欧州連合(EU)

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革新的な環境技術に関する日EU共同シンポジウムの開催

2008年12月2~3日
於、フランス・リヨン市
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(冒頭挨拶する飯村駐フランス日本国大使)

 日本とEUは、2001年に首脳レベルで合意した日EU協力のための行動計画に則り、市民社会の連携や人的交流を促進するため、日EUの有識者が参加するシンポジウムを2002年から毎年テーマを変えて開催しています。第7回目となる今回は、革新的な環境技術をテーマとして、2008年後半のEU議長国を務めるフランス政府との協力の下、リヨン市で開催された環境見本市「ポリューテック」の会場内で開かれました。今年7月の北海道洞爺湖サミットでも主要議題の一つとなった気候変動問題は、世界規模での取り組みが必要となっていますが、今回のシンポジウムでは、この問題への対処のためにも重要なエネルギー効率、再生可能なエネルギーをはじめとする様々な環境技術に関連して、日欧の最先端の取り組みを数多く紹介し、それぞれの専門家間で知見の共有を図る機会となりました。また、今年は日仏交流150周年にもあたることから、今回のシンポジウムは、その主要行事の一つとしても位置づけられました。

 今回のシンポジウムは、12月2日、3日の2日間にわたり開催され、全体会合(オープニング・セッション)の後、1)建物におけるエネルギー効率2)伝統的環境政策(リサイクル、水・廃棄物処理、汚染対策)3)未来の乗り物4)再生可能なエネルギーの4つの分科会に分かれて、日本およびフランスほか欧州各国の計40名以上にものぼる専門家が発表し、質疑応答を行いました。

 オープニング・セッションでは、ブロッシャー・ローヌ=アルプ地域圏議会副議長、飯村駐フランス日本国大使およびコシュスコ=モリゼ・仏エネルギー・持続可能開発・都市国土計画大臣による冒頭挨拶の後、田中伸男国際エネルギー機関(IEA)事務局長が基調講演を行い、今後予想される世界のエネルギー需要の増大と気候変動問題に対処していくためにも、エネルギー効率の向上、カーボン・キャプチャー・ストレージ(CCS)技術、再生可能エネルギーや原子力の活用を通じたエネルギー・ミックスの見直しといった努力がますます重要になると述べました。オープニング・セッションではこのほか、クラーク欧州委員会環境総局科学・イノベーション課長、小井沢 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)理事、モワソン・フランス環境・エネルギー資源庁(ADEME)科学部長より、それぞれEU、NEDO、ADEMEによるエネルギー効率向上などを目指した革新的な環境技術への取り組みを紹介しました。

 今回のシンポジウムは、NEDOおよびADEMEの全面的なご協力を得て開催することができました。NEDOとADEMEは1980年代から密接に協力してきていますが、今後、再生可能エネルギー等についての協力を一層強化すべく、新たな協力合意を結ぶことになり、その署名式がシンポジウムの冒頭、村田NEDO理事長およびジュアンノADEME長官によって行われました。

 「ポリューテック」は、フランスを代表する環境見本市であり、パリとリヨンで交互に毎年開催されています。今年の「ポリューテック」は日本とメキシコがゲスト国であり、12月2日夜には、日本およびメキシコの関係者等を招待してのリヨン市長主催レセプションが、リヨン市庁舎で開催されました。

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(リヨン市長主催レセプション)

各分科会の概要

第1分科会:建物におけるエネルギー効率

 第1分科会においては、温室効果ガスの排出を抑えた環境に優しい「パッシブ・ハウス」をはじめ、一般家庭やビルなどでエネルギー効率を高めるための様々な最新の技術について、日欧の専門家による報告が行われました。

