ベトナム社会主義共和国

最近のベトナム情勢と日ベトナム関係

平成29年4月13日

最近のベトナム情勢

1 政治

  • (1)1986年の第6回党大会にて採択された市場経済システムの導入と対外開放化を柱としたドイモイ(刷新)路線を継続、構造改革や国際競争力強化に取り組んでいる。他方、ドイモイの進展の裏で、貧富の差の拡大、汚職の蔓廷、官僚主義の弊害、環境破壊などのマイナス面も顕在化している。党・政府は、汚職防止の強化、行政・公務員改革等を進めている。2013年には、国会が人事を承認した閣僚級以上の指導者に対する国会議員による信任投票の実施や憲法改正等、一党体制にありながら、民主的要素を取り入れるといった動きもある。
  • (2)2016年1月には第12回共産党大会(5年ごと)が開催され、独立・主権・領土保全を堅持すると共に、ドイモイ路線を引き続き推進し、国際経済への積極的な参入を進めていくこと等が掲げられた。また、党中央指導部の人事が一新され、書記長には、グエン・フー・チョン氏が再任された一方、チュオン・タン・サン国家主席、グエン・タン・ズン首相及びグエン・シン・フン国会議長は党指導部から退くこととなった。
  • (3)2016年3~4月の第13期国会第11会期において、国家主席、首相、国会議長並びに一部の副首相及び閣僚等が交代し、国家主席にはチャン・ダイ・クアン公安大臣、首相にはグエン・スアン・フック副首相、国会議長にはグエン・ティ・キム・ガン国会副議長が、それぞれ就任した。その後、5月の国会議員選挙を経て、7月に第14期国会第1会期が招集され、クアン国家主席、フック首相、ガン国会議長が再任。

2 経済

  • (1)1989年頃よりドイモイの成果が上がり始め、1995年~1996年には9%台の経済成長率を記録。アジア経済危機の影響から一時成長が鈍化したものの、海外直接投資の順調な増加も受けて、2000年~2010年の平均経済成長率は7.26%と高成長を達成。2010年に(低位)中所得国となった。
  • (2)2011年以降、マクロ経済安定化への取り組みに伴い、成長率が若干鈍化した一方でインフレを抑制しつつ安定的に成長(直近5年間の成長率は2012年5.2%、2013年5.4%、2014年5.98%、2015年6.68%、2016年6.21%)。
  • (3)ベトナムは一層の市場経済化と国際経済への統合を推し進めており、2007年1月、WTOに正式加盟を果たした。その後も、各国・地域とのFTA/EPA締結を進めており、TPP交渉にも参加。他方、未成熟な投資環境、国営企業の非効率性、国内地場産業の未発達等の課題も残っている。
  • (4)最近の経済指標は以下のとおり。
    GDP(経済)成長率(2016年)
    6.21%
    物価上昇率(年平均、2016年)
    2.66%
    失業率(2016年)
    2.30%(都市部:3.18%、農村部:1.86%)
    外国投資(認可額、2015年)
    227.6億ドル
    貿易収支(2016年)
    25.2億ドル
    輸出(2016年)
    1766億ドル(対前年比 9.0%増)
    輸入(2016年)
    1741億ドル(対前年比 5.2%増)

