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在瀋陽総領事館事件

平成14年5月17日

1.日本の立場

(1)事実関係

(イ) 8日午後3時頃(現地時間同2時頃)、北朝鮮人と見られる5名が我が方在瀋陽総領事館に入館を試み、総領事館の入口附近で中国公安当局ともみ合いになった。その間、2名は総領事館館内に入ったが、その他の3名は中国公安当局により敷地内から引きずり出され、入口附近で取り押さえられた。

(ロ) 館内に入った2名は総領事館査証待合室に駆け込んでいたが、駆けつけた中国公安当局により取り押さえられた。

(ハ) 現場にいた我が方総領事館員が中国公安当局に対し、これらの者を移動させないよう求めたが、結局、これら5名は瀋陽市公安局に連行された。


(2)日本の立場

(イ) 今回の事件については、中国との間で事実関係の確認及び再発防止を含め、毅然と対処していく考えである。

(ロ) 事実関係に関し、武装警察による総領事館敷地内への立入り及び関係者5名の連行について、総領事館側の同意があったとの事実はない。

(ハ) 関係者5名の処遇をめぐっては、人道上の観点が配慮されることが重要である。こうした観点からも、今後の中国政府の対応を、日本を含む国際社会全体で注視していくことが重要と考える。

(ニ) 日本としては、引き続き、国際法及び人道上の観点から、冷静かつ毅然として対処しつつ、中国側との協議を通じ、本問題の早期解決に向けて全力を尽くしていく考えである。


2.事件後の動き(日中間のやりとりを中心に)

(時間はいずれも日本時間。●は日本側、○は中国側の主張)
  中 国 日 本
8日 16:40~ 在瀋陽総-瀋陽市公安局、遼寧省公安及び外弁室
●武装警察が承諾なく館内に侵入したことに抗議、関係者の身柄を早急に引き渡してほしい
○引き渡しには応じられない
 
8日 18:40 高橋在中国大公使-邱紹芳中国外交部領事司副司長
●同意なき立ち入りに抗議、関係者の引き渡し要求、事実関係及び中国側の対応につき詳細な説明を要求
○日本公館の安全確保のための措置、関係者の身元確認中
 
9日 11:00   竹内外務事務次官-武大偉在京中国大使
●中国側の対応は問題であり遺憾、武警が同意なく館内に侵入したことに抗議、関係者の引き渡しと中国側の詳細な説明を要求
○総領事館の安全のためにとった措置でほかの意図はない
12:40   小泉総理-胡啓立全国政治協商会議全国委員会副主席
●中国側の誠意ある対応を求めたい
○詳細を承知していない、在京中国大使に話をしてほしい、中国側はきちんと対応すると思う
19:00 阿南中国大使-劉古昌中国外交部部長助理
●総領事館の不可侵の侵犯に抗議、関係者の速やかな引き渡しを要求、中国側から詳しい説明を要求
○中国側の対応はウィーン領事関係条約代31条2項但書に沿っており国際法違反ではない、総領事館員の保護目的で悪意はない
 
10日 10:00   川口外務大臣-胡啓立全国政治協商会議全国委員会副主席
●この問題は重大、日中間に見解の相違あるが早期解決の助力を得たい
○本件は突発的出来事、外交部がきちんとした対応をとると考える
16:35   川口外務大臣-武大偉在京中国大使
●関係者の早期引渡し、陳謝、再発防止の保証を強く求める
○現在事件全般につき調査中、領事館の安全確保のための責任感からとった措置
20:15 野本在中国大公使-羅田広中国外交部領事司長
○中国側の調査の結果によれば、武警の敷地立入り、5名の連行について総領事館側から同意があった
●そのような事実はない
 
深夜 孔泉中国外交部報道官の談話
○中国側武装警察は、総領事館の副領事1名の同意を得た後、館内に立ち入り、2名を連れ出した。その後、同館の領事1名が中国側から事情を聞き、中国の公安職員が上述の5名を連行することに同意し、かつ武装警察に対し感謝を表明した。
○武装警察の措置は純粋に責任感から生じたものであり、領事関係に関するウイーン条約の関係規定に合致する。
 
