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東アジア各国・地域の経済情勢

平成12年9月

1.インドネシア

 アブドゥルラフマン・ワヒッド大統領は就任以来活発な外交活動を展開し、「イ」経済への信頼性の回復と外資誘致を諸外国に呼びかけてきたが、大統領の指導力に対する批判をはじめとする国内政治の動揺が「イ」経済へ影響を及ぼし続けているとの見方も依然根強く残っている。
 98年のマイナス13.2%という大幅なマイナス成長を底に成長率は回復傾向にあるが、国内消費、国内・外国投資も経済危機到来前の水準には戻っておらず、民間債務処理及び銀行再編という大きな問題への取り組みの成否が経済の本格的な回復に影響を与えると見られている。
 1999年暦年の成長率は0.23%と緩やかながらも回復基調を維持したが、2000年第1四半期の実質GDP成長率(前年同期比)は当初予想値であった4%に達することなく3.2%に止まり、景気回復の足取りがしっかりしてきたとする市場評価に陰りを落とす結果となった。ただし、第2四半期の実質成長率が4.13%に達したと発表されるに及んで、2000年の実質成長率は当初見通し3.8%を超えて4%以上も実現可能との予測が強まってきている。なお、景気の牽引役となる個人消費や輸出(特に、「電気製品・電気機械」「繊維」「木材・木製品」等)が堅調となってきているが、政治・社会的不安を背景としたルピア通貨減価が景気回復の動きに与える影響が懸念材料となっている。
 消費者物価上昇率は、99年暦年で2.01%と落ち着いて推移したが、2000年は、電気や燃料価格の政策的引き上げから、当初予測の5〜7%から8〜9%に達するとの見方も出ており、ルピア為替レート(9月現在1ドル8200〜8400ルピアの間での取引が常態化している)の動きと共に要注意点である。
 輸出入活動も経済危機以後の激減からの回復を示してきているが、輸出活動の回復の伸びが輸入の伸びを上回っていることから、貿易収支黒字は若干拡大気味である。対インドネシア直接投資については、99年は総額109億ドル(認可ベース)と前年に比して落ち込みを見せており(97年:338億ドル、98年:136億ドル)、外国投資の拡大が「イ」政府にとり大きな課題となっている状況にある。
 国民協議会年次総会の後の8月23日に発表された改造内閣では、大統領の人脈が強く現れた経済関係者の登用と、新経済チームによるIMF側との交渉の行く末が注目を集めたが、9月7日にIMFとの間で数値目標達成期間の延長や中小企業育成の強調といった修正を施した新しい補足覚書が発表されるに至っている。改造内閣後の経済政策のポイントは、銀行再建庁による接収資産等の売却と民間債務処理の加速化を中心とするIMF補足覚書内容の着実な実施であり、経済回復に向けた「イ」政府の動きに対する内外関係者の関心は依然強い。

2.タイ

 タイ政府は、経済危機以降、98年後半から金融セクターの再建と共に財政支出を中心とした景気刺激策により悪化した実体経済の回復に努めてきており、99年に入って、為替の安定、金利の低下、インフレの収束等を背景に、好調な輸出等により、経済は回復基調に転じている(99年の経済成長率は、98年のマイナス10.4%から4.2%のプラスとなっており、本年は5%の経済成長が見込まれている)。
 他方、不良債権比率は、低下傾向にあるものの依然高い水準にあり、本格的回復には不良債権処理、金融機関の体質改善等金融セクターの再建の必要性が指摘されている。また、折からの原油価格の上昇に加え、農作品価格の低迷が、農民等貧困層の生活を圧迫し、社会問題となってきている。

3.マレイシア

 通貨・金融危機に直面したが、IMFによる支援を仰がず、独自で経済政策を推進。当初は緊縮型の経済政策をとったが、経済の悪化に歯止めをかけるべく景気刺激策に転換し、不良債権処理や金融機関のリストラにも取り組んでいる。また、98年9月初めに為替管理措置及び固定相場制を導入(99年9月1日以降は、1年間凍結されていた株式等資産売却代金の外貨転換・国外送金が可能となっている)。98年はマイナス成長を記録したが、99年第2四半期にプラスに転じ、製造業を中心に経済は回復基調にある(GDP成長率:98年マイナス7.5%、99年5.4%、2000年予測5.8%)。

4.フィリピン

 アジア通貨・経済危機の影響は近隣諸国より比較的小さかったものの、98年には、輸出と対比投資の伸び悩み、インフレ率の上昇、財政収支の悪化、エル・ニーニョ現象による農業生産の落ち込み等から、GDP成長率は91年以来のマイナス(−0.5%)を記録した。しかし、99年に入り、農業部門の回復とサービス部門の拡大により、GDP成長率は3.2%に転じ、今年上半期の同成長率も3.9%となるなど、成長過程に入ったものと見られる。一方、好調な経済成長率と経常収支、目標範囲内のインフレ率、順調な外貨準備高など健全なファンダメンタルズにも関わらず、今年は年初からペソ安が続き、9月にはアジア通貨・経済危機以降の最安値を記録したことが懸念される。この背景には、反政府勢力との紛争激化や外国人拉致事件の発生といった政情不安定、大統領が自分に親しい人物を優遇したり、インサイダー取引に大統領自身が関与した疑惑が取り沙汰されるなど市場の信用低下、あるいは目標範囲内ではあるものの拡大しつつある財政赤字などが挙げられ、これらに嫌気をさした外国からの投資引き上げが原因と見られている。