 最初に報告を行ったスウェーデンの建築士エーク氏は、断熱や換気を改善した環境に優しい「パッシブ・ハウス」に関する取り組みを紹介し、特に、古い建物をこのコンセプトによりリフォームすることで、スウェーデンでは大きなエネルギー節約効果が得られていると報告しました。また、スウェーデン気象研究所(SMHI)のエリクソン氏は、天候が建物のエネルギー需給に及ぼす影響を管理することで、ビルのエネルギー効率を高めるシステムの導入がスウェーデンで進んでいると報告しました。仏CSTB社のケナール氏は、建物自体のエネルギー効率だけではなく、その住人が生活のために必要とする給湯、暖房、電気、移動手段(車)といったエネルギーを全体的に効率化するためのシステム構築への取組みを紹介しました。独NRW州エネルギー庁のグリース氏は、ドイツ最大州であるNRW州における「パッシブ・ハウス」の新築・改築の現状を報告。ヒートポンプ・蓄熱センターの内海氏は、ヒートポンプ技術と蓄熱技術を組み合わせることで、年間を通じて建物におけるエネルギー消費を大幅に抑制できると述べ、「エコ・キュート」と呼ばれる先進技術が、日本の家庭や商業施設で普及しつつあると報告しました。また、積水化学の中田氏は、高い断熱効果を持つ窓材料「エア・サンドイッチ」の開発について報告しました。山形県産業技術振興機構の小田氏は、LEDより広範囲の照明に適している有機LDの研究開発に向けた取り組みを紹介しました。

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(第1分科会にて)

第2分科会:伝統的環境政策(リサイクル、水・廃棄物処理、汚染対策)

 第2分科会では、伝統的な環境政策、すなわちリサイクル、水・廃棄物処理、汚染対策などの点について幅広く取り上げられました。

 まず、九州の環境技術に関する産業クラスターである九州地域環境・リサイクル産業交流プラザの鶴田氏(環境テクノス株式会社)から、同クラスターにおける取組みを紹介しました。かつて「灰色の街」と呼ばれるほどの酷い大気汚染や水俣病を克服し、現在は世界の環境首都を目指して様々な取り組みを行っている九州の現状やアジアへの積極的な展開について説明しました。富山工業高等専門学校の袋布氏は、「ものづくり連携大賞(特別賞)」を受賞した産学官連携プロジェクトである土壌中のフッ素処理技術について説明しました。リヨンを中心とした産業クラスターAXELERAのボルツマイヤー氏からは、化学と環境技術の融合を目指して47ものプロジェクトを展開している旨の報告があり、そのうち浄水やリサイクルに関するいくつかのプロジェクトについて説明がありました。DELLA FAILLE社(仏)のフレデリック氏からは、プラスチック分析を容易かつ迅速に行うことができる「Ion Attachment Mass Spectrometry(IA Mass)」技術についての詳細な報告がありました。仏ブルターニュ地方、コートダジュール地方にある海洋に関する産業クラスター「Pôle Mer」のブルビジョー氏からは、海洋安全、造船、海洋エネルギー開発、マリンバイオ、海岸環境プランニングの5つのテーマで様々なプロジェクトが進行している旨の報告がありました。宝酒造の森下氏からは、同社が取り組んでいる「4R(refuse, reduce, reuse, recycle)」について紹介しました。仏GIFSI社のモレル氏及びジャクノー氏からは土壌の修復プロセス技術の開発について説明がありました。リスク管理に関する産業クラスターであるSETECOMのジョリー氏からは、環境リスクを管理する地方自治体のプロジェクトを様々な形でサポートしている取り組みについて紹介がありました。

