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平成20年1月
クロアチアは、旧ユーゴスラビアからの独立を宣言した1991年来、トゥジマン大統領率いるクロアチア民主同盟(HDZ)の下民族主義的な路線を進み、国際的孤立を深めていた。1999年末にトゥジマン大統領が死去すると、2000年初頭にはメシッチ大統領(人民党出身)が就任するとともに、社会民主党(SDP)を中心とする五党連立政権が発足し、HDZ下での権威主義的な体制と訣別し議会制民主主義の体制を整えた。しかし、SDP連立政権はマクロ経済の安定には成功したものの有効な経済政策を打ち出せず、個人レベルでの生活水準の向上が実感できなかったことへの不満を背景に、2003年11月の議会選挙ではHDZが最多議席を獲得し、同12月、サナデル内閣が発足した。サナデル首相は、セルビア系等少数民族政党や旧ユーゴ国際刑事裁判所(ICTY)と協力する姿勢を見せる等、HDZを中道右派政党へと修正し、かつての民族主義的路線が復活するのではという国際社会の懸念を払拭して、国際協調路線を推進した。このクロアチアの国際協調路線は、2005年1月にメシッチ大統領が再選され、また、2007年11月の議会選挙を経て2008年1月に第二次サナデル内閣が発足する中で、今日まで堅持されている。
外交面では、EU、NATO加盟を最優先課題に掲げ、2001年12月にEU諸国と安定化・連合協定(SAA)を締結、2003年に加盟申請を行い、2004年6月には加盟候補国の地位を取得した。加盟交渉は2005年10月に開始され、2008年1月現在、全35項目中16項目で具体的な加盟交渉が開始されている。NATOに関しては2000年5月、平和のためのパートナーシップ(PfP)に参加、2002年5月には、加盟のための行動プログラム(MAP)の参加申請が認められた。2006年11月に行われたリガNATO首脳会合では加盟を認められなかったが、改革が進められ加盟基準が満たされるならば、2008年4月の次期首脳会合において招請されることが決定された。
経済的には、2004年以降緊縮財政政策によって財政赤字の削減が進んでいるものの、対外債務が依然として増加しており、財政の構造改革とスリム化とが求められている。GDPの約2割を占める観光収入は堅調に伸びているが、旺盛な個人消費に支えられた経済成長には一服感があり、12%台の失業率への対応、輸出の振興のためにも有効な経済・産業政策が求められている。
昨年11月25日、議会選挙が実施されたところ(投票率63.53%)、政党別の獲得議席数は以下のとおり(括弧内は選挙前と比較した増減)。
(1)HDZ(中道右派) 66(±0)
(2)SDP(中道左派) 56(+22)
(3)農民党、社会自由党連合(HSS・HSLS、中道) 8(-3)
(4)人民党(HNS、中道左派) 7(-4)
(5)スラヴォニア=バラニャ・クロアチア民主会議(HDSSB、右派) 3(±0)
(6)イストラ民主会議(IDS、中道左派) 3(-1)
(7)年金者党(HSU) 1(-2)
(8)権利党(HSP) 1(-4)
(9)少数民族政党 8(±0)
1月11日、新議会が召集され、前議会副議長のベビッチ(HDZ)が、新議会議長に選出された。続く12日、議会はサナデル首相候補による新政府に対する信任投票を行い、HDZ、HSS、HSLS及び独立民主セルビア党(SDSS)の連立による第二次サナデル内閣が発足した。
昨年12月27日、クロアチア各紙は、クロアチアで自宅禁固状態に置かれていたICTYのマルカチュ戦犯容疑者に関し、キリン内相他と狩猟を行った写真を大きく報道した。マルカチュ容疑者は、キリン内相が身柄を保障し自宅禁固状態に置かれるとの条件で、ICTYから保釈されクロアチアに戻ることを許可されていたが、クロアチア政府はICTYの要請に基づき同容疑者を逮捕し、同30日に身柄をICTYの拘置所があるオランダに移送した。なお、同29日、キリン内相は、事件の責任をとってサナデル首相に対し辞表を提出した。
