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米国の規制改革及び競争政策に関する
日本国政府の要望事項

平成13年10月14日

 小泉総理とブッシュ大統領は、2001年6月30日のキャンプデービッドにおける日米首脳会談において、両国及び世界の持続可能な成長を促進することを目的として、「成長に関する日米経済パートナーシップ」の設立を発表し、その中で、「規制改革及び競争政策イニシアティブ」(「改革イニシアティブ」)の立ち上げに合意した。この改革イニシアティブは、97年以降4年間にわたり行われてきた「規制緩和及び競争政策に関する強化されたイニシアティブ」(「強化されたイニシアティブ」)の成功裡の終了を受け、重要な改革が行われつつある主要な分野及び分野横断的な問題に引き続き焦点をあてることを狙いとして新たに設置されたものである。

 強化されたイニシアティブの下での4年間にわたる規制緩和対話は、両国の規制・制度面での問題を明らかにし、不要な規制の減少、競争の強化、及び市場アクセスの改善をはかる上で、大きな成果をあげた。しかしながら、米国の規制・制度の中には、依然として、(1)米国特有であり、国際基準に調和していないもの、(2)自由貿易の理念に反するもの、(3)公正な競争を阻害するものが見られるのも、また事実である。これらの中には、米国で事業活動を行う日本企業に不合理な負担を課すものとして、無視できない懸念材料となっているものも多く含まれている。米国が用いる様々な一方的措置はその典型例であるが、これらは、WTOルールとの整合性の観点からも問題を孕んでいる。

 このような現状認識の下、日本国政府は、改革イニシアティブを開始するにあたり、米国政府に対して、規制改革及び競争政策に関する要望書を提出する。日本国政府としては、本要望書を十分反映させる形で、米国政府の政策の改善や更なる規制改革及び競争政策の推進を求めていく方針である。

 現在ほど、日米両国の経済が世界経済において占める位置の重要性、そして、健全かつ安定的な日米経済関係が世界経済の成長と繁栄のために果たしうる役割の重要性が高まっている時はない。日米両国は、経済成長の推進、経済調和の促進、及び開かれた多国間貿易システムの強化のための指導的な役割を担っていることを十分に認識し、グローバル化時代における対話と協力のモデルを自ら示していかねばならない。

 日本国政府として、この改革イニシアティブの下での米国政府との率直かつ建設的な対話が、日米経済関係の更なる強化及び深化に大きく資することを強く望む。そして、かかる対話を可能とするために、米国政府が、双方通行の対話の原則に基づき、本要望書に掲げられた各要望事項につき真剣に検討し、具体的な成果を上げるべく積極的にコミットすることを期待する。

I.規制改革及び競争政策に関する分野横断的な問題

1.貿易・投資関連措置

(1) アンチダンピング措置
(a) アンチダンピング措置はWTO協定に整合的な運用がなされている限りは貿易救済措置として正当であると考えられているが、ひとたびダンピング認定等に恣意的な判断がなされた場合、貿易や競争を不当に制限する可能性がある。さらに、アンチダンピング調査の開始そのものが企業の輸出意欲を阻害するおそれがある。こうした観点から、日本政府は、米国政府がアンチダンピング制度を保護主義的な目的で濫用することなく慎重に運用することを要望する。
(b) 米国は、世界有数のアンチダンピング使用国である。米国のアンチダンピング措置の中にはダンピング認定等に恣意的な判断が見られるなど、現在日本を含む多くの国からWTOルールとの非整合性が既に指摘されている。実際に米国1916年アンチダンピング法や日本製熱延鋼板へのアンチダンピング措置など、WTO紛争解決機関においてWTO協定違反であると認定された例も存在している。日本政府は米国政府に対して、WTO協定違反が認定された措置を早急にWTO協定と整合させる措置をとることを要望する。
(c) また、日本政府は、米国のアンチダンピング調査当局がダンピングマージンの計算方法や損害認定など、WTO協定との非整合性が既に確定した計算方法、損害認定方法を今後のアンチダンピング調査において適用しないことを求める。
(d) 徴収したアンチダンピング税及び相殺関税によって得た収入をアンチダンピング提訴者である国内生産者等に配分するバード修正条項については、WTO協定に違反している(特に濫訴を招く点等)。また同条項は貿易政策上の観点からも問題であると考えられることから、WTOの場での議論の結果を待つことなく、米行政府が自主的にこれを早急に廃止することを議会に働きかけるよう要望する。

