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北米自由貿易協定(NAFTA)の概要
(NAFTA:North American Free Trade Agreement)


平成17年5月


1.概要

(1) 米国、カナダ、メキシコ3国間の自由貿易協定。域内GDP約11.9兆米ドル、人口約4.3億人に及び、EUを凌ぐ大規模経済圏。

(2) 経済的成熟度の異なる先進国・途上国間の自由貿易協定。

(3) 対外共通関税を持たず、労働力移動の自由化、経済政策の協調を内容に含んでいないが、重要産業分野につき厳しい原産地基準を定め、加盟国の相互の投資を優遇する規則やサービス貿易、知的財産権に関する規則、実効性の高い紛争解決手続の導入、政府調達における優遇を定める等、実効性ある経済統合の枠組みを有している。

(4) 環境問題、労働者保護問題については、補完協定で規定。

(5) 1992年8月基本合意に到達、同12月に正式署名。94年1月1日に発効。


2.NAFTAの目的(第1章)

(1) 商品・サービスの貿易障壁を撤廃し、国境を越えた移動を促進すること

(2) 公正な競争条件を促進すること

(3) 投資機会を拡大すること

(4) 知的財産権の保護を行うこと

(5) 紛争解決手続を確立すること

(6) 協定の拡大・強化のための3国間、地域間、多国間の枠組みを確立すること


3.協定の構成

1章 「目的」          2章 「一般定義」
3章 「内国民待遇及び市場アクセス」          4章 「原産地規則」
5章 「税関手続」          6章 「エネルギー」
7章 「農業」          8章 「緊急措置」
9章 「技術基準」          10章 「政府調達」
11章 「投資及び紛争処理」          12章 「国境を越えるサービス取引」
13章 「電気通信」          14章 「金融サービス」
15章 「競争政策」          16章 「業務一時入国」
17章 「知的財産権」          18章 「法の執行」
19章 「アンチダンピング(AD)税・相殺関税の審査及び紛争解決」
20章 「組織体制及び紛争解決」          21章 「例外」
22章 「最終条項」             


4.NAFTA協定のポイント

(1) 市場アクセス分野

(イ) 大部分の北米産品の関税を協定発効後直ちに撤廃。その他の品目5年から10年の移行期間中に段階的に撤廃。センシティブ品目については15年間で撤廃。具体的には以下のとおり。

  即時撤廃 1998年撤廃 2003年撤廃 2008年撤廃
メキシコ⇒米 84% 8% 7% 1%
米   ⇒メキシコ 43% 18% 38% 1%
カナダ ⇒メキシコ 41% 19% 38% 1%
メキシコ⇒カナダ 79% 8% 12% 1%

 締約国の合意によって関税撤廃時期の前倒しが可能。(注1)なお、米・カナダ間については、米加FTAの関税撤廃スケジュールがそのまま適用され、1998年に終了している。

(ロ) 関税の免除・還付も新規の導入を禁止し、既存の措置も縮減。その結果、メキシコのマキラドーラ制度(注2)の域内適用を2001年までに廃止。関税払い戻しは米・カナダ間では96年1月1日、メキシコと米・カナダ間では2001年1月1日に廃止。但し、二重課税防止のため、国内に輸入される一部の商品(他の締約国に輸出される商品の原材料等)に対し、輸入関税額と輸出先での関税額のどちらか少ない額の関税の払戻し(部分ドローバック制度)は認められる。

(ハ) 数量制限、税関手数料等の措置についても原則的に廃止。

(注1) これまでに、いくつかの品目について、数度関税撤廃時期の前倒しが行われている。

(注2) マキラドーラ制度とは、メキシコの工場が製品を生産し輸出することを前提として原材料・部品を輸入する場合、その原材料・部品に対するメキシコの輸入関税を免除する制度。

(2) 原産地規則

(イ) 北米産と認定されるには、締約国で算出された材料・製品を用いて締約国で生産された場合のほか、部品原材料輸入時の関税分類が加工過程によって変更されること(関税分類の変更)、又は現地調達率が60%(取引価格方式)または50%(純費用方式)以上(注3)であることが求められる。但し、自動車・繊維については特殊ルール(下記(ロ)(ハ))を適用。

(注3) (a)取引価格方式
  現地調達比率=(財の取引価格-非北米産の原材料価格)/財の取引価格
(b)純費用方式
  現地調達比率=(財の純費用価格-非北米産の原材料価格)/財の純費用価格



(ロ) 自動車分野については、現地調達比率の算定を純費用方式に限定し、現地調達比率を(a)乗用車、軽トラック、及びそれらのエンジン、トランスミッションについては、4年間で50%、1998年以降56%、2002年以降62.5%以上、(b)右以外の自動車・同部品については1998年以降55%、2002年以降60%以上に引き上げる。米加自動車協定は維持、メキシコの自動車政令は2004年1月1日まで維持しつつ、国内調達等の義務を段階的に廃止。

(ハ) 繊維分野に関しては、米加FTAの下では原則として布が米国又はカナダ原産であれば完成品である繊維製品が原産地規則を充足するのに対し、NAFTAにおいて繊維製品が域内産と認められるためには、一部を除き糸またはファイバーの段階から域内産でなければならない。