(1)メシッチ大統領の第62回国連総会出席
昨年9月25-28日、メシッチ大統領はグラバル=キタロヴィッチ外相と共に第62回国連総会に出席し、同総会での演説にてクロアチアの2008-09年国連安保理非常任理事国選挙に対する各国の支持を求めた他、バン・キムン国連事務総長、アフマディネジャド・イラン大統領、カルザイ・アフガニスタン大統領、メルケル独首相等と個別に会談を行った。
(2)クロアチアの国連安保理非常任理事国選出
昨年10月16日、国連安保理非常任理事国選挙が行われ、東欧グループからチェコと共に立候補していたクロアチアは、チェコを破って2008-09年任期の非常任理事国として選出された。
(1)クロアチアのEU諸国に対する漁業・環境保護水域宣言適用
1月1日、クロアチアは、2006年12月の議会決定に基づき、EU諸国に対するアドリア海における漁業・環境保護水域宣言(EFPZ)の適用を開始した。同宣言は、2003年10月に議決され、2004年10月に適用が開始されたが、EU諸国に対しては、2004年6月に適用免除が一度議決されていた。EUは、クロアチアに対し同宣言の適用撤回を要請しているが、アドリア海周辺のEU加盟国であるイタリアとスロヴェニアの間では、同宣言に関わる洋上での問題は、とりあえずは発生していない。
(2)EU加盟交渉の進捗状況
昨年10月12日、EUとクロアチアの間で、消費者・健康保護及び対外関係の項目に関する交渉が開始された。また、12月20日には、汎欧州ネットワーク及び財政・予算準備項目に関する交渉が開始された。これにより、EUとクロアチアとの間で開始された加盟交渉は全35項目中16項目となった。なお、EUはクロアチアにおける司法改革、少数民族保護及び汚職対策の停滞を問題視しており、これら三点の遂行を司法・基本的諸権利項目に関する交渉開始の条件としているため、同項目の交渉開始は大幅に延滞している。
(3)メシッチ大統領のEU及びNATO本部訪問
昨年12月3-5日、メシッチ大統領はベルギーのブラッセルにあるEU及びNATOの本部を訪問し、デ・ホープ・スケッフェルNATO事務総長とクロアチアのNATO加盟に向けた改革の進捗状況につき会談するとともに、ソラナEU理事会事務総長兼共通外交・安全保障政策(CFSP)上級代表、ペッテリング欧州議会議長及びレーン欧州委員(拡大担当)と、クロアチアのEU加盟交渉状況、コソボ情勢、クロアチアの漁業・環境保護水域宣言適用問題等につき会談した。
(4)エルドマンNATO事務総長補の来訪
昨年11月5-7日、エルドマン事務総長補を長とするNATO専門家チームが、クロアチアのNATO加盟に関し、軍改革の進捗状況を調査するために来訪した。
(5)在クロアチアOSCE事務所の閉鎖
昨年12月21日、OSCE常設理事会は、2007年12月31日を以て在クロアチア事務所の閉鎖を決定した。なお、同事務所の一部業務は、新たに開設される戦犯裁判モニタリング事務所が引き継ぐ。
(1)ICTYにおける「ムルクシッチ」等事件に対する判決
昨年9月27日、ICTYは、クロアチア紛争時のブコバルにおける非セルビア人に対する戦犯行為容疑で起訴したユーゴスラビア連邦軍(当時)のムルクシッチ大佐、シュリバンチャニン少佐、及び、ラディッチ大尉に対し(所謂「ムルクシッチ」等事件)、それぞれ懲役20年、同5年、無罪の第一審判決を下した。これを受け、10月15日、サナデル首相は国連総会において同判決に関する演説を行い、「ムルクシッチ」等事件でクロアチアが被った甚大な人的被害に対して判決は軽すぎ、ICTY検察部が速やかに控訴するよう望むこと、今後の世界がいかに戦争犯罪に対処していくかの指針として、ICTYの役割は重要であること、等を述べた。