(2) 特許関連事項
(a) 先発明主義、インターフェアレンス(抵触審査)
 米国は、世界で唯一「先発明主義」を採用している。先発明主義の下では、二以上のものが別々に発明を行って各々出願した場合、誰が最先の発明者であるかを決定するインターフェアレンスの手続きが行われる。
 特許出願人の立場からすると、(イ)先発明者の出現で事後的に特許権者の地位が覆されることがあり得る点で確実性、予見性がないこと、(ロ)インターフェアレンス手続きに長期間を要するとともに多大のコストがかかること、(ハ)インターフェアレンスの過程で出願した発明又は特許に含まれたノウハウが漏洩する危険性等の問題がある。また、複数の発明者が独立に同一の発明を行い、かつ、前記発明者のうちの複数に特許が与えられた場合(ダブル・パテント)には、第三者はダブル・パテントを自ら解消する手段を持たないため、各権利者へ重複してロイヤリティーを支払い続ける必要が生じるという意味で、不当な不利益を被る可能性がある。
 したがって、国際的にデファクト・スタンダードとなっている「先願主義」へ移行して頂きたい。また、移行までの暫定的措置として、インターフェアレンスの手続きの簡素化を要望する。
(b) 例外を設けた早期公開制度
 1999年11月に成立した米国の改正特許法によって導入された早期公開制度は、外国に出願されていない米国出願、及び対応外国出願に含まれていない米国出願の内容について、出願人の申請により非公開にできるという例外を設けている。
 申請により非公開にされた出願内容は、権利付与後に特許公報が発行されるまで他者に公開されないため、出願明細書に記載された発明と同一の内容について善意の第三者が重複して研究開発投資や事業化投資を行う可能性があり、事業損益の予見可能性の観点から問題が大きい。
 また、特許審査が長期化した場合には、その間に開発技術を独自に実用化した第三者が、特許申請中の発明に抵触する商品の市場規模を十分に拡大させた後に特許が成立する可能性があり、莫大なライセンス料を請求されるといういわゆる「サブマリン特許」の問題が生じ得る。
 したがって、早期公開制度に設けられている例外規定を廃止し、係属していない出願、秘密指令下にある出願を除く全ての出願について、最先の出願日から18箇月経過後に公開するという1994年の日米合意内容の履行を強く求める。
(c) 再審査制度
 米国は、特許権成立後に権利の有効性を再検討する制度として再審査制度を設けており、1999年11月に成立した特許法の改正により、従来の査定系再審査のオプションとして当事者系再審査の制度を導入した。
 しかしながら、米国の再審査制度は、再審査請求の理由が先行技術文献の存在を理由とするものに限られ、明細書の実施可能要件不備、明記要件不備を理由とする再審査請求が認められていない。
 特に、当事者系再審査は、再審査への第三者の参加機会を拡大させるために新たに設けられた制度であるにもかかわらず、特許を維持する再審査判断に不服で抵触審判部に上訴した第三者請求人は連邦巡回区控訴裁判所への上訴をすることができないなど、実質的に有効とは認めがたい制度となっている。
 したがって、再審査制度において、ベストモード要件を除く米国特許法112条の全ての要件不備を再審査請求の理由として認めること、及び当事者系再審査の第三者請求人の連邦巡回区控訴裁判所への上訴を認めることを強く求める。
(d) 単一性を満たさないことによる分割要求
 一つの出願に二以上の別の発明が含まれている場合、審査官は発明の単一性(一つの出願には独立した発明が一つだけ含まれる)を維持するために、特許請求の範囲の記載内容を部分的に選択して出願を分割するよう要求を出す。
 米国の単一性の判断基準は特許協力条約(PCT)の規定よりも厳しく、PCT経由の米国出願では単一性要件を満たすと認められるものであっても、工業所有権の保護に関するパリ条約に基づく優先権を主張して出願すると単一性違反と判断される場合がある。
 複数国へ出願する出願人が、単一性要件について米国特有の基準に合わせた出願準備(特許請求の範囲の検討)を行うことは、実務的に困難である。
 分割要求を受けて選択クレームを決定すると、選択されなかったクレームは審査の対象から外されるので、非選択クレームを維持したい場合には、原出願の特許発行前に分割出願する必要がある。分割出願を行うことは出願人に再度の手間と出費を強いることとなり、大きな負担増加である。
 また、他国において単一性を認められる発明が、米国内において複数の出願として存在することは、出願を管理する出願人あるいは特許を維持する特許権者にとって、また特許権への抵触を回避するために特許を監視する第三者にとっても負担となる。
 したがって、単一性の要件を緩和することを要望する。
(e) 米国特許法に関連する判例法理「ヒルマー・ドクトリン」
 米国特許法では、第119条の規定により、パリ条約第4条の優先権制度を導入している。すなわち、外国における最先の出願日から12ヶ月以内になされた米国出願は、前記最先の外国出願日にされた米国出願と同一の効力を有するとされる。
 しかしながら、米国の判例・実務においては、判例により確立された法理「ヒルマードクトリン」に基づき、前記効力のうち、明細書記載事項が先行技術として第三者による後願を排除できる効力の発生日は、最先の第一国出願日までは遡及せず米国出願日までしか遡及しないとされている。
 さらに米国を第一国とする出願は、第三者の後願に対して特許法102条(e)と102条(g)の排除効力を有するが、外国出願を優先基礎とする米国出願については、優先期間内の後願を排除する効力は102条(g)のものしか持ち得ない。
 日欧などにおいては、外国出願を優先基礎とする国内出願は、最先の第一国出願日まで遡及して、かつ明細書の記載事項全体が後願排除効力を有するのに対して、米国においては同様の待遇が保証されていないことは不平等である。
 したがって、ヒルマードクトリンに基づく判例及び実務について、明細書の記載事項全体(whole-contents)が最先の第一国出願日まで遡及して第三者の後願を排除する効力を有するように、改善を要求する。

