に代つて確認いたします。
本全権委員は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向つて敬意を表します。
千九百五十九年五月十三日にサイゴンで
ヴィエトナム共和国全権委員
ヴ・ヴァン・マオ
日本国全権委員 藤山愛一郎閣下
日本国とヴィエトナム共和国との間の借款に関する協定第三条1に関する交換公文
(日本側書簡)
書簡をもつて啓上いたします。本全権委員は、本日署名された日本国とヴィエトナム共和国との間の借款に関する協定の第三条1に言及する光栄を有します。日本国政府は、両政府が次のとおり合意することを提案いたします。
両政府は、日本輸出入銀行とヴィエトナム共和国政府又はその所有し、若しくは支配する法人との間で取りきめられることあるべき契約が、次の各項を基礎とする諸条件を含むよう、配慮するものとする。
1 利率は、国際復興開発銀行が課する利息の通常の水準に基いて決定される。
2 貸付は、十年の期間の間に償還される。償還は、三年の経過の後開始され、それに続く七年の間に完了される。
3 元本の償還及び利息の支払は、日本国の外国為替及び外国貿易管理法並びにこれに基く命令及び規則に従つて円貨で行われる。この円貨は、ヴィエトナム共和国政府又はその所有し、若しくは支配する法人がアメリカ合衆国ドルを日本国における外国為替公認銀行に売却して取得されるものとする。
4 ヴィエトナム共和国政府が所有し、又は支配する法人が行う元本の償還及び利息の支払は、ヴィエトナム共和国政府が保証を行う。
本全権委員は、さらに、この書簡及び前記の提案の貴国政府による受諾を確認される閣下の返簡を、借款に関する協定の効力発生の日に効力を生ずる両政府間の合意を構成するものとみなすことを提案する光栄を有します。
本全権委員は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向つて敬意を表します。
千九百五十九年五月十三日にサイゴンで
日本国全権委員 藤山愛一郎
ヴィエトナム共和国全権委員 ヴ・ヴァン・マオ閣下
(ヴィエトナム側書簡)
書簡をもつて、啓上いたします。本全権委員は、本日付の閣下の次の書簡を受領したことを確認する光栄を有します。
(日本側書簡)
本全権委員は、本国政府に代つて、閣下の書簡に述べられた提案を受諾し、かつ、前記の書簡及びこの書簡を、借款に関する協定の効力発生の日に効力を生ずる両政府間の合意を構成するものとみなすことに同意する光栄を有します。
本全権委員は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向つて敬意を表します。
千九百五十九年五月十三日にサイゴンで
ヴィエトナム共和国全権委員
ヴ・ヴァン・マオ
日本国全権委員 藤山愛一郎閣下
経済開発借款に関する日本国政府とヴィエトナム共和国政府との間の交換公文
(日本側書簡)
書簡をもつて啓上いたします。本全権委員は、ヴィエトナム共和国の経済開発の促進に資するため日本国の国民又は法人がヴィエトナム共和国政府又はその所有し、若しくは支配する法人に提供する借款に関して、両政府の代表者が到達した了解を明らかにする次の取極を確認する光栄を有します。
1 現在において三十二億七千六百万円(三、二七六、〇〇〇、〇〇〇円)に換算される九百十万アメリカ合衆国ドル(九、一〇〇、〇〇〇ドル)に等しい円の額までの長期貸付又は類似のクレディットが、この取極の規定に基いて、日本国とヴィエトナム共和国との間の賠償協定の効力を生ずる日から五年(この期間は、三年以上五年以下の期間に短縮することができる。ただし、両政府間にこのための合意がなければならない。)を経過した日以後、日本国の国民又は法人により、締結されることがある適当な契約に基き、ヴィエトナム共和国政府又はその所有し、若しくは支配する法人に対し行われるものとする。
2 前項にいう長期貸付又は類似のクレディット(以下「借款」という。)は、商業上の基礎により、かつ、両国の関係法令に従つて行われるものとする。
3 両政府は、借款の提供を、関係法令の範囲内で容易にし、かつ、促進するものとする。
4 借款の条件は、当該契約の当事者間で合意されるものとする。
5 借款は、尿素製造工場の建設その他の計画の実施に必要な日本人の役務及び日本国の生産物の形で行われるものとする。
6 この取極は、十年間効力を有する。ただし、この取極の効力発生の日から九年が経過した後、借款がその十年の期間の末まで1に定める金額に達しないと認められたときは、両政府は、いずれか一方の政府の要請により、この取極の有効期間を延長するため協議を行うことができる。
本全権委員は、この書簡及びこの書簡に述べられた取極の内容を確認される閣下の返簡を、日本国とヴィエトナム共和国との間の賠償協定の効力発生の日に効力を生ずる両政府間の合意を構成するものとみなすことを提案する光栄を有します。
本全権委員は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向つて敬意を表します。
千九百五十九年五月十三日にサイゴンで
日本国全権委員 藤山愛一郎
ヴィエトナム共和国全権委員 ヴ・ヴァン・マオ閣下
(ヴィエトナム側書簡)
書簡をもつて啓上いたします。本全権委員は、本日付の閣下の次の書簡を受領したことを確認する光栄を有します。
(日本側書簡)
本全権委員は、本国政府に代つて、前記の閣下の書簡における取極の内容を確認し、かつ、前記の書簡及びこの書簡を、ヴィエトナム共和国と日本国との間の賠償協定の効力発生の日に効力を生ずる両政府間の合意を構成するものとみなすことに同意する光栄を有します。
本全権委員は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向つて敬意を表します。
千九百五十九年五月十三日にサイゴンで
ヴィエトナム共和国全権委員
ヴ・ヴァン・マオ
日本国全権委員 藤山愛一郎閣下
日本国とヴィエトナム共和国との間の賠償協定の署名に当り、両国の全権委員は、それぞれの政府に代つて次の共同宣言を行つた。
賠償協定の締結及び実施は、両国間の友好関係を一層強化するとともに、特に通商、航海及び航空の分野において、また一方の国の国民の他方の国への入国並びにその国における滞在、居住、事業活動及び職業活動に関して、両国間の経済関係を一層密接にするものである。
両国政府は、通商航海条約を締結するため、できる限りすみやかに交渉を開始するであろう。
千九百五十九年五月十三日にサイゴンで
A・F
V・V・M