平成19年12月
「リヤド空港でタクシーを拾ったらそのまま砂漠に拉致されると聞いてるんですが・・・」。これは私がサウジに赴任した05年当時、ある日系企業からの問い合わせの内容でした。当時は、外国人などを狙ったテロがようやく落ち着き、サウジ国内の治安や経済も復活の兆しを見せ始めた頃でした。今でこそサウジは政治的にも経済的にも脚光を浴びていますが、数年前までは多くの日本人にとっては「イラクの隣の国」程度の認識で多くの誤解に満ち溢れていました。
このような状況でしたので、当時は、まずは大使館で基本的な情報を入手したいと考えておられる企業の方々が多かったように感じています。そもそも否定的なイメージでサウジに来られる方々も多く、このため、誤解を解くことを含め、当地の事情説明には特に気を遣っています。大使館はサウジで最初に接する「顔」であるので、説明内容もさることながら、「いつでも大使館を使ってください」とお願いしています。初めてサウジを訪問した企業の方々が、悪い印象で帰国されるようなことがないよう、大使館が出来ることはたくさんあります。
近年、サウジ経済が注目され、企業の関心もますます高まってきたように感じています。サウジは大きな成長を遂げていますが、政府の手続きや幾つかの規制にはまだまだ問題があります。民間ベースでダメなら政府チャネルを通じて対応することが基本だと考えていますので、当地のJETROや中東協力センターとも協力しつつ、サウジ政府に対して書簡を発出することもあれば、館内のハイレベルから先方の担当大臣に直接お願いすることもあります。無論、すぐに解決出来ることはそれ程多くはありませんが、官民が連携し地道にサウジ側にあたっていくことが不可欠です。政策ベースでは、自由貿易協定(FTA)交渉や二国間協議など多くの取り組みが動き始めていますが、両国の経済連携強化は結局のところ民間企業の活動によってのみ達成可能なわけで、このため個別案件の地道なケアはとても重要だと思います。
2006年12月にサウジ外務省の傘下である外交研究所が主催する会議に招待されました。主題は、「サウジ政府の在外公館を如何にしてサウジ経済に貢献させるか」で、日本大使館は精力的に日本企業支援をしているので、その取り組みを参考にしたいので紹介して欲しいというものでした。我々の普段の地道であまり目立たない取り組みが評価され、風の噂かサウジ外務省に届いたのは大変嬉しい限りでした。会議にはサウジの官民代表の重鎮が列席していました。私の方からは普段行っている業務を紹介しましたが、最も強調したのは次の点です。
「企業が相談に来る案件は、在外公館の前を通り過ぎる何百もの案件の一つかもしれない。しかしながら、企業はその一件に会社の命運をかけているかもしれないし、従業員とその家族の将来に大きな影響を与える可能性があることを忘れてはならない。」
今後も微力ながら、以上のような心構えを肝に銘じつつ引き続き精進していきたいと思います。