(3) エクソン・フロリオ条項
 エクソン・フロリオ条項(1950年国防生産法第721条)は、国家安全保障を損なうおそれのある直接投資につきレビューし、大統領が必要と認める場合には、そのような投資を制限するメカニズムを提供するものである。日本政府は、一般に、安全保障を理由とする規制の必要性については十分理解しているが、同条項については、完了した投資の法的安定性及びデュー・プロセス確保という観点から、本来の安全保障を理由とする規制に必要な程度を越えて日系企業の投資活動を阻害するおそれがあることを懸念している。政府による規制の透明性と予見可能性は、企業が投資を決定する際の大きな要素であると同時に、競争的な企業が公正な環境で活動を行うための条件である。同条項の運用にあたっては、米国政府は国家安全保障の概念を過度に拡張することなく、対米外国投資委員会(CFIUS)への通知から大統領の決定に至るまでの過程における透明性と公平性を最大限確保するための措置を講ずるよう要請する。

(4) メートル法
 日本国政府は、「強化されたイニシアティブ」の下での日米規制緩和対話における議論を踏まえ、米国におけるメートル法の採用に関する作業の進捗状況に引き続き強い関心を有してきているところ、米国市場の世界貿易に与える影響の大きさに鑑み、米国における公共部門及び民間部門において、グローバル・スタンダードであるメートル法(SI単位)の採用を徹底させることを引き続き強く求める。

2.制裁法

(1) 対イラン・リビア制裁法
 対イラン・リビア制裁法に基づく制裁措置は、一般国際法上許容されないような国内法の域外適用になりうるのみならず、WTO協定との整合性で問題となる可能性がある。我が国は米側に対し、従来より様々な機会を捉え、上述の問題点を繰り返し指摘してきたにも拘わらず、本年8月3日、これらの問題点を孕んだまま同法を5年間延長する法案が成立したことは大変遺憾である。米国政府は、国際法との整合性を確保しつつ同法を慎重に運用して頂きたい。特に、第三国の企業に対する同法の適用は差し控えて頂きたい。
 1998年5月には第三国の企業3社のガス田開発投資契約につき、同法の適用の除外が決定された。また、その後も他の外国企業による油田・ガス田開発プロジェクトに対しても同法は適用されていない(同法の適用につき「検討中」との位置づけ)。これらの扱いを非差別的なものとすべく、日本を含む他のいかなる国の企業が同法の対象となる投資を行った場合にも適用が除外される旨を明らかにして頂きたい。

(2) ヘルムズ・バートン法(対キューバ制裁法)
 ヘルムズ・バートン法に基づく制裁措置は、一般国際法上許容されない国内法の域外適用になりうるのみならず、WTO協定に掲げる貿易自由化原則に反する恐れがある。
 米国政府が本年7月16日、同法第3章の実施停止期間を6ヶ月延期することを決定したことは評価できるが、引き続き、国際法との整合性を確保しつつ同法を慎重に運用して頂きたい。特に、第三国の企業に対する同法の適用は差し控えて頂きたい。