(2)ゴトビナ戦犯容疑者による保釈申請の却下
昨年11月28日、ICTYは、ゴトビナ戦犯容疑者の弁護団より昨年8月に提出があった、同容疑者の保釈申請を却下する決定を下した。右申請においては、ゴトビナは自宅で禁固状態に置かれ、クロアチア政府が同人の身柄を保証することが提案されていた。
(1)環境保護協力に関するクロアチア、セルビア、ハンガリー大統領会談
昨年9月4日、メシッチ大統領は、セルビア、ハンガリーとの国境地帯にあるハンガリーの国立公園を訪問し、同地において、タディッチ・セルビア大統領及びショーヨム・ハンガリー大統領と、環境保護をめぐる三国間協力につき会談した。
(2)メシッチ大統領のアゼルバイジャン訪問
昨年10月2-3日、メシッチ大統領がアゼルバイジャンを訪問し、アリエフ大統領との間で、両国間の経済関係強化や、アゼルバイジャンにおけるナゴルノ・カラバフ自治州の問題等につき会談した。
(3)メシッチ大統領の仏訪問
昨年12月17-18日、メシッチ大統領は仏を訪問し、サルコジ大統領及びクシュネール外相と、クロアチアのEU加盟、コソボ情勢、サルコジ大統領提唱の地中海同盟構想等につき会談した。メシッチ大統領はまた、松浦ユネスコ事務局長と、文化財保護をめぐるクロアチアのユネスコとの協力等につき会談した。
(1)世銀によるビジネス環境報告書
昨年9月26日、世銀が発表した2007年の世界各国のビジネス環境に関する報告書「ドゥイング・ビジネス」によると、クロアチアは178カ国中97位。クロアチアのランキングは、2006年よりも27位上昇したものの、中東欧諸国の中では最下位から二番目。
(2)世界経済フォーラムによる競争力指標
世界経済フォーラムが発表した2007年の世界競争力指標によると、クロアチアは131カ国中59位で、前年の51位より8位順位が低下。個別指標で順位が高いのは、数学・理科教育(28位)、電話普及率(31位)、初等教育の質(34位)等で、順位が低いのは農業行政支出(119位)、投資保護(113位)、労使関係(113位)等。
(3)ウオールストリート・ジャーナルによる経済自由度指標
1月15日、米のウオールストリート・ジャーナルとヘリテージ・ファンデーションは2008年世界経済自由度指標を発表。同指標によれば、クロアチアの自由度は「かなり不自由」と分類される54.6%で、世界では157カ国中113位(前年は109位)、欧州地域内では41カ国中37位。10の評価項目のうち、高評価の項目は財政自由度及び金融自由度で、一方、低評価の項目は、所有権関係、汚職からの自由度、及び、政府からの自由度であった。
(4)IMFによる予測経済成長率の修正
昨年10月17日、IMFはクロアチアの2007年の予測経済成長率を5.6%と発表。同数値は、昨年4月に発表した予測値4.7%から0.9%の上方修正。IMFはまた、クロアチアの2007年の予測インフレ率を2.3%と発表するとともに、2008年の予測経済成長率と予測インフレ率をそれぞれ4.7%、2.8%と発表した。
(5)2007年1-11月の観光実績
統計局が発表した2007年1-11月の観光実績によると、観光客総数は1,099万人(うち国内観光客数176.9万人、外国人観光客数922.1万人)で、対前年同期比8%の増。なお、日本人観光客数は83,346人。
昨年10月1-12日、NATO及びパートナー国による、NATO緊急出動部隊の海洋軍事演習「NOBLE MIDAS 2007」が、沿岸地方中部の都市スプリット周辺で行われた。同演習には約8,000人が参加し、NATO緊急出動部隊が海洋から内陸に上陸し、要衝に展開するとの想定で行われたが、演習の最中には、露軍の艦船がクロアチア沖で偵察を行う等の問題が発生した。