11日 早朝   日本側コメント(中国外交部報道官談話について)
●中国官憲の立ち入り及び関係者5名の連行について日本側が同意を与えた事実はない
●5名の速やかな引き渡し、中国側の陳謝、再発防止の保障を求める
13日 16:00   川口大臣が臨時記者会見において調査結果を発表
●事実関係に関し、武装警察による総領事館敷地内への立ち入り及び関係者5名の連行について、総領事館側の同意があったとの事実はない
14日 10:30 小野領事移住部長-羅田広中国外交部領事司長
●日本側による調査の結果、日本側が同意を与えた事実はない
○中国側は冷静に対応した、日本側副領事は頭を下げたり、「連れ出してもよい」と言ったりしており、立ち入り、連行に同意があった
 
15日 10:45   竹内外務事務次官-武大偉在京中国大使
●人道的観点につき率直に意見交換したい。冷静な協議に基づく早期解決が重要である
○冷静な協議に基づく早期解決が重要との点に同感。中国は従来から関連する国内法、国際法、人道主義からこのような問題を処理している


3.国会での態度表明

(1)小泉総理 (14日、衆議院本会議)

中国側の武装警察が、我が方の同意なく我が方総領事館に侵入したこと、最終的に関係者全員を中国側公安部門へ連行したことは、国際法及び人道上の観点から、極めて問題であり、非常に遺憾であると考えている。
中国側は、これらの行動につき我が方が同意を与えていたと主張しているが、昨日の我が方調査結果でも明らかなとおり、そのような事実はない。我が方は、同調査結果に基づき本日午前、北京において、中国側に改めて反論を行った。
日本としては、国際法上及び人道上の観点から、冷静に毅然として対処しつつ、中国側との協議を通じ、本問題の早期解決に向けて全力を尽くしていく考えである。
今回の事件では、調査の結果、意識面、指揮命令系統、警備面等において、種々の問題が明らかになっている。こうした問題点については、国民の声に謙虚に耳を傾けつつ、今後、改善点等を早急に講じていきたいと考えている。


(2)川口外務大臣

(イ) 衆議院本会議における報告(5月10日)

今回の外務省の対応振りにつき、種々御批判等を受けていることについて、謙虚に反省している。特に、このような緊急事態における対応及び警備の体制、情報収集体制につき問題があったと考えている。
中国側の対応は関係の国際法及び人道上の観点から極めて問題であり、非常に遺憾と考えている。特に中国の武装警察が我が方の同意を得ることなく総領事館内部に立ち入ったことは、いかなる理由があれ、日本として到底受け入れられるものではない。
政府としては、事件発生直後から、北京及び東京において、中国側に対してハイレベルで累次申入れを行ってきている。具体的には、日本総領事館の不可侵が犯されたことにつき強く抗議を行うとともに、関係者5名の速やかな引渡しを要求している。
外務省としては、今回の反省の上に立ち、今後の対応にあたって、遺漏なきよう、必要な改善等を早急に行っていきたいと考えている。


(ロ) 衆議院本会議における報告(5月14日)

10日夜中国外交部報道官談話を発表し、中国側は、武装警察の総領事館への立入り及び関係者の連行につき、日本側の同意を得て行った旨主張している。日本側はこれまでも事実関係をしっかりと調べており、このような中国側の発表とは見解を異にしている。一方、事実関係を徹底的に解明するため、小野領事移住部他を現地に派遣し、11日から本事件に関する事実関係の調査を実施し、調査結果については、自分から13日に発表した。
今回の調査結果により、総領事館の対応についても、危機意識の希薄さ、指揮命令系統の不備、物理的警備体制の不備などの問題が明らかになった。議員各位及び国民の皆様の外務省に対する信頼を失わないためにも、こうした問題点については厳しく反省した上で今後、必要な改善策等を早急に講じていく考え。
今回の調査の結果、武装警察官が最初に総領事館敷地内に立ち入った際、また、総領事館査証待合室に入り込んだ男性2名を連行した際、さらに、関係者5名を最終的に連行した際のいずれについても、日本側が同意を与えた事実はない。
今回の事件については、中国との間で事実関係の確認及び再発防止を含め、毅然と対処していく考えである。
他方、中国側に連行された5名の処遇をめぐっては、人道上の観点が配慮されることが重要である。こうした観点からも、今後の中国政府の対応を、日本を含む国際社会全体で注視していくことが重要と考える。
日本としては、引き続き、国際法及び人道上の観点から、冷静かつ毅然として対処しつつ、中国側との協議を通じ、本問題の早期解決に向けて全力を尽くしていく考えである。