3 外交

  • (1)基本方針は全方位外交の展開。「多角化・多様化」を掲げ、各種国際機関をはじめ、国際的、地域的枠組みにも積極的に参加。
  • (2)1995年7月、ASEANに正式加盟。2001年、ASEAN議長国を初めて務めた。2004年10月にはASEM首脳会合を、2006年11月にはAPEC首脳会議を主催した。また、2008年1月には初めて国連安保理非常任理事国(任期2008~2009年)となった。2010年には再度ASEAN議長国を務めた。2013年11月、国連人権理事会理事国(任期2014~2016年)に選出された。
  • (3)2013年、ベトナムは約10年に及ぶ国連PKO活動への参加に関する検討を経て、施設、医療、監視の分野でベトナム人民軍を派遣することを決定。2013年6月、南スーダンに視察団を送り、自衛隊施設部隊も訪問し、2014年には初めてのPKOへの要員派遣を実施するなど、平和維持分野における貢献を強めようとしている。
  • (4)米国とは1995年7月に外交関係を樹立。1997年5月に大使交換。2000年11月にはクリントン大統領が、南北ベトナム統一(1976年7月)後、米大統領として初めて訪越。米越通商協定は2000年7月に署名され、2001年12月発効した。2005年6月カイ首相はベトナム戦争後首相として初めて訪米した。2006年11月APEC首脳会議出席及び越政府招待による公式訪問のためブッシュ大統領が訪越した。2007年6月にはチエット国家主席がベトナム戦争後国家主席として初めて訪米した。2008年6月にはズン首相が訪米、2009年10月には訪米したキエム副首相兼外相とクリントン国務長官との間で、2010年7月には訪越したクリントン国務長官とキエム副首相兼外相との間で外相会談が実施された。2013年7月には、サン国家主席が訪米し、オバマ大統領との間で「越米包括的パートナーシップ」の設立を発表し、両国関係は新しいステージに入った。さらに2015年7月には、チョン党書記長が現役の党書記長として初めて訪米、2016年5月にはオバマ大統領が訪越。越米関係は経済面を中心に(米国はベトナムにとって第2位の貿易相手国(2014年))近年急速に進展している。越米間の国防面における交流については、政治安全保障国防対話、次官級国防政策対話等の枠組みがあり、近年は米海軍艦艇の寄港も定期的に行われている(2013年4月にもミサイル駆逐艦チャン=フーン(DDG-93)がダナンを訪問)。2016年5月のオバマ大統領の訪越時に米国はベトナムに対する武器禁輸措置を全面的に解除。人権、宗教を巡っては依然意見の相違はあるものの、人権対話を通じて一定の前進がある。
  • (5)中国とは、1979年に戦火を交えたが、1991年11月に関係正常化。2008年5月のマイン書記長訪中時の際の共同宣言では、従来の「16文字(善隣友好、全面協力、長期安定、未来志向)」と「4つの良(良き隣人、良き友人、良き同志、良きパートナー)」に則り、「包括的かつ戦略的な協力パートナー」となることに合意。他方、ベトナムにとって中国は歴史上常に北からの脅威であり続け、現在でも、友好関係を保ちつつ、国民一般間でも中国に対して潜在的警戒感が共有されている。その一方要人往来は活発であり、最近では、2010年10月には温家宝首相がASEAN関連首脳会議のため訪越、2011年10月及び2015年6月にチョン書記長が訪中、2011年12月には習近平国家副主席が訪越した。また、2013年6月には、サン国家主席が国賓として訪中し、同年11月には李克強首相が訪越している。南シナ海問題では互いに自国の立場を譲らない状況にある。特に、2014年5月以降、西沙諸島周辺海域における中国による移動式石油リグ設置をきっかけに、中越両国関係の緊張が高まった。2014年8月のチョン党書記局常務及び2015年4月のチョン党書記長訪中により関係回復も見られたが、南シナ海を巡る両国間の緊張関係は依然として継続している。経済関係では、中国はベトナムにとって最大の貿易国(但しベトナムの大幅入超)であり、2015年の双方向貿易額は668億ドル。2016年9月にフック首相、2017年1月にチョン書記長が訪中。

 国境問題では、1999年末には中越陸上国境協定が締結され、2008年末、両国は陸上国境画定作業を終結させ、2009年2月には陸上国境標識敷設作業が完了した。また、2000年末にはトンキン湾海上国境画定に関する協定が調印され、現在、トンキン湾口外海域の境界画定交渉が行われている。但し、南シナ海(スプラットリー諸島、パラセル諸島)の領有権を巡る問題は依然未解決。

我が国との関係

1 要人往来

 1993年3月のキエット首相訪日以後、関係緊密化が順調に進み、首脳間の往来も頻繁。

 1999年6月には秋篠宮同妃両殿下が日本の皇族として初めて御訪越された。また、2009年2月には、日越外交関係樹立35周年を迎えた機会に国家級賓客として、皇太子殿下が初めてベトナムを御訪問され、チエット国家主席を表敬された他、ハノイ、ダナン、ホイアン、フエ、ホーチミンを御視察になった。

 その後も2009年11月のズン首相訪日(日本・メコン地域諸国首脳会議)、2010年10月の菅総理の訪越(ASEAN関連首脳会議及び二国間公式訪問)、2010年11月のチエット国家主席の訪日(APEC首脳会議、2011年6月のサン党書記局常務の訪日(外務省賓客)、2011年10月(二国間訪問)及び2012年4月(日本・メコン地域諸国首脳会議)のズン首相の訪日と首脳級の要人往来が続いた。

 2013年1月には、安倍総理はベトナムを訪問し、ズン首相との間で日越友好年(外交関係樹立40周年)を宣言した。同年12月、ズン首相が日・ASEAN特別首脳会議出席のため訪日し、安倍総理との間で同友好年の成功裏の開催を共に祝し、海上安全保障、人材育成への協力、経済関係・開発協力、政治・安全保障など幅広い分野における協力を確認した。2014年3月、サン国家主席が国賓として訪日し、安倍総理との間で、日越関係を「アジアにおける平和と繁栄のための広範なパートナーシップ」という新たな協力の次元へと発展させることで一致し、以降、様々な分野における両国関係の発展を促進させる契機となった。