(3) エネルギー

 エネルギー・基礎石油化学製品については、メキシコの憲法上の制約(石油関連事業の国家の独占権)を容認する一方、資源保持の目的や供給不足のために輸出入規制を行うに当たっては、他の締約国に対する供給割合を削減せず、また価格等でも差別しないこと等を規定。

(4) 農業

 農業に関しては、3国共通の合意を作らず、(a)米・カナダ間では、米加FTAを踏襲、(b)米・メキシコ間では、協定発効時に全ての非関税障壁を関税化、又は関税割当制(15年後には関税割当制も廃止)に切り替え、関税を段階的に引き下げる、(c)カナダ・メキシコ間では、関税の引下げを推進するが、一部の数量制限を認める、との内容。
 また、一部農産物については、当該農産物の関税がゼロにされるまで、輸入急増の場合に特別セーフガードを発動することが可能とされている。

(5) 政府調達

 (a)連邦政府機関については、財貨/サービスは5万ドル超、建設サービスは650万ドル超、(b)連邦政府公社に関しては、財貨/サービスは25万ドル超、建設サービスは800万ドル超、の調達条件を締約国の供給者に無差別に開放。また、苦情処理手続を確立。

(6) 投資

 投資に対する締約国の障壁・規制を減らしていく。具体的には、(a)締約国の投資家に対して原則として内国民待遇を供与する、(b)投資を認める条件として輸出義務、現地調達義務を課してはならない、(c)投資によって設立される企業の上級役員の国籍指定を禁止、(d)投資から生じる利益、配当等の送金制限をしてはならない、(e)締約国による収用の原則的禁止及び例外的に収用する場合は公正に補償しなければならない、というもの。
 締約国の違反により損害を受けた投資家は、当該国と交渉を行い、解決を見ない場合仲裁を求めることができる。

(7) 金融サービス

 2000年までの移行期間中、メキシコ政府は、銀行、証券、保険、その他の金融機関のそれぞれについて定められたシェアの総量規制、個別規制の下で、米加の金融機関の進出を認める。移行期間以後は、原則自由化するが、4年間は一時的セーフガードが認められる。協定の実施、問題の検討、紛争処理等のため、締約国の金融サービス担当官庁の職員で構成する「金融サービス委員会」を設立する。

(8) 知的財産権

 各締約国は著作物に関するパリ条約等の知的財産権に関連する国際条約を発効。コンピューター・ソフトウェア、データ・ベースも著作権保護の対象に含む。商標登録の保護は商品に加えサービスにも適用される。医薬、農業関係の微生物的特許、集積回路のデザイン保護、営業秘密についても保護の対象とする。

(9) アンチダンピング、相殺関税措置に関する審査と紛争処理

 締約国は、アンチダンピング税(AD)及び相殺関税(CVD)関連の国内法を保持する。締約国は、他の締約国のAD・CVD関連法の改正、又はAD・CVD措置に関する最終決定について、二国間パネルの審査を請求できる。
 締約国の国内法がパネルの裁定結果の実施を妨げているような場合、まずは二国間で協議を行い、これが不調に終わった場合には「特別委員会」が設置され、問題を取り扱う。

(10) 制度的取決と紛争処理

 協定の解釈・運用に係る紛争は、本協定の手続、WTOの手続のいずれかを選択することができる。手続が開始された場合、他方の手続への変更は不可。
 紛争が発生した場合、まず当事国同士が合意すべく協議を行い、合意に至らない場合は、3か国の閣僚級で構成される「自由貿易委員会」があっせん、調整、調停等により紛争解決を図る。同委員会によっても解決に至らない場合、当事国の要請で法律の専門家5名で構成されるパネルが設置される。パネルの裁定に対し当事国は上訴できるが、最終裁定は強制力をもち、裁定不履行に対してはNAFTAの恩恵の停止等の制裁措置が可能である。

(11) その他

 協定は、各締約国の国内手続を経て、1994年1月1日に発効。
 いかなる国等も、既締約国との間で合意が整うこと等を条件に、本協定に加盟しうる。(注4)

(注4) NAFTA発効後、チリが加盟への動きを見せたが、結局チリはNAFTAには加盟せず、カナダ、メキシコと個別に二国間FTAを締結し、米国との間でもFTAの署名に至っている。


5.補完協定

(1) 1993年8月、環境問題、労働問題に関する各補完協定につき合意が成立。94年1月にNAFTA本協定と同時に発効。

(2) 環境問題に関する補完協定、労働問題に関する補完協定とも、協定の目的、締約国の義務、環境保護又は労働者保護に関する協力のために設立する組織、紛争処理手続を規定している。

(3) 紛争処理手続は、締約国がその国の環境法の効果的な実施や一定の労働基準の履行を恒常的に怠った場合に行われる。当事国間の協議、評議会による紛争処理手続、仲裁パネル手続と進む。パネルの裁定不履行に対しては、制裁金の賦課やNAFTAによる恩恵供与の中止措置が可能である。


6.NAFTAの影響

 NAFTA発効後、NAFTA域内の貿易は拡大している。
 特に、米国・メキシコ間の貿易の拡大が顕著である。米国商務省の統計によれば、1993年から2004年までに、米国からメキシコへの輸出額は約166%増(同時期の対カナダ輸出額は約89%増、輸出額全体は約76%増)、米国のメキシコからの輸入額は約290%増(同時期の対カナダ輸入額は約130%増、輸入額全体は約153%増)となっている。


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