第3分科会:未来の乗り物

 第3分科会では、環境に優しい自動車、船舶、航空機に関する日欧の最新の状況について紹介されました。

 まず、仏トヨタ自動車のガルデル氏より、仏電力公社(EDF)と共同で開発を行っているプラグインハイブリッド自動車(家庭用の電源コンセントから充電できるハイブリッド自動車)について紹介しました。仏電力公社(EDF)のメニエ氏は、世界の各自動車メーカーによるプラグインハイブリッド、電気自動車の開発状況について説明があり、これらの自動車の普及が進んだ場合の電力需要増に対する電力会社としての見方が紹介されました。日産自動車の堀江氏は、1992年以来独自に開発を続けてきたリチウムイオンバッテリーの秘めるポテンシャルと開発の現状について説明しました。独BMWのリートマッテン氏からは、2015年の実用化を目指し開発を進めている水素自動車についての紹介がありました。プジョー・シトロエングループ(PSA)のベレッタ氏は、小型化や空力性能の向上による燃費向上の現状と仏電力公社などとの協力による電気自動車の開発の状況について説明しました。仏ガス公社(GDF)のフロレット氏は、同社が力を入れている天然ガス自動車についてその利点について紹介があり、現在開発中のハイブリッド天然ガス自動車について開発状況の報告がありました。メルセデス・三菱扶桑のレネファルト氏からは、ディーゼルエンジンとリチウムイオンバッテリーを組み合わせたキャンタートラックハイブリッドについて紹介があり、英国で12台を使用してテストを行っている旨の報告がありました。日立製作所の堀場氏は、NEDOの補助金を受けて開発中の自動車用バッテリーについて紹介しました。独NRW州のコッホ氏は、2000年以来80のプロジェクトを立ち上げて燃料電池車両の開発を行っている現状について報告しました。ルノーのコンテ氏からは、2011年の市場投入を目標に開発を進めている電気自動車について紹介がありました。リヨンを中心とするトラック、バスに関する産業クラスターである「LUTB」のマルタン氏は、エンジン、安全、構造、運行システム、マネージメントの5つに分類された様々な研究開発プログラムについて、その一部を紹介しました。スウェーデンSKF社のロビン氏は、航空機のフライトコントロールシステムの電子化技術について紹介しました。東京海洋大学の渡辺教授は、高温でも動く小型エンジンの開発、波への抵抗を高めるスタビライザーの研究、コンテナ船の横転防止技術など同大学において実施されている研究について映像を交えて紹介しました。海洋に関する産業クラスターの「Pôle Mer」のエルイン氏は、エコシップや動力を使用しないグライダー型の潜水艇の開発、船体塗装の環境への親和性の向上の取り組みなどについて説明を行いました。

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(分科会のプレゼンテーションに聞き入る聴衆)

第4分科会:再生可能エネルギー

 第4分科会では、太陽エネルギー、風力発電、水素・燃料電池、バイオ燃料といった再生可能なエネルギーに関する日欧の最先端の取り組みが紹介されました。

 まず前半は太陽エネルギーを中心としたプレゼンテーションが行われましたが、シャープの林氏は、同社の太陽電池生産体制強化に向けた取り組みについて報告しました。続いて、フランスINES社のマルブランシュ氏より、太陽エネルギーを利用した「エネルギー・ゼロ」住宅の開発を目指して、産官学共同で実施中の研究開発の現状につき報告しました。また、三菱重工の高塚氏は、次世代の太陽電池である「タンデムPV」の開発をはじめとする同社の再生可能エネルギー技術への取り組みを紹介しました。

 一方、クリマトウェル社(スウェーデン)のマディナ氏は、再生可能エネルギー需要の急増に生産体制が追いついていないことから、逆に、再生可能エネルギーを節約するための新技術開発への取り組みについて報告しました。また、デルビ・クラスター(フランス)のシャリエ氏は、地中海沿岸地域の特性を活かした再生可能エネルギー生産とエネルギー貯蔵のためのネットワーク作りについて報告し、フォテイスSAS社(フランス)のジュコワ氏は、太陽光発電のためのコストの早期回収のため、普及を進めるフランスの取り組みについて紹介しました。

 後半は風力、水素・燃料電池、バイオ燃料についてのプレゼンテーションが続きました。

 まず、日本のベンチャー企業であるゼファー社の伊藤氏より、同社が開発した革新的な小型風力発電機「エアドルフィン」を紹介。また、ヴェルグネット社(フランス)のヴァレー氏よりも、開発途上地域での普及を目指し開発された同社の小型風力発電機「ファー・ウィンド」を紹介しました。水素・燃料電池の分野では、NEDOの伊臣氏から、燃料電池と水素技術の研究開発のためにNEDOが行っている取り組み全般と、特に家庭用燃料電池システム「エネファーム」の普及に向けた取り組みを紹介しました。また、イェーテボリー市(スウェーデン)の公益法人でバイオガスの普及に向けた取り組みを行っているヴェルンビー氏は、空気を汚さず廃棄物処理にもなるバイオガスの長所を活かし、スウェーデンでバイオガスの普及が急速に進んでいる現状を紹介。また、エリオン・アレーヴァ・グループ(フランス)のオーゲ氏は、水素エネルギーをはじめとする燃料電池と再生可能なエネルギーを組み合わせることによって、環境に優しいエネルギー利用を促進する可能性を示しました。トリマテック・クラスター(フランス)のサラーデ氏と、フィンアクソ社(フランス)のコリニョン氏は、それぞれ有機物を液体化し、ガス化するための技術開発の最新の現状について報告しました。

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(環境見本市「ポリューテック」の様子)

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