 2015年7月(日本・メコン地域諸国首脳会議)、ズン首相が訪日し、安倍総理との間で首脳会談を行った。同年9月には、チョン書記長が公賓として訪日、安倍総理との間で「日越関係に関する共同ビジョン声明」を発出し、両国間の「広範な戦略的パートナーシップ」関係が包括的かつ実質的に発展してきていることを高く評価し、更なる発展の方向性を示した。同年12月には、山崎参議院議長が、参議院議長として初めてベトナムを訪問した。

 2016年5月、岸田外務大臣がベトナムを訪問し、クアン国家主席及びフック首相を表敬したほか、ミン副首相兼外相と外相会談及び日越協力委員会第8回会合を実施した。

 2017年1月、安倍総理大臣はベトナムを訪問し、フック首相との首脳会談を行い、地域・国際情勢にかかる緊密な連携で一致するとともに、4件約1200億円の円借款を表明した。また、クアン国家主席との会談、チョン書記長との会談、キム・ガン・ベトナム国会議長との会談を行った。

 2017年2月、天皇皇后両陛下は初めてベトナム(ハノイ及びフエ)を御訪問。クアン国家主席夫妻、チョン党書記長夫妻、フック首相夫妻、ガン国会議長といった、ベトナムの要人から心温まる歓迎をお受けになられた。また、青年海外協力隊や在留邦人、元留学生及び元残留日本兵家族をはじめとするベトナム国民と心を通わせる交流の機会も設けられ、御訪問を通してベトナムとの従来からの親密な友好親善関係が一層深まった。

2 文化交流

 近年国民レベルでの交流も活発化しており、日越外交関係樹立40周年を迎えた2013年は、「日越友好年」と位置づけ、日本とベトナムの両国において約250の文化交流行事が開催された。ベトナムにおける第1回日越友好音楽祭や日本における「ベトナムフェスティバル」等年間を通じ多くの記念行事が両国において行われた。2009年8月にはホイアンで「ホイアン-日本祭り2009」が開催され、同年9月には日本で「ベトナムフェスティバル」が開催された。2011年には第2回日越友好音楽祭が行われた。また、2014年よりベトナム・ホーチミン市にて「ジャパンフェスティバル」が開催されている。

3 経済協力

 1992年11月に経済協力再開。日本はベトナムにとって最大の援助国。特に2011年度以降は、年間の援助供与額が2000億円を超える規模となっており、我が国ODAはベトナムの経済社会インフラ開発等に大きく貢献している。

我が国の対越ODA供与規模・実績
(単位:億円)
年度 2011 2012 2013 2014 2015
円借款 2,700.38 2,029.26 2,019.85 1,124.14 1787.61
無償資金協力 55.20 17.20 14.65 14.81 38.60
技術協力 104.86 85.15 82.71 76.67 101.42

(注)円借款及び無償資金協力は原則交換公文ベース、技術協力はJICA経費実績ベース
2009年度の円借款には、緊急財政支援479億円を含む

  • (グラフ)日本の対越ODA供与規模・実績(億円)

4 投資

 2016年の日本の対ベトナム直接投資額(新規及び追加:認可ベース)は21.6億ドルで国別では第3位となった。また、累積投資認可額では韓国に次いで第2位。

国別外国直接投資

(単位:億ドル)

累積認可額(新規及び追加、2016年12月時点)
1 韓国 507.1
2 日本 420.6
3 シンガポール 378.8
4 台湾 315.7
5 英領バージン諸島 211.5
合計 2,932.5
2016年認可額(新規及び追加)
1 韓国 61.4
2 シンガポール 21.6
3 日本 21.6
4 中国 17.0
5 香港 16.0
合計 209.5

出所:越外国投資庁

5 日越投資協定

 ベトナムにおける外国投資の環境を改善するため、1999年3月の首脳会談(小渕総理・カイ首相)において、両国間の投資協定について予備的協議を開始することで一致。その後、2003年11月14日、川口外務大臣とフック計画投資大臣が投資協定に署名。2004年5月、衆参両院にて承認された。2004年11月19日ハノイにて交換公文が行われ、12月19日から協定が発効。本協定は、我が国が過去に締結した投資協定と比較して、投資の自由化及び投資家の権利保護の観点からレベルの高い協定である。

6 日越共同イニシアティブ

 「日越共同イニシアティブ」は、ベトナムの投資環境を改善することを目的として、2003年4月、日越両国首相の合意によって設置された。ベトナムが投資環境を改善するために実施すべき内容を「行動計画」として日越両国で取りまとめ、実施後の進捗評価を日越両国で行う官民合同での取り組み。