(3) 州レベルの制裁法
 2000年6月19日のマサチューセッツ州ミャンマー制裁法に対する連邦最高裁における全員一致での違憲判決は、個々の州の通商関連立法に伴い民間企業が直面する参入障壁の除去につながる意味で評価される。これを受け、4年目の規制緩和対話の場においても、米側より、連邦政府は連邦の外交政策と整合的でない地方レベルの制裁法が依然として存在する地方政府との接触の努力をしてきている旨の説明を受けているところ、かかる努力の具体的成果・進捗状況につき教示頂きたい。
 また、米国連邦政府は、全ての州・地方政府に対し、上記判決を指針として、地方レベルでの制裁法は連邦の外交政策と整合的でなくてはならない旨、日本国政府が地方レベルでの政府調達に関する制裁法について民間企業が被る事業機会の喪失の観点から引き続き懸念を持っている旨、及びWTO政府調達協定の適用対象となる地方レベルでの政府調達に関する法令については同協定との整合性が確保される必要がある旨の文書を発出する等の具体的な行動をとって頂きたい。

3.流通

(1) 輸入通関手続
 米国政府は、WCOで開発された通関時間調査ガイドラインの米国での実施にかかる調査手法について、今年末までの検討終了後、その結果をすみやかに提示されたい。

(2) 1920年商船法(ジョーンズ法)
(a) 1920年商船法(ジョーンズ法)第19条(1)(b)により、外航海運に影響を与える規則を策定する権限が、米国連邦海事委員会(FMC)に対し与えられている。
 FMCは、1997年9月に我が国船社に対し一方的制裁措置を発動し、昨年5月に撤回したものの、引き続き日米船社に対して我が国港湾の状況をFMCに報告するよう要求している。当該制裁措置の根拠となったFMC規則(同規則は1999年5月に撤廃された。)は、相手国船舶に対する最恵国待遇、内国民待遇の付与等を規定した日米友好通商航海条約に違反するものであった。
 連邦政府として、FMCに対する働きかけを強化する等により、このような一方的制裁措置が今後行われることがないよう確保することを求める。
(b) また、FMCは、同規則の撤廃後、我が国船社及び米国関係船社に対し、我が国の港湾事情の改善状況についてレポートを求めてきたところである。
 我が国の港湾事情については、事前協議制度の大幅な改善とその着実な実施、港湾運送事業法改正による需給調整規定の撤廃の結果、新規事業者の参入実現、港湾の24時間フル・オープン化に向けた着実な進展等、関係者による取り組みの成果が現れてきているところである。このような進展に対するFMCの正しい認識を強く求める。
 このような我が国の港湾事情の大幅な改善にもかかわらず、本年8月、FMCは、新たなオーダーにより、レポートの記載項目を増やすと共に、対象となる船社の範囲を拡大した。当該オーダーには、直接日本船社に日本の法令及び通達の提出を求めるなど、船社に提供を求めることが適当と考えられる範囲を逸脱するものがあり、船社にとって不当かつ過大な負担となっている。
 仮にFMCが、上述のような日米友好通商航海条約に違反する一方的な制裁措置を今後課すか否かについての判断をするために今回レポートの範囲を拡大したのであれば、遺憾である。この場合、当該オーダーがFMCの権限の乱用に当たる重大な問題と認識している。
 以上のことから、日本政府としては、レポート提出の根拠となるオーダーを撤回するよう強く求める。

(3) 新運航補助制度(MSP)の廃止
 毎年1億ドルの運航補助を10年間にわたって実施するという巨額の補助金の投入が、国際海運市場における自由かつ公正な競争条件を歪曲することは明らかであることから同プログラムの廃止を要望する。

(4) アラスカ原油輸出禁止解除法を含む各種貨物留保措置の撤廃
 商業貨物であるアラスカ原油輸出についての米国船籍船使用の義務付けに代表される各種の貨物留保措置は、内国民待遇の原則に反する保護主義的性格が強いものであり、交渉期間中は新たな保護主義的措置を導入しないとするWTO海運継続交渉に関する閣僚決定にも反するので撤廃を要望する。

(5) 1998年外航海運改革法
 同法には、我が国を含む外国海運企業と米国海運企業を差別し、その運賃設定のあり方(Price Practice)等について一方的な規制を可能とする規定が含まれている。そもそも運賃設定のあり方は、商業ベースの自由な海運活動の基本であり、FMCが一方的にその規制を行うことは、自由な海運活動への介入及び外国海運企業のみに対する差別的介入にほかならない。1998年同法の改正により、ことさら運賃設定のあり方に対する介入が明文化されたところ、今後FMCがマーケットの実状を無視して我が国を含む外国海運企業による商業ベースでの海運活動を一方的に規制することのないことを確約されるよう要望する。