(ハ) 参議院本会議における報告(5月15日)

今回の外務省の対応振りにつき、種々御批判等をいただいていることにつき、謙虚に反省している。特に、今回の調査結果にもあるとおり、総領事館においては、危機意識の希薄さ、指揮命令系統・警備体制の不備等の問題があった。議員各位と国民の皆様の外務省に対する信頼を回復していくためにも、こうした問題点については厳しく反省した上で、今後、必要な改善策を早急に講じていく考え。
本件事件発生後、日本からは中国側に対し累次ハイレベルで申入れを行い、私自身も10日、武大偉在京中国大使に対し、本件はウィーン領事関係条約に規定される領事機関の公館の不可侵に反するものであるとして、本件に関し、中国側の陳謝、再発防止の保証を求めたところ。
今回の事件については、中国との間で事実関係の確認及び再発防止を含め、毅然と対処していく考えである。
他方、中国側に連行された5名の処遇をめぐっては、人道上の観点が配慮されることが重要である。こうした観点からも、今後の中国政府の対応を、日本を含む国際社会全体で注視していくことが重要と考える。
日本としては、引き続き、国際法及び人道上の観点から、冷静かつ毅然として対処しつつ、中国側との協議を通じ、本問題の早期解決に向けて全力を尽くしていく考えである。


4.中国側の主張の変遷

(1)孔泉外交部報道官(5月9日定例記者会見)

領事関係に関するウィーン条約第31条によれば、接受国は適切な措置をとり、領事館が侵犯及び損害を免れるよう保護する責任を負っている。現在の世界的な反テロリズムの環境の中で、現場の警察官が領事館に違法に侵入した身元不明者を連行したのは、完全に領事館及び同館員の安全を考慮してのことであり、同条約の関連規定に合致するものである。


(2)孔泉外交部報道官談話(5月10日)

中国側武装警察は、総領事館の副領事1名の同意を得た後、館内に立ち入り、2名を連れ出した。その後、同館の領事1名が中国側から事情を聞き、中国の公安職員が上述の5名を連行することに同意し、かつ武装警察に対し感謝を表明した。
武装警察の措置は純粋に責任感から生じたものであり、領事関係に関するウィーン条約の関係規定に合致する。


(3)孔泉外交部報道官(5月14日定例記者会見)

武装警察は、現場(正門付近)に現れた宮下副領事に対し、「総領事館内に入り、駆け込んだ2名を連行してもよいか」と尋ねたところ、同副領事はうなずき、手招きし、通訳を経て、「入って彼らを連行してもよい」とのことだったので、武装警察は総領事館内に入った。
総領事館の査証待合室でソファーに座っていた2名につき、武装警察が宮下副領事に、「この2名を連行してもよいか」と尋ねたところ、同副領事はお辞儀し、うなずいて同意し、中国語で「よい」と答えたため、武装警察は2名を連行した。
武装警察詰所に馬木副領事が来て、5名に対し、どこから来たのか尋ねるとともに、男性から一通の手紙を受け取り、読んだ後、その手紙を男性に返した。中国側が5名を連行しようとすると、馬木副領事は少し待つように言い、再度電話をかけた上で、連れていってもよいと述べた。この際、同副領事は中国側にお辞儀をし、中国語で何回も「ありがとう」と言った。


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