2010年10月
ラオス人民民主共和国(ビエンチャン特別市)(国際電話国番号856)
ラオスは熱帯モンスーン気候に属し、雨期(5月から10月)と乾期(11月から4月)に分かれます。一年の大部分は高温多湿で、特に4月前後が最も暑く最高気温が40℃以上になることがあります。雨期は日中蒸し暑くなりますが、明け方には気温がやや下がることがあり、気候や気温の変動により体調を崩すことがあります。また、この時期は細菌が繁殖しやすい状況にあり、細菌性の食中毒に気をつけてください。例年雨期には蚊が媒介するデング熱が流行するため、蚊対策が重要となります。乾期のうち12月から2月上旬までは比較的涼しく、活動しやすい時期となりますが、空気が乾燥しており上気道炎などに罹りやすくなります。
当地の医療水準は低く、邦人の利用に耐え得る医療施設はビエンチャン特別市内のCentre Medical de l'Ambassade de France(CMAF)1カ所のみです(「9. 病気になった場合(医療機関)」参照)。ただし可能な検査や治療は限られており入院施設がないため、入院や手術、精密検査が必要な場合や、産婦人科、耳鼻咽喉科、眼科など専門医の診察が必要な場合には、邦人の大多数は国境を越えタイ東北部ノンカイまたはウドンタニ、さらにはバンコクの病院を受診しています。ラオスの病院を受診した場合には、現金による支払いが必要です。また上記の(CMAF)を除き、海外旅行保険の取り扱いは行っていません(タイでは多くの病院がクレジットカード、海外旅行保険の取り扱い可能)。ラオスで可能な治療診察行為は限られており、近隣諸国への搬送を考慮しなければならない場合があります。その際、高額な治療費や搬送費の請求、受診時に支払い能力を確認されることがあり、不測の事態に備えて、十分な額の海外旅行保険に加入することをお勧めします。
ビエンチャン特別市内に限れば上水道普及率は比較的高く、浄水場における水質もかなり改善されてきていますが、市内の配管や貯水槽の管理は未だ十分とは言えません。ビエンチャン特別市を含めたラオス国内全域において、飲用には、適切な浄水器を使用するか、市販のミネラル水の使用をお勧めします。但し、ミネラル水も品質の劣る製品が出回っているので注意が必要です。
高級ホテルや外国人を顧客とする一部のレストランを除き、当地の食品衛生管理は信頼できないことが多いので十分に注意してください。食品のみならず、食器・調理器具の管理の不十分さから起こる感染もあります。衛生環境が整っていない場所での飲食は控えるようにしてください。
(1)感染性胃腸炎:原因としては細菌性、ウイルス性、寄生虫によるものと様々です。細菌性の場合、本邦でも頻度の高い、サルモネラ(当地ではチフス菌を含む)、腸炎ビブリオ、大腸菌、カンピロバクターなどに加えて、細菌性赤痢、コレラなどへの感染の可能性があります。その他、ウイルスによる胃腸炎も罹患頻度が高いですし、赤痢アメーバを始め、寄生虫感染の可能性もあります。これらは食事や飲み水、不潔な手指等から経口的に感染します。(1)食事前、トイレの後は良く手を洗う、(2)生野菜は調理前によく洗浄する、(3)生もの、加熱の不十分なものは摂取しない、(4)衛生状態が悪そうな屋台や店での飲食は避ける等、感染を防ぐため、食べ物、水、衛生状態に注意してください。治療は、下痢のみの場合、十分な水分摂取(電解質を含んだものが望ましい)が重要です。下痢の状態で暑い中、無理をすると、高度の脱水に陥り危険ですので、必ず休養をとってください。下痢止めの使用は最小限にとどめましょう。大量の下痢、血便や粘血便、持続する高熱、強い吐き気や腹痛、水分が摂れない等の症状がある場合、必ず病院を受診してください。
(2)デング熱:デングウイルスを保有している蚊(ネッタイシマカ、ヒトスジシマカ)に刺されることにより感染します。感染してから1週間以内に38〜40℃程度の発熱、激しい頭痛、関節痛、筋肉痛などの症状で発症し、発熱後期から解熱後に発疹が出現します。特別な治療薬がないために、治療は安静と対症療法になります。これらの症状は多くは自然に軽快、回復しますが、時に出血傾向を伴うデング出血熱や血圧が下がりショック症状となるデングショック症候群に移行するなど重症化することがあり、この場合適切な治療を行わないと死に至ることがあるため注意が必要です。ワクチンや予防薬はなく、蚊に刺されないことが唯一の予防対策になります。
(3)交通事故による怪我:近年、交通量の増加に比例し、交通事故件数が激増しており、死亡事故も多発しています。邦人被害者も多くでており、当地の医療事情の悪さを考慮すると、被害に遭わないよう細心の注意が必要と思われます。
その他、頻度は低いものの、罹患した場合、重篤な状況になり得る疾患をいくつか挙げます。
(4)マラリア:蚊(ハマダラカ)の刺咬によりマラリア原虫がヒトに感染して生ずる疾患で、悪寒戦慄を伴う熱発作、貧血、脾腫、倦怠感などの症状があります。世界保健機構(WHO)は首都ビエンチャン特別市を除くラオス国内全域をマラリア流行地域に指定しています。特に山間部や南部メコンデルタにおいて、年間を通して患者が発生しています。マラリアには熱帯熱、三日熱、四日熱、卵形マラリアの4種類がありますが、ラオスでは熱帯熱マラリアが圧倒的に多く、迅速かつ適切な治療が施されないと重症化します。潜伏期間は熱帯熱マラリアで約12日とされています。ビエンチャン特別市で生活する邦人はマラリア予防薬を飲んでいません。しかし地方においては、年々感染者は減少傾向にあるものの、依然マラリアへの注意を要します。当地ではクロロキン(Chloroquine) およびスルファドキシン-ピリメタミン(sulfadoxine-pyrimethamine)耐性熱帯熱マラリアが報告されています。