4.競争政策

 司法省は、現存する反トラスト法の適用除外制度について、競争政策の積極的促進の観点から、引き続き、その適否を検討して意見を表明し、かつ、その存在に合理性のない制度については廃止されたい。又、州レベルでの反トラスト法適用除外制度についても、連邦政府は、その見直しのための協力を積極的に進められたい。こうした一連の作業に係る公表文書を、日本政府にとって入手可能にされたい。

5.法律サービス及びその他法律関連事項

(1) 外国弁護士の受入
(a) 外国弁護士の受入の全州への拡大
 米国においては、外国弁護士を受け入れている州は24の州・区に過ぎず、その他の州においては、外国弁護士が開業することが許されていない。かかる現状は、米国内における多様な法律サービスの提供を制限するものである。日本国政府は、米国連邦政府が全ての州が外国弁護士についての規則を採用することを引き続き支持していることを、国際ビジネスの促進等の観点から歓迎しており、外国弁護士の受入れを全州に拡大するため、連邦政府の更なる積極的な行動を求める。
(b) 外国弁護士の受入れの要件としての職務経験期間の短縮
 外国弁護士の受入制度を設けている州・区においても、確認されている限りでは、すべての州・特別区が職務経験要件の制度を設けている。多くの州ではその要件を5年以上としており、米国では外国弁護士が開業する際の障壁となっている。日本の外国弁護士受入れ制度においては職務経験期間は3年で足りるとされている。外国弁護士受入れの要件とされる職務経験年数を短縮し、全ての州において3年とするため、連邦政府は、各州政府に申し入れをするなど所要の措置を取られたい。
(c) 外国弁護士の受入れ要件としての職務経験期間の申請直前要件の廃止
 外国弁護士の受入れ制度を設けている州・区において要件とされている職務経験期間に関して、確認されている限りでは、申請直前の職務経験のみが算入できることとされている。かかる直近要件は、日本の外国弁護士受入れ制度では課されていない。外国弁護士の受入れ要件としての職務経験期間を申請直前の職務経験に限定しないものとするため、連邦政府は、各州政府に申し入れをするなど所要の措置を取られたい。
(d) 外国弁護士の受入れの要件としての第三国における職務経験期間の算入
 外国弁護士の受入制度を設けている州・区のうち、第三国における職務経験の算入を認めていることが確認されているのは2州(ニューヨークとインディアナ)に過ぎない。日本の外国弁護士受入れ制度においては平成10年の法改正後、第三国において法律事務を行う業務に従事した期間も算入できるようになっている。外国弁護士としての職務経験地について、全ての州において第三国における職務経験を算入できるようにするため、連邦政府は、各州政府に申し入れを行うなど所要の措置を取られたい。
(e) 連邦政府は、日米規制緩和対話(第4回共同現状報告)において、「アメリカ弁護士会(ABA)は、本件に関する日本政府の要望を認識している。」としている。そこで、わが国の上記要望について、連邦政府がこれまでにABAとの間で行った対話・協議の具体的内容、進展状況及びABAの反応等について明らかにされたい。

(2) 製造物責任法
 米国における製造物責任(Product Liability)法は、米国で活動する企業に対し多大な訴訟費用負担を生じさせ、企業活動にとって過大な負担となっているのみならず、米国産業の国際競争力にも影響を与えている。米国連邦政府が、不法行為法改革の一環として、各州で進められている製造物責任の緩和を支持し、連邦レベルにおいても賠償額の一定の制限や時効の短縮などの製造物責任の緩和に向けた動きを推進することを求める。

6.領事事項

(1) 社会保障番号
 1996年2月の米国社会保障局の規則改正により、労働許可ビザを持たない外国人の居住者には社会保障番号が発行されないこととなったが、運転免許証やクレジット・カードの発行、銀行口座の開設、住居の賃貸契約等の際には社会保障番号の提示が求められるため、日本人駐在員の扶養家族が不利益を被っている。社会保障局は、(i)合法的滞在者が社会保障番号を取得できるよう規則を改正して頂きたい。それが不可能な場合には、(ii)民間企業に対し、社会保障番号の発行の制限に関する規則改正につき周知徹底し、社会保障番号を取得していない合法的滞在者が差別的な扱いを受けないよう指導して頂きたい。更に、(iii)社会保障番号に関する合法的滞在者からの苦情を受け付けて責任を持って対応するための窓口を早急に設けて頂きたい。

