
日本の原子力外交概要
平成22年1月
(1)背景
(2)政策目標
(1)核不拡散・IAEAによる保障措置(Safeguards)
(2)原子力安全(Safety)
(3)核セキュリティ(Security)
⇒3Sに立脚した国際イニシアティブの開始
(4)新たな原子力技術制度構築への貢献
1.総論
(1)背景
- 近年、国際的なエネルギー需要の増大と地球温暖化問題への対応の必要性等を背景に、発電過程において温室効果ガスを排出せず、基幹電源となりうる原子力発電が再評価され、その拡充及び新規導入を企図する国が増加する流れ(「原子力ルネサンス」)が顕著になっています。
- 我が国は国際社会の信頼と透明性を確保しつつ資源小国として原子力発電を積極的に推進しており、世界で第3位となる55基の発電用原子炉を稼働させ、総発電電力の約3割を原子力発電に依存しています。自らの原子力利用を厳格に平和的目的に限り、国際社会における原子力の平和利用を適切に促進するための外交を実施しています。
(2)政策目標
上記の背景より、我が国の原子力外交においては、以下の政策目標を掲げています。
- 資源小国として我が国自身の原子力政策を推進(我が国は非核兵器国の中で例外的に核燃料サイクルを保有しており、その着実な実施を図っています。また、ウラン資源の確保のための資源外交等を積極化しています。)。
- 原子力先進国として、原子力発電の適切な国際展開や新たな原子力技術・制度の開発等の国際的課題に貢献。
2.我が国の原子力外交―原子力の平和利用の推進
- 原子力は、軍事目的への転用の可能性や一国の事故が周辺諸国にも大きな影響を与え得るという特性を有しています。また、特に9.11米国同時多発テロ以降は、国際的に核テロ対策への関心も高まっています。このため、原子力の平和利用、特に原子力発電を行う国は、国際的な信頼性と透明性の確保の観点から、核不拡散、原子力安全及び核セキュリティを確保することが求められています(この3要素は核不拡散の代表的な措置であるIAEAの保障措置(Safeguards)、原子力安全(Safety)及び核セキュリティ(Security)の頭文字をとって「3S」と称されています。)。我が国は、原子力の平和利用には3Sの確保が大前提となるという立場を貫いており、これを基本方針として、二国間及び多国間の原子力協力を推進しています。原子力の平和利用に関する国際原子力機関(IAEA)も、「3Sの重要性」を強調しています。
- 2008年G8北海道洞爺湖サミットにおいては、原子力平和利用の基礎条件整備に関するG8で初のイニシアティブとなる「3Sに立脚した原子力エネルギー基盤整備に関する国際イニシアティブ」が、我が国の提案により開始されました。
(1)核不拡散/IAEAによる保障措置(Non-Proliferation/Safeguards)
IAEAは、核物質が平和的な原子力活動から核兵器その他の核爆発装置の製造のため又は不明な目的のために転用されることを防止するため、保障措置を実施しています。(核不拡散/IAEAによる保障措置の詳細に関しては以下のページを参照。)
(2)原子力安全(Safety)
1986年のチェルノブイリ原子力発電所事故を受けて、国際社会全体で原子力安全の強化に向けた機運が高まり、原子力安全の強化に向けた国際協力が実施されています。我が国は、主に以下の取組を行っています。
- 1992年、G7サミットの枠組みの下設置された原子力安全作業部会(G7NSWG:Nuclear Safety Working Group)に積極的に参画。同年に設置された「原子力安全基金(NSA:Nuclear Safety Account)」(旧ソ連・中東欧諸国の原子力安全向上措置を支援するもの)及び1997年に設置された「チェルノブイリ・シェルター基金(CSF:Chernobyl Shelter Fund)」に資金を拠出しています(NSAには3,100万ドルを拠出。CSFには5,500万ドルをプレッジ。)。
- これまでに蓄積された原子力安全に関する知識をネットワークで共有し、被支援国における自立的・持続的な安全向上の取組を可能とすることを目的とした、「アジア原子力安全ネットワーク(ANSN)」の構築を支援しています。
- 原子力安全4条約(注)を締結し、IAEAが実施する原子力安全向上のためのレビュー活動に積極的に参加しています。また、IAEAやOECD/NEA等の国際機関が進めている、各種会合への出席や専門家の派遣を通して我が国の知見、経験の共有を図っています。
(注)原子力安全4条約
1)原子力事故の早期通報に関する条約、2)原子力事故又は放射線緊急事態の場合における援助に関する条約、3)原子力の安全に関する条約、4)使用済燃料管理及び放射性廃棄物管理の安全に関する条約
(3)核セキュリティ(Security)
ソ連崩壊後、核物質の防護に対する関心が高まっており、特に2001年9月11日の米国同時多発テロを受け、核物質その他の放射線物質を使用したテロ活動を防止するための「核セキュリティ」についても、様々な枠組みを通じた国際協力が強化されつつあります。
IAEAは、テロリスト等による核物質や放射線源の悪用が想定される脅威について、1)核兵器の盗取、2)盗取された核物質を用いて製造される核爆発装置、3)放射性物質の発散装置(いわゆる「汚い爆弾」)、4)原子力施設や放射性物質の輸送等に対する妨害破壊行為の4つに分類しています。核セキュリティとは、これらの脅威が現実のものとならないようとられる措置のことをいいます。
我が国は、主に以下の取組を行っています。
- 1990年代以降、カザフスタンにおける核物質管理システム改善プロジェクトを実施。
- IAEAが2002年3月に「核セキュリティ基金」を設立したことを受け、同基金に約84万米ドル(2001~2007年度)を拠出。
- 2006年11月にIAEAとの共催で、アジアにおいて核セキュリティに焦点を当てた初めての国際会議である、「アジア諸国における核セキュリティ強化に関するセミナー」を東京で開催。また、同セミナーの成果を踏まえ、2010年1月、外務省は、国際原子力機関(IAEA)との共催で「アジア諸国における核セキュリティ強化に関する国際会議」を東京で開催。同会議は、2006年のセミナー以降のアジア諸国における核セキュリティ強化の進展状況を検討することを目的に開催された。
- テロ対策のための国際的な取組に対応し、9.11米国同時多発テロ以降国連で採択された核テロ防止条約を締結。(これにより、核物質防護条約を含む、国連等で採択された13のテロ条約(注)全てを締結)。
- 2006年7月G8サミットの際に米露両大統領により提唱された「核テロリズムに対抗するためのグローバル・イニシアティブ(GI)」に積極的に参画。
- IAEAが定めるセキュリティガイダンスやガイドラインに対応した国内措置を積極的に実施し、IAEAに報告。
(注)テロ関連13条約
1)航空機内の犯罪防止条約、2)航空機不法奪取条約、3)民間航空不法行為防止条約、4)国家代表等犯罪防止処罰条約、5)人質行為防止条約、6)核物質防護条約、7)空港不法行為防止議定書、8)海洋航行不法行為防止条約、9)大陸棚プラットフォーム不法行為防止議定書、10)プラスチック爆弾探知条約、11)爆弾テロ防止条約、12)テロ資金供与防止条約、13)核テロ防止条約
(4)新たな原子力技術・制度の開発への貢献
近年、原子力利用の拡大に伴い、IAEAを中心として、核不拡散と原子力の平和的利用の両立を目指した様々なイニシアティブが活発に検討されています。このような中で、拡散抵抗性の高い原子力技術の開発や核不拡散と両立する制度の構築への関心が高まっており、我が国も積極的に貢献しています。
我が国は、主に以下の取組を行っています。