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ユーロを巡る動向

平成13年7月

 本年上半期のユーロの動向及び最近の話題等を取りまとめました概要以下のとおりです。

  1. ユーロ相場動向
    (1) 昨年11月後半から回復を始めたユーロの対ドル相場は、本年初頭にいったんピークを付けた後は徐々に下落し、4月下旬以降は1ユーロ=0.9ドル割れの状態が続いています。足下では6月中旬及び下旬に1ユーロ=0.84ドル近辺まで下落し史上最安値を窺う展開となり、その後も低迷しています。

    (2) この間、米国経済の減速が鮮明となりFRBが度重なる利下げを行った結果、米欧の政策金利差は縮小しついには逆転するに至りましたが、それにもかかわらずユーロは低迷しています。その要因には諸説ありますが、域外への株式投資マネーの流れ、米欧の長期的な期待成長率の差、ユーロ紙幣・硬貨導入を控えてアングラ・マネーがいったん域外通貨に変換されていること(詳細後述)、そしてECBの金融政策への根強い不信感等が指摘されています。

    (3) ECBについては、5月に政策金利引下げを決定した際のプロセスが不透明と批判を浴び信認低下につながったほか、金利引下げ後も景況感が悪化する一方でインフレ率が高止まり、ECBの金融政策が「手詰まり」になりつつあるとの指摘もあります。

    (4) ユーロの対円相場は、年初のピークの後も一本調子では下落せず4月上旬に再度上昇したほか、5月中旬から6月にかけての下落局面でも対ドルほどには相場は下げていません。これは、日本経済への不安感の高まりから円安が進行したことが主因と考えられます。

    ユーロ/ドル

    ユーロ/円

  2. ユーロ紙幣・硬貨の流通
    (1) ユーロ紙幣・硬貨の流通に向けた本年内の動きとしては、9月21日にユーロ紙幣・硬貨の実物を公開(多くの国では9月1日に銀行向けに紙幣・硬貨の供給を開始)、12月15日に一般向けに硬貨の供給を開始することとなっており、欧州委は偽造防止対策を急ピッチで進めています。

    (2) その上で2002年1月1日、ユーロ紙幣・硬貨の流通が開始されます。各国通貨の流通期限は(遅くとも)2月28日までとされ、市中銀行でのユーロへの交換期限も6月末ないし12月末となっています(国により異なり、期限後も中央銀行へ持ち込めば交換可能)。

    (3) 紙幣・硬貨の流通については、主にマルクで保有されているアングラ・マネーとの関係が取り沙汰されています。西・伊等地下経済が大きいとされている国及び中東欧では、来年の流通開始後に手持ちマルク現金をまとめてユーロに変換することで「目立つ」ことを懸念する向きが、あらかじめドルやスイスフランに両替する動きが加速しており、これがユーロ安の一因になっているとの指摘がある。また、西では来年のユーロへの交換を嫌ってアングラマネーが消費に回っており、これが一時的な景気押し上げ要因になっているとの見方もあります。

    (4) この他、ユーロ建て価格表示の一般化に伴い価格の国際比較が更に容易となり、物価押し下げ圧力が働く可能性や、ユーロが「実体を伴った通貨」になることによる信頼感の向上、ひいてはそれによるユーロ相場の押し上げ効果なども指摘されています。

  3. 英国のユーロ参加
    (1) 6月上旬の総選挙で、ユーロ参加推進を掲げた労働党が圧勝したことから、英国のユーロ早期参加観測が一部に持ち上がっています。ブレア首相は以前から、ユーロ参加の機が熟しているか否かの判断をするための「5つの経済テスト」を総選挙後2年以内に行い、条件を満たしたと判断されればユーロ参加の是非を問う国民投票を実施すると公言しており、その時期が注目されています。

    (2) 英のユーロ参加に向けては、現実的に見て(a)世論の動向、(b)ポンドの相場水準というハードルが存在します。(a)については、今次総選挙においてユーロ参加が主たる争点とならず、且つ世論調査では7割近い国民がユーロ参加に反対という状況下、国民投票で賛成多数を確保することは容易ではないと見られています。(b)については、英国産業の輸出競争力維持のためには現状より低いレートでポンドがユーロに固定されることが望ましいと一般的に考えられていることから、ポンド相場水準是正とその過程で生じるインフレ圧力が問題となっています。

    (3) 実際の参加時期についての見方は分かれていますが、ブレア政権が総選挙勝利の余勢をかって早めに国民投票に持ち込むと予想する識者は、2002年のユーロ紙幣・硬貨流通の成功を見極めた上で同年春にも国民投票を実施、最短で2004年からユーロに参加する可能性もあると指摘しており、産業界からの期待も高まっています。他方、「5つのテスト」の基準が曖昧である以上国民投票が最大の鍵であると考える識者からは、拙速な国民投票で反対多数となれば当面のユーロ参加は極めて困難となるため、時間をかけてユーロ参加の経済的メリットを証明する方が得策との見方もあります。

    (4) なお、以前はポンド相場について米ドルとの相関(米ドルが高くなればポンドも高くなる、ドル=ポンド相場は安定的)が指摘されていましたが、ここにきてポンドはユーロとの相関を強めているとの指摘が増えています。市場は、総選挙の結果を受けて、英国の早期ユーロ参加を織り込み始めたとも言えます。
(参考)
英国の「5つの経済テスト」の内容
(1) 英国及びユーロ圏とも、恒久的にユーロ圏の金利の下で良好な状況でいられるように、景気循環と経済構造は一致しているか。<英国とユーロ圏の経済の収斂>

(2) 英国経済は、問題が発生した場合にそれに対処できるだけの十分な柔軟性を備えているか。<外的ショックに対処しうる柔軟性>

(3) ユーロ参加により、英国での投資に関する企業の長期的な意思決定に関して好ましい条件が創出されるか。<対英投資促進の可能性>

(4) ユーロ参加により、英国の金融産業、とりわけシティのホールセール市場の競争力に対して如何なる影響が及ぶか。<英国金融業界への影響>

(5) 以上のまとめとして、ユーロ参加は高成長と安定性、永続的な雇用の増加を促進するか。<英国の成長と雇用促進の可能性>


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