(2) 滞在許可証(I-94)
 2000年10月に我が方より提示した要望書でも指摘したように、I-94の延長申請制度は正常に機能していないために、合法的滞在者に不当な負担を課しており、抜本的改善が必要である。連邦移民帰化局は、延長手続の短期化・簡素化及び予測可能性・透明性の向上のため、全米一律の延長手続の標準処理期間を設定し、公表して頂きたい。また、第4回共同現状報告には、移民帰化局はI-94の延長申請を期限1年前から受け付けることを可能とする措置を検討すると明記されているが、その具体的進捗状況を教示頂きたい。

(3) 運転免許証
 I-94や社会保障番号等の要件によって運転免許証の新規取得や更新に困難を持つ合法的滞在者の要請に対応するため、社会保障局が引き続き日本国政府と議論を継続し、必要な情報提供を行うことを求める。また、警察官が国際運転免許証の存在を知らないことが原因でトラブルになる事例も見られており、米国政府は州政府等に国際運転免許証に関する制度を周知徹底するよう働きかけられたい。

II.電気通信

(1) 無線局免許に対する外資規制
 米国は、連邦通信法第310条において、無線局免許における直接投資20%の規制を維持している。このため、例えば、我が国事業者が衛星を利用した米国との国際通信サービスを提供するにあたり、米国に設置された地球局の無線局免許を取得しようとしても不可能であり、柔軟なネットワーク構築が困難となっている。
 日本政府は、米国政府が、連邦通信法第310条に掲げられた電気通信業務を行うことを目的として開設する無線局免許について、日本と同様に外資規制を撤廃することを引き続き要望する。

(2) 外国事業者等の米国市場参入に関する審査基準
 連邦通信法214条及び310条(b)(4)に関する外国事業者等の米国市場参入にあたっての審査基準のうち、「通商上の懸念」及び「外交政策」との基準は、電気通信政策と関係ない事項を理由とした認証・免許付与拒否も可能とするものであり、米国政府はこれらの基準を撤廃されたい。
 また、「競争に対する非常に高い危険」という基準については、発動にあたっての運用基準を明確にし、公表されたい。
 さらに、47CFRPart63にある国際サービスを提供する事業者への支配的事業者規制の適用にあたっての運用基準を明確にされたい。

(3) 州レベルの規制
 米国では、事業者に対して、サービスを行っている州の政府への収益実績等の報告が義務付けられているが、その報告フォーマットは州ごとに異なっている。多数に及ぶ州政府に対してそれぞれ異なるフォーマットによる報告を行うことは事業者にとって過度の負担となっている。
 米国政府は、州ごとに異なる収益実績等の報告による事業者の過度の負担を解消するために、全米公益事業委員協会(NARUC)に対し、報告様式の簡素化及び統一化の措置が取られるよう積極的に働きかけられたい。

(4) アクセス・チャージ
 FCCは、州際アクセス・チャージが、常に最新のLRICモデルにより算定される範囲内にあることを確保されたい。また、米国政府は、州内市外アクセス・チャージの算定にLRICモデルを導入し、州際アクセス・チャージと州内市外アクセス・チャージとの格差を解消あるいは縮小されたい。
 また、我が国と同様に、米国におけるLRICモデルについて、法的な裏付けを確立されたい。

(5) 商用衛星に係る輸出許可及びTAA許可等の処理手続き
 米国による商用衛星の輸出に係る権限が1999年3月に商務省から国務省に移管され、商用衛星に係る輸出及び技術情報移転について国務省の許可が必要になった。この結果、我が国の衛星通信事業者が自ら発注した衛星の技術情報を得るのに長期間を要するようになったことが、衛星打ち上げ計画への影響に関し、我が国の衛星通信事業者の将来にわたる懸念となっている。
 米国政府は、商用衛星に係る輸出許可及びTAA許可等の処理に要する期間をさらに短縮されたい。

III.情報技術(IT)

