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自由貿易は欧米人によって常に叫ばれ続けてきた。19世紀には、自由貿易の名の下に、武力で開国を迫り、最終的には多くの国を植民地化してきた。今日、我々は再び同様の危険にさらされている。
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ある国は、提案された条件や用語を受け入れるまで、自由に貿易することが許されない。WTOはルールに基づいた貿易を確保するために設立されたものであるが、それを超えて、一国内の行政と商慣行は、WTOを通じ、強国によって作られた特定のシステムに合致していることが求められている。
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そうしたシステムに合致させるため、或いはそれに従わせるために、膨大な圧力がこれらの国々にかけられる。政治的・経済的圧力はかつての戦艦以上に脅威的で、かつ効果的である。
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変動相場制では、いわゆる自由貿易主義者は商品ではなく、通貨を取り引きする。通貨は売買の対象となるのみならず投機の対象となる。しかも、それは実在の通貨ではなく、数字上の架空の通貨である。彼らは投機を繰り返して莫大な利益を得る。貨幣の取引は世界の総貿易の何倍もの大きさである。ヘッジファンドは世界のいずれの国家もなし得ないような巨額の資金を調達することができる。その活動は巨大で、活動如何では裕福な国や世界全体の金融状況すら破壊してしまう。
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小国にとっての懸念は、通貨の自由貿易がその経済を一夜にして破壊し得るということである。そして「国際」機関が、アドバイスと資金の貸与のために入ってくるのである。しかし、彼らのアドバイスは状況を悪くするだけであり、彼らの資金を借りた途端に、経済的植民地化が始まる。彼らは、その国の金融をどのように管理すべきかを決めるだけでなく、彼らの政治的信条を押しつけようとする。特定の「改革」がなされない限り、資金を実際に借りられない。借りられたとしても、それは対外債務の返済に用いられる。その国は、国際機関の債務者となり、債務負担は時として永久に続く。
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その間に、その国は、豊かな国が管理する国際機関によって管理されることになる。それは正に植民地化でしかない。昔は軍艦が貿易のための開国に用いられたが、今や国際機関がいわゆる「自由貿易」のために用いられる。一度、門戸を開けば、巨大な企業と銀行が入ってくる。その国の企業や銀行はひとたまりもなく呑み込まれる。
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我々はグローバリゼーションに賛成である。しかし、それは豊かな自由貿易主義者だけの利益であってはならず、国家の利益も考慮されなければならない。しかし、不幸なことに、現時点では、WTOや他の機関は小国の利益に然るべき考慮を払っていない。
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日本は10年以上に亘って悪い状況にある。日本は自らが置かれている苦境から脱せずにいる。多くの人々が日本に助言をし、日本は多くの手段を試したが、結果は見られない。
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日本がかつて奇跡を達成したことは疑いようもない。そして、日本はそれを他の指導を受けることなく、自分自身の方法で成し遂げた。日本が欧米のシステムに変革したがっていることは理解する。しかし、システムを急速に変えれば、深刻な混乱に至る。これまでうまく機能してきたシステムを継続する方がはるかによい。日本のシステムは日本人にとってこれまで非常にうまく機能してきた。もし、変えなければならないのであれば、それは混乱を避けるためにゆっくりと変えなければならない。
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アジアの人々は東方を、そして日本を見ている。我々は日本の失敗ではなく、成功から学びたいと考える。日本人は目覚めて、今直面している惨事は自らが作り出したものであることを認めなければならない。戦後の復興を自らのやり方でなし得たように、正に今、自らの方法で立ち直ることができよう。
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今は非常に重要な時期である。グローバリゼーションは適切に管理されなければならない。東アジアの人々は結束していない。彼らは共に歩む必要があり、そのためのリーダーシップが必要なのである。日本にとっての課題はリーダーシップを取ることである。日本は国力も技術もある。東アジアは、そして世界は日本を必要としている。
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我々は恐怖の時代に生きている。テロリストに怯え、盲目的に反応している。我々は怒り、怒りの中で理性を失ってきている。テロリズムはその根源が消滅するまで決してなくならないことは歴史が示している。労働者の搾取や植民主義者の抑圧はテロを産む。それは抑圧された人々による抑圧者に対する闘争である。抑圧をより加えても、闘争は止められない。
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世界は真に路を失った。テロリストの怒りは存在するし、存在し続ける。しかし、我々は自分の怒りをコントロールすることができるし、理性的でいることができる。理性だけが我々をテロリストとの闘いにおける勝利に導くことができる。
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日本はテロの標的ではないし、怒りに満たされることもない。日本は世界をその良識に戻すことができる。日本は世界の経済を立ち直らせることができる。日本は、従うのではなく自らが先導する決心をすれば、多くのことがなし得る。先導されることではなく、先導することが、正にグローバル化した世界における日本の課題である。
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