5.シンガポール

 98年は域内の経済減速の影響を受け、経済成長率が低下し、98年の第3、第4四半期に連続してマイナス成長となり、1986年の第1四半期以来のマイナス成長となった(98年全体では、0.3%成長)。しかし、99年に入ると、経済対策が奏功し、また、世界的なエレクトロニクスと化学製品市況の好転及びアジア各国の経済回復により、実質GDP成長率は第1四半期こそ0.8%だったが、第2四半期に6.6%、第3四半期6.9%、第4四半期7.1%と高成長を達成した(99年全体で5.4%)。また、2000年に入っても、第1四半期9.8%、第2四半期8.0%の高成長を維持し、これを受けて「シ」政府は2000年の経済成長率を7.5〜8.5%に上方修正した。

6.韓国

 金大中政権の下で、金融・企業(財閥)・公共部門・労働の4大改革を進めた結果、99年の成長率は10.7%を記録し、本年も内需中心に8%後半の成長は確保できる見込み。8月には、IMFも韓国の景気回復を評価する声明を出している。
 4月の総選挙後、金大中大統領は国民に対し「経済改革は継続する。」と述べたが、早期景気回復に伴い国民の間に満足感(complacency)が芽生え、更なる改革に消極的になっているようで、改革が本当に貫徹されるのかどうか注目されている。6〜7月にかけて種々のストライキが発生する等、経済改革に反対する動きが多々見られたことから、最近国際金融機関や国内外の研究機関は「金融・企業面における構造調整が迅速に行われない限り、韓国経済は再び危機に陥る」との警告を発している。特に、金融改革については、ノンバンク部門(総合金融会社を除く)の改革が後手に回っており、また企業改革については、経済危機を克服したことから財閥側は政府による経営干渉に反発しており、「所有と経営の分離」等、金大統領就任時に発表された改革原則の実現が危ぶまれている。
 経済面においては、米国・日本・東南アジア向け半導体・自動車・電化製品等の輸出は好調であるが、景気回復に伴う国内消費(嗜好品等)需要の増加と原油価格の上昇に代表される原材料価格の高騰、及び裾野産業が脆弱な輸入誘発型産業構造から輸入(特に対日)は急増しており、今年度に入り貿易黒字は縮小傾向にある。

7.中国、香港、台湾

(1)99年の中国経済はGDPプラス7.1%と目標値(7%前後)を達成したが、消費者物価上昇率はマイナス1.3%となり、デフレ傾向が顕在化。また、直接投資契約額マイナス11%と低迷。人民元レートについては99年を通じて安定し、中国政府要人は今後も引き続き人民元の安定を維持する旨言明。本年においてもGDP見通しを7%前後とした上で、積極的な財政支出の継続、内陸部開発(西部大開発)の強化等が図られている。本年上半期では、前年同期比でGDPプラス8.2%、輸出プラス38%等回復基調。引き続き、国有企業改革、失業問題、不良債権問題等の帰趨がポイント。また、WTO加盟に向けた諸制度の改革、産業構造の改編が急務。

(2)香港経済は成長率が98年はマイナス5.1%であったが、99年はプラス3.1%、2000年第1四半期は14.3%、第2四半期は10.8%となり、回復の兆しを見せつつある。これを受けて当局は8月に2000年の成長率予測を8.5%に上方修正した。また、当局は対米ドル・ペッグ制の見直しを繰り返し否定。回復の兆しは見られるものの、不動産市況の低迷、デフレ基調、高失業率(2000年5−7月期は5.0%)の状況は続いており、全体として依然厳しい状況にある。

(3)99年の台湾経済は、上半期は米国経済が持続的に堅調であり、東アジア諸国が金融危機から脱しつつ回復基調にあったことから、外需拡大で輸出及び製造業生産が活発化し、経済成長率は、98年の4.6%から5.7%に上昇。9月に大地震が発生し、電力供給等が制限されたため、内需に影響を与えたが、対外貿易の拡大及び民間投資の回復等により、通年の経済成長率は約5.7%となった。99年の1人当たりGNPは約1万3250ドル。外貨準備高は1138億ドル(2000年6月末現在)で、世界第3位。

8.その他アジア諸国

 ヴィエトナム、カンボディア、ラオス、ミャンマーでも、アジア経済危機から直接・間接の影響を被って、軒並み経済が停滞している。ヴィエトナムでは外国からの民間投資の大幅減少に伴って、経済成長が大きく減速していたが、本年上半期は石油価格の上昇もあり、輸出が26.2%増となり、成長率も6.2%に改善された。カンボディアでは97年の武力衝突の影響とも相俟って外国からの援助、民間投資、観光客の減少を招き、98年は経済成長1.0%になったが、同年11月に成立した新政府の改革努力により経済に回復の兆しが見え始め、99年には4.3%まで回復した。ラオスでは構造的にタイ経済に依存していることもあり、97年のアジア通貨危機以降、自国通貨(キープ)の大幅下落から物価の上昇が見られた。ミャンマーでもASEAN諸国からの投資が大きく落ち込み、基本インフラ整備の遅れ等、従来から課題となっている経済的ボトルネックと相俟って厳しい経済情勢が続いている。
 ブルネイは石油価格の低迷及び国庫の不正流用等により、財政の逼迫が言われていたが、最近の石油価格の急騰により、1999年のGDP成長率(推定)は2.5%と1999年7月時点で政府が予想した年間成長率0.6%の4倍以上、また、1998年のGDP成長率1%を大きく越えて上昇した。



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