米国著作権法関係条項における著作物等の保護の明確化

 以下の点に関して連邦政府に対し、米国著作権法の規定の改正、解釈の明確化を要望する。

(1) 利用可能化権の明確化
 1996年に世界知的所有権機関(WIPO)において、国際的な著作権・著作隣接権保護について、インターネット等の情報技術の発展や社会状況の急速な変化に対応するための2つの条約(「著作権に関する世界知的所有権機関条約(WCT)」、「WIPO実演・レコード条約(仮称)(WPPT)」)が作成された。両条約では、それぞれ著作者又は実演家若しくはレコード製作者に、著作物等のインターネット等による送信の際、サーバーへのアップロードなどにより「公衆のそれぞれが選択する場所及び時期において著作物等を利用可能な状態にすること」に関する権利(利用可能化権、いわゆる「アップロード権」)を認めている(WCT第8条、WPPT第10、14条)。
 本件に関して、我が国は著作権法、EUは著作権指令においてその権利内容を明記しているが、米国は上記2つの条約を批准しているものの、本権利について著作権法上明記していない。インターネット上の音楽ファイル交換ソフトを用いたユーザー間での音楽データのやりとりが問題とされたナップスター事件においても、連邦高等裁判所は利用可能化権侵害については触れておらず、米国著作権法上、本権利の取扱いが不明確である。
 こうした状況はWCT(8条)及びWPPT(10条、14条)違反のおそれがあり、インターネットの普及が急速に進む中、我が国の著作物等の米国における適正な流通、権利侵害に関し重大な問題となることが考えられる。よって、米国著作権法に利用可能化権を設定し、その権利内容を明記することを要望する。

(2) 保護をうける実演の対象の拡大
 WPPT及びTRIPS協定は保護の対象となる生の実演を音楽実演(musical performance)に限定していないが、米国著作権法上、固定されていない実演の保護の対象は、生の音楽実演の音声もしくは音声及び映像(the sounds or sounds and images of a live musical perfomance)に限定されており、生の音楽実演以外の生実演については保護が及んでいない(1101条)。したがって、生の音楽実演以外の生実演、例えば我が国の実演家が米国で落語や演劇の実演を行った場合等は、当該実演は米国における著作権法の保護対象とならない。 こうした現状の米国著作権法はWPPT(第6条)又はTRIPS協定(第14条)違反のおそれがあり、今後、情報技術の進展に伴いこうした形態での我が国の実演の流通がますます増加すると考えられるところ、我が国実演家の権利の米国における適正な保護を図る観点から、米国著作権法における実演の保護対象を生の音の実演及び視聴覚的実演全体に拡大し、さらに、実演家に係る諸権利を著作隣接権としてその保護を強化することを要望する。

(3) 人格権に関する保護対象の拡大
 いわゆる著作者及び実演家の人格権について、米国著作権法では、第106A条において「視覚芸術著作物」の「著作者」(the author of a work of visual art)のみ、その権利が認められているが、米国が締結しているベルヌ条約第6条の2における著作者人格権及びWPPT第5条における実演家人格権の規定にはこうした限定は付されていない。こうした現状の米国著作権法はベルヌ条約又はWPPT違反のおそれがあり、デジタル化の進展により著作物の改変等が容易に行える状況において、このような限定を付すことは、米国において、我が国の著作物等の著作者及び実演家の人格権を阻害するものと考えられる。よって、米国著作権法における第106A条の規定の権利について、すべての著作者及び実演家について適用されるよう明記し、著作者人格権及び実演家人格権の保護を強化することを要望する。

(4) 放送機関の権利の明確化
 米国著作権法上、放送機関の権利については特に明記されておらず、我が国や米国が加盟しているTRIPS協定(第14条)に規定されている放送機関による固定、複製、放送等に係る権利についての取扱いが不明確である。国境を越えた放送事業が活発化し、情報技術の進展により放送に係る音声及び映像等が多様化している中で、米国著作権法において放送機関の権利が明記されていないことは、米国における我が国の放送機関の権利を制限するものと考えられる。よって、放送機関に係る権利保護を明確化し、さらに、放送機関に係る諸権利について著作隣接権としてその保護を強化し、また、放送機関の保護を定める「実演家、レコード製作者及び放送機関の保護に関する国際条約(ローマ条約)」の早期締結を行うことを要望する。

(5) 固定されていない著作物の保護
 米国著作権法においては、固定された著作物についてのみ保護が及ぶこととしており、固定されていない著作物については保護が及んでいない。このことにより、例えば、我が国で行われている講演・講義等が同時に米国において放送・有線放送された場合、当該講演は米国における著作権法の保護対象とならない。情報技術の発展により、今後こうした形態での我が国の固定されていない著作物の流通がますます増加すると考えられるところ、我が国の著作物の米国における適正な保護を図る観点から、米国著作権法における著作物の保護対象を固定されていない著作物をも含むように拡大し、その保護を強化することを要望する。

IV.エネルギー

 電力およびガス分野において、米国は、企業と消費者の利益となるよう積極的に改革に取り組んできた国の一つであるが、その進捗状況と結果は州毎に大きく異なっている。日本政府は、複雑な電力市場設計に対する理解が深まるよう、自国の経験を他国と分かち合うという米国政府の好意的意思を認識している。同時に、他の分野において、経済の繁栄のために貢献してきた、投資と貿易の流れの相互拡大が、この分野においても有益であると期待する。

