アジア | 北米 | 中南米 | 欧州(NIS諸国を含む) | 大洋州 | 中東 | アフリカ
平成19年7月
(1)貿易促進権限(TPA)とは、従来「ファスト・トラック」権限(追い越し車線の意)と呼ばれていたものであり、期間を限定し、行政府に対し議会への事前通告や交渉内容の限定などの条件を付す一方で、かかる条件を満たす限り、議会側は行政府の結んだ外国政府との通商合意の個々の内容の修正を求めずに、迅速な審議によって通商合意を一括して承認とするか不承認とするかのみを決することとすることを法律で定めるもの。
(2)ブッシュ政権は、政権立ち上げ直後からTPA取得を重要な通商課題として位置づけ、2002年8月、TPA法(2002年超党派貿易促進権限法)を成立させた。TPAは2005年6月に延長され、政権は再延長を議会に働きかけてきたが、議会の同意を得るには至らず(注)、TPAは2007年7月1日に失効した。
(注)2007年2月14日、ヘンサーリング議員(共、テキサス)ら共和党議員、計17名が、TPA延長を求める法案(H.R.1042)を提出したが、現時点で採択に至っていない。
(1)1974年以降の大統領には、すべてファスト・トラック権限が与えられていた。クリントン政権では、1988年包括通商法で定められた権限を延長するなどしてNAFTA実施法及びウルグアイ・ラウンド実施法を成立させたものの、その後1994年4月以降、ファスト・トラック権限はない状態であった。
(2)2001年に発足したブッシュ政権はWTOドーハ・ラウンド交渉、全米自由貿易地域(FTAA)交渉及びその他の二国間FTA交渉などとの関連で、TPA取得を重要な通商課題と位置づけていた。同年10月に議会に提出されたTPA法案は、同年12月6日に下院を通過し、2002年5月23日には上院を通過した。但し、上院通過の際に、いわゆる「デイトン・クレイグ修正条項」(注)等の修正条項が付加され、上院と下院で異なる法案が採択されたことに伴い、両院協議会が開催され、同年7月25日に両院協議会の合意が成立した。その後両院協議会報告書が上下両院において可決され(下院:7月27日、上院:8月1日)、同年8月6日、ブッシュ大統領の署名により成立した。
(注)ファスト・トラックの適用のある通商協定の国内実施法案を上院で事後的に修正することを可能とする条項であり、TPAを実質的に骨抜きにするおそれのあるもの。
(3)TPA法はTPAの失効日を2005年7月1日までとしているが、(イ)大統領が議会に対して延長を要請し、かつ(ロ)両院いずれにおいても延長に対する不承認決議案が可決されない限り、失効日を2007年7月1日まで延長可能と規定している。ブッシュ大統領は、2005年3月30日、議会に対して、TPAの延長を要請した。同年6月30日までに上下両院で延長反対決議が採択されなかったため、TPAの失効日は、2007年7月1日まで延長されることが確定した。
(4)ブッシュ政権は、TPA再延長を議会に働きかけてきたが、議会の同意を得るには至らず、TPAは2007年7月1日に失効した。
(1)大統領は、失効日である2007年7月1日の前日(6月30日)まで、TPAに基づき他国との間で通商協定を締結することができる。
(2)TPA法における主要な通商交渉目標(参考2参照)としては、(イ)モノ、サービス、外国投資、電子商取引等における貿易障壁の削減、(ロ)腐敗防止措置、外国の規制慣行及び透明性の改善、(ハ)小企業に対する機会の改善、(ニ)米国の農業貿易に対する障壁の削減、(ホ)国際労働基準の遵守の改善、(ヘ)持続可能な開発の促進、(ト)外国投資家と投資が行われた国家との紛争処理手続の改善、(チ)米国の貿易救済法の保護等が挙げられている。
(3)大統領は通商協定を締結する90日前までに締結の意思を議会に通告しなければならない。
(4)協定締結後、大統領が議会に批准を求めた同協定については、議会は提案から90日以内に同協定を採決に付すよう義務づけられている。
(5)議会に提案された協定については、議会が内容を修正・変更することは許されず、一括して承認するか不承認とするかの投票を行うことのみができる。
(6)大統領は、通商協定締結により米通商法の改正を必要とする場合は、通商協定締結の180日前までに上院財政委員会と下院歳入委員会に報告する義務を負う。
(7)議会は大統領が提案する米通商法の変更に関し、「法的拘束力のない(non-binding)」不承認決議案を採決する権利を有する。
TPAは2007年7月1日に失効した。今後TPAを更新するためには議会の立法による承認が必要となる。
| 日時 | 経緯 |
|---|---|
| 10月3日 | 法案提出(提案者:トーマス下院歳入委員長(共、カリフォルニア) |
| 10月9日 | 下院歳入委員会通過(26対13) |
| 12月6日 | 院本会議通過(215対214) |
| 12月12日 | 上院財政委員会通過(18対3) |
| 日時 | 経緯 |
|---|---|
| 5月23日 | 上院本会議通過(包括通商法案の一部)(66対30) |
| (両院協議会の開催) | |
| 7月25日 | 両院協議会で合意成立 |
| 7月27日 | 両院協議会報告書が下院本会議を通過(215対212) |
| 8月1日 | 両院協議会報告書が上院本会議を通過(64対34) |
| 8月6日 | ブッシュ大統領が法案に署名、成立 |
| 日時 | 経緯 |
|---|---|
| 3月30日 | ブッシュ大統領が議会に対し、TPAの2年延長を要請 |
| 6月30日 | この日まで上下両院で延長反対決議が採択されず、TPAは延長 |
| 日時 | 経緯 |
|---|---|
| 2月14日 | TPA延長法案提出(提案者:ヘンサーリング議員(共、テキサス)ら共和党議員、計17名) |
| 7月1日 | TPA失効 |
(1)関税その他の障壁の削減・撤廃による市場機会の拡大
(2)サービス貿易に関する障壁の削減・撤廃
(3)米国の対外投資に対する不自然な及び貿易歪曲的な障壁の削減・撤廃(外国投資家と投資が行われた国家との紛争処理手続の改善を含む)
(4)知的所有権保護の促進及び知的所有権の保護による米国民の公正、公平かつ無差別な市場アクセス機会の確保、ドーハ閣僚会合におけるTRIPSに関する宣言の尊重
(5)透明性の原則のより広範な適用
(6)政府及び官僚の行為等に影響を与える貨幣その他の価値を有するものの供用、及び貿易に悪影響を及ぼす腐敗防止の促進
(7)WTO、ウルグアイ・ラウンド合意その他の多数国間及び二国間貿易協定の改善
(8)各国政府が国内市場において国内事業者を有利に扱う規制及び慣行の排除
(9)電子商取引における適正なルールの確保、及び電子商取引における関税に関するモラトリアムの延長
(10)農業分野における相互に利益のある貿易の実現(米国にとりセンシティブな農産品に対する取扱いを含む)
(11)労働及び環境に関する保護の確保(国際労働基準の遵守の改善、持続可能な開発の促進を含む)
(12)貿易協定における紛争解決手続及び執行手続の強化
(13)延長されたWTO交渉(民間航空機及び原産地規則)における目標の達成
(14)米国貿易救済法(アンチダンピング、相殺関税、セーフガードなど)による救済手段の保護及び活用
(15)内国税に関する国境における調整に係るWTOルールの改正
(16)繊維・衣料の分野における米国製品に対する競争的な市場機会の確保
(17)最悪の形態の児童労働の禁止の追求