平成20年8月
サンクトペテルブルクと聞かれて皆さん何を想像されるでしょうか。ほぼ北緯60度に位置するこの街はロシア第二の都市であり、その建都は1703年にまで遡ります。1703年といえば日本では赤穂浪士の討ち入りが行われた頃であり、ロシアにおける古都サンクトペテルブルクはその名前を変えつつ300余年に亘り発展してきた街です。また世界三大美術館の一つに数えられるエルミタージュ美術館、琥珀の間で有名なエカテリーナ宮殿、街を縦横無尽に横切る運河、オペラ・バレエの聖地としてモスクワのボリショイ劇場と並び称されるマリインスキー劇場、そして街中に現存する帝政ロシア時代の宮殿の数々。この街はユネスコの世界文化遺産にも登録され、歴史上有名なロシアの文豪、詩人が愛してきた文化と芸術の都でもあります。
2006年の先進国首脳会合の開催でその名を広く知られるところとなったサンクトペテルブルクですが、05年のトヨタの進出以来当地に居を構える日系企業は大幅な増加を見せており、日産、スズキといった大手自動車産業の進出、また更には経済危機を克服し順調に発展を遂げつつあるロシア経済の状況も相俟って、その数は現在50社を数えるまでになりました。また今後は自動車部品関係企業の進出あるいは他の産業分野の企業の進出も予想され、文化・芸術面のみならずビジネス面においても益々日本との関係が深化していくことが予想されてます。
進出企業の増大に伴い、企業支援担当官としての役割も広汎かつ多岐に亘りつつあります。当地に進出している、あるいは進出を検討している日系企業の多くは具体的なプロジェクトの遂行という目的を有しており、企業支援担当官としては個々の企業が進出あるいは業務遂行に際し直面する許認可取得、工場建設、通関といった様々な課題に適切かつ迅速なオーダーメイドの対応が必要とされています。微力ながら企業支援のために東奔西走する日々が続いていますが、「企業支援担当官」の求められる役割とは、と問われたら私はその役割は「midwife(助産師)」的役割であると答えます。
先日、当館総領事公邸にて日本の洋酒メーカーのセミナーとウィスキーティスティング会が開催されました。外務省では企業支援の一環としてその目的等に合致した場合、日本企業への施設開放と支援を積極的に行っています。しかし公館施設を利用した開催においては様々な工夫と対応が求められます。企業のセミナー利用という通常想定されていない行事の準備に際しては企業担当者及び各種業者との綿密な打ち合わせが必要であり、また企業側の招待客リスト作成への支援、文化行事との組み合わせによる集客率の向上、当地マスコミへの広報等、時々の状況変化に応じつつ、企業側の希望を汲み取って開催効果を最大化するためのきめ細やかなオーダーメイドの対応が求められました。
セミナー・ティスティング会終了後は、別の文化行事出演のために日本から当地を訪問中の著名なジャズボーカリストとピアニストの方々によるミニコンサートも開催し、予想より遙かに多くの参加者を得て行われた全ての催事が終了したのは日がまだ大きく傾くことなく中空で輝く白夜のシーズンの午後10時。散会した後の片付けの際、紙製テーブルクロスにロシア語で「素敵な会にお招きいただきありがとう。日本製ウィスキーの素晴らしさを堪能できた。ウォッカより美味しかった。」との走り書きを見つけた時の爽快さは決して忘れることができず、企業支援担当官としての醍醐味を味わった感じです。
企業支援における主役は決して企業支援担当官ではありません。担当官はあくまで脇役であり主役は企業そのものであると私は考えます。
『主役である企業が最良の成果を産み、進出した地域からも最良の評価と称賛を得ること』を考え、何を為すべきか自戒しながら今日もまた業務遂行にあたっています。
北緯60℃という高緯度に位置する当地は厳寒期には零下25度近くまで気温が下がることもしばしばです。今後も当地への日系企業の進出が続くものと予想されますが、厳冬期にも沢山の汗をかき、企業が元気な赤ちゃん(成果)を産むことを「midwife(助産師)」たる日本企業支援担当官として願いつつ、これからも各案件に真摯に対応していきたいと思います。
(レセプション風景)
(セミナー風景)