 このような背景に基づき、日本政府は米国政府に対して以下の要望を提案する。これらは、米国内の一般・産業需要家のみならず、外国企業を含めた幅広い市場参加者により共有されるべき、更なる電力・ガス改革から得られる経済的利益に大いに貢献することを目的とするものである。

電力分野

 現在、米国議会においては、送電線建設に関するFERCの権限強化を含む包括エネルギー法案が審議されていると承知しており、日本政府としてもこれを歓迎するところであるが、未だ成立に至っていない。また、連邦政府による州際間の送電線の規制権限の有無に関しての訴訟が提起されているが、未だ結論に至っていない。米国における事業者のリスクと障害を軽減し、カリフォルニアの教訓を踏まえつつ、米国全体に活力ある電力市場を実現するため、連邦政府の主導により、以下の措置を可能な限り迅速に実施することが有益である。

(1) 連邦・州の規制の二重構造や州毎に異なる規制の改善
 米国では、電力に関して、連邦政府と州による双方の規制が課せられており、参入をしようとする際に、連邦の規制とは別に州毎の規制を検討する必要がある。実際に自由化の範囲や形態が州によって異なるなど、事業者の円滑な事業展開を阻害している例が見られる。米国政府は、各州政府により異なる規制の改善に向けた具体策を取るべきである。また、環境関連規制に関しては、新規の発電所や送配電線網の建設が現実的に不可能であるほど厳しい場合は、これを緩和する必要があるのではないか。

(2) 自由化に向けたスケジュールの明示
 米国においては他の多くの改革実施国と異なり、各州により自由化実行の有無、また自由化のスケジュールが大きく異なっている。米国政府は、国全体で今後の自由化の範囲とスケジュールを明示するための措置を迅速にとるべきである。

(3) 公益事業持株会社法(PUHCA)の見直し
 公益事業持株会社法の規制に関しては、1992年のエネルギー政策法(EPA)において、卸発電事業者については適用除外となったが、小売事業者に関しては適用除外とされていない。複数の州で活動する場合に、煩雑な認可手続き等を課すことでその活動の妨げとならないよう、小売事業者に関しても、同法の適用除外となるような特例を設けるべく見直しを行うことを求める。

(4) 公営事業のあり方
 電力市場における競争の進展に伴い、公営の事業体のあり方について検証が行われるべきである。自由化された市場における公正な競争に対して公営の事業体が与える影響と、公営の事業体に求められる公共政策の必要性についての調査を行い、今後の方向性についての提言をまとめ、それを公表することを求める。

(5) 卸市場での上限価格(プライスキャップ)
 いくつかの州では、電力の卸市場において上限価格を設定している場合があり、事業者が投下した費用を回収する際の障害となっていることがある。事業者が円滑に事業計画を立てられるよう、卸市場での上限価格を設定する際には、事業者の予測可能性に充分に配慮した方法を取るべきである。

V.医療機器・医薬品

(1) 医薬品・医療用具のGMP相互承認の推進
 厚生労働省とFDAは、昨年12月に医薬品GMPの査察報告書及び関連の情報を交換していくという協力関係について書簡を交換したところであるが、この協力関係を一層推し進め、製造品質管理の確認に関する事務が効率化し、米国にとっても日本の米国向け輸出業者に対する査察の負担を軽減する「医薬品GMP相互承認」に向けて両国政府間の更なる実質的な協議を開始したい。医療用具GMPについても同様に相互承認に向けて更なる実質的な協議を開始したい。

(2) GCP相互承認
 承認申請資料のGCP適合性の確認に関する事務が効率化され、新薬承認のための審査期間短縮にもつながる「GCP相互承認」に向け、GCP査察に係る情報交換を更に進め、両国政府間の実質的な協議の開始を目指したい。

(3) 輸出手続きの簡素化(アナボリックステロイド)
 DEAにより規制されている物質で、日本で承認されているものを日本に輸出する際に、当該物質が日本の法律に抵触しない旨を証明するために、日本国政府発行の輸入証明の提出を求めることがないよう、手続きの改善をお願いしたい。

(4) タール色素におけるバッチ毎の認証制度の改善
 米国に輸入される化粧品に含有されるタール色素成分について、製造業者が企業責任において品質確保を行うことを考慮し、バッチ毎にFDAが直接認証する制度について見直していただきたい。

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