(1)第1フェーズ
2003年12月4日行動計画策定(125評価項目)
 15日以内の観光・商用短期滞在ビザの免除、個人所得税最高税率の引き下げ、電気料金の二重価格制廃止、四輪車産業における現地調達義務の廃止等が達成された。
(2)第2フェーズ
2006年7月11日行動計画策定(80評価項目)
 二輪車産業マスタープラン作成、個人所得税申告書類の提出期限の延長、知的財産権の法定審査期限の遵守、電源開発への民間参入促進等が達成された。
(3)第3フェーズ
2008年11月12日行動計画策定(62評価項目)
 国際間の陸路輸送の通関の24時間化、知的財産権侵害に対する罰則強化及び摘発のための制度改善、融資貸出上限規制緩和、PPPスキームの導入等が達成された。
(4)第4フェーズ
2011年7月1日行動計画策定(70評価項目)
 金型分野の技能検定の国家資格化、外資系小売業に係る認可基準の策定・公表、経済指標(外貨準備除く)のベトナム国家銀行HPにおける公表等が達成された。
(5)第5フェーズ
2013年7月26日行動計画策定(104評価項目)
 外国人によるサブリース事業を可能とする不動産経営法の改正、模倣品の水際取り締まりの強化、通関の事前確認制度の明確化などの成果を上げた。
(6)第6フェーズ
2016年8月22日行動計画策定(32評価項目)
 現在実施中。

7 ベトナム工業化戦略への協力

  • (1)ベトナムの社会経済開発10か年戦略では、「2020年までに工業国化を達成する。」という目標が掲げられているが、現状では、ベトナムの鉱工業の中では食品が、輸出の中でも一次産品や繊維等の軽工業品が上位を占めている。
  • (2)2015年にはAFTA、ACFTAの完全実施を迎え、サプライチェーンがASEANや中国等を含め広域化することが考えられ、ベトナムにおいてこのまま労働集約型産業中心に経済成長が進み、労働費が上昇すれば、安い労働力を求めて企業が他国へ流出し、産業の発展が停滞する可能性がある。
  • (3)こうした状況を踏まえ、ベトナムが引き続き、投資家にとって魅力的な国であり続けることができるよう、我が国の産業政策の経験を踏まえて協力していくこととし、2011年10月の日越共同声明で、本件協力のためにベトナム副首相を議長とするハイレベル委員会を設立することを確認した。
  • (4)具体的には、2020年までのベトナム工業化に向けた戦略産業を選定((ア)電子、(イ)農業機械、(ウ)農水産加工、(エ)造船、(オ)環境・省エネ、(カ)自動車・同部品)し、これら戦略産業の行動計画(アクションプラン)を策定し、日越の産官学が一体となり、ベトナムの工業化に向けた産業政策立案を目指していく協力枠組み

8 日越経済連携協定

  • (1)2008年12月25日に署名、2009年10月1日に発効し、同日第1回合同委員会を開催(先方ホアン商工大臣、我が方岡田外務大臣ほか)。ベトナムにとっては初めての二国間EPA。日本にとっては11番目のEPA。
  • (2)自然人の移動(ベトナム人看護師・介護福祉士の将来における受入れの可能性)については、EPAの規定に従って設置された自然人の移動に関する小委員会において協定発効後に継続して協議(可能であれば協定発効後1年以内、遅くとも2年以内に結論)を行って、2012年4月、受入れのための基本的枠組みを定める書簡の交換が行われた。
  • (3)ベトナム人看護師・介護福祉士候補者が円滑に看護・介護の現場で就労するためには、十分な日本語能力の習得が不可欠であることから、訪日前に現地で日本語研修を実施し、一定の語学能力を候補者の訪日の条件としている。第1陣の12か月のベトナムにおける日本語研修が2013年12月に修了し、日本語能力試験でN3以上を取得した者が、日本での受け入れ病院・機関とのマッチングプロセスを経て、2014年6月に来日、訪日後研修を経て、受け入れ病院・介護施設での就労を開始した。このうち、2014年3月の看護師国家試験に14名が合格。その後も、2015年5月に第2陣、16年5月に第3陣が来日し、訪日後研修を経て、全国受け入れ病院で就労中。

9 貿易

 2016年の統計では、日本は第4位の貿易相手国(297億ドル)。第1位は中国で719億ドル、第2位は米国で471億ドル、第3位は韓国で435億ドル。中国、韓国との貿易構造は大幅な輸入超、米国との貿易構造は大幅な輸出超であるのに対して、日越貿易は輸出入のバランスがとれている。

  • (グラフ)日越貿易動向

出所:越税関総局

10 在留邦人数・日系企業数

  • 在留邦人数: 14,695人(2015年10月外務省:海外在留邦人数の調査結果H28年度版)
  • 日系企業数: 1,602社(2016年10月現在日本商工会加盟社数)(北部・中部・南部3商工会合計)

11 在日ベトナム人数

180,174人(2015年10月法務省在留外国人統計)

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