(5)日本脳炎:アジア地域に広く分布する日本脳炎ウイルスによる感染症です。蚊(コダカアカイエカなど)が媒介し、ウイルスに感染した豚の血液を吸った蚊に人が刺されて感染します。感染してもほとんどは無症状か軽度の発熱程度で経過しますが、100-1000人に1人の割合で重篤な脳炎を発症します。潜伏期間は7-15日間とされ、突然の高熱、頭痛、全身倦怠感などで発症し、その後意識障害や神経障害が出現するなど、後遺症を残すことがあります。脳炎を発症した場合死亡率が20-40%と高く、日本脳炎に対する特別な治療薬は存在しませんので、予防接種や蚊対策が重要とされています。
(6)狂犬病:首都を含む国内全域において、狂犬病感染の危険があります。狂犬病ウイルスに感染した犬や猫等の動物に咬まれたり、舐められたりすることで感染し、発症した場合、ほぼ100%死亡します。人に感染した場合、潜伏期間は1-3ヶ月と長いのが特徴です。その後、発熱、食欲不振、傷口の痛みなどの前駆症状を認め、急性神経症状(のどの筋肉の痙攣)を呈し、最終的に昏睡状態に陥ります。当地では飼い犬への狂犬病予防接種が確実ではなく、また犬以外の動物からの感染の危険もありますので、無闇に動物に触らないことが重要です。咬まれた場合には、直ちに傷口をよく洗い、病院を受診しワクチン等の接種について相談してください。
(7)ウイルス性肝炎:代表的なものとして、経口感染するA型と血液・体液を介して感染するB型があります。A型は上述の感染性胃腸炎と同様な対策が必要です。B型に関しては、当地は高感染地域であり、出血を伴うような医療行為(輸血や歯科治療を含む)などを受ける場合、注意が必要と考えられます。またカミソリ、歯ブラシ等を共有することで感染する場合があります。A型、B型肝炎ともワクチンがあります。
(8)タイ肝吸虫症:調理不十分な淡水魚の経口摂取により感染し、吸虫が胆管内に寄生します。この地域に高率に発生する胆管癌と関連があるとの報告もあります。地元料理を食する際には、材料や調理法にも注意を払うことが重要です。
(9)レプトスピラ症:病原性レプトスピラは牛、豚、ネズミなどの腎臓に定着し、感染した動物の尿や尿に汚染された水や土壌に接触することにより、または汚染された水や食物を飲食することにより感染します。症状は発熱、頭痛、筋肉痛、眼結膜の充血などがあり、風邪症状の軽症型から、黄疸、出血、腎不全を来す重症型があります。特に雨季に流行がみられ、予防としてむやみに水の中(水田、洪水の後など)には入らないことが重要です。
(10)メコン住血吸虫症:川の中には皮膚から浸入する寄生虫が生息しています。ラオスでは南部地域(チャンパーサック県、コーン島周辺)で限局した発生が見られます。急性期には発熱、下痢、粘血便、血尿などが認められ、慢性期には肝硬変へと移行します。抗住血吸虫薬を用いた治療を行いますが、肝障害などの慢性例では対症療法しかありません。発生地域の水田、河川を素足で歩いたり、泳いだりする事は避ける方が良いでしょう。
(11)高病原性鳥インフルエンザ:ラオスにおいても例年家禽への感染が認められ、過去には人への感染死亡例も発生しています。当地へ在住、旅行をされる方は常に最新の情報入手に努めるよう心掛けてください(「10. その他の医療情報入手先」参照)。
(1)熱中症:当地は非常に高温多湿で熱中症の起こりやすい環境にあります。無理な行動、過度な運動を避け、十分な休息や頻回の水分を取るように努めてください。
(2)毒蛇咬症:当地には毒蛇(コブラ類及びハブ・マムシ類)が生息しています。一般的な観光ルートで被害に遭うことは稀と考えますが、エコツアー参加時等においては十分な注意をしてください。
(3)落雷:雨期には毎日のように落雷があり、死亡事故も起きています。雲行きが怪しくなってきたら、たとえ雷の音が遠くに聞こえていても注意が必要です。建物や車中に避難して、高い木には決して近づかないでください。
入国時に求められる予防接種はありませんが、当地では様々な感染症に罹患する可能性がありますので、以下の予防接種の実施が望まれます。
成人:破傷風、日本脳炎、A型肝炎、B型肝炎、狂犬病、麻しん(麻しんワクチンを今まで一度も受けたことがなく、かつ麻疹に未罹患の人)、腸チフス(日本では未承認)
小児:日本の定期接種(BCG、DPT、ポリオ、麻しん、風しん、日本脳炎)の他、A型肝炎(日本では16歳以上承認)、B型肝炎、狂犬病、インフルエンザ菌b型(Hib)、腸チフス(日本では未承認)
| 初回 | 2回目 | 3回目 | 4回目 | |
|---|---|---|---|---|
| BCG | 出生時 | |||
| ポリオ(経口生ワクチン) | 6週 | 10週 | 14週 | |
| DPT | 6週 | 10週 | 14週 | |
| 麻疹 | 9-24週 | |||
| B型肝炎 | 出生時 | 6週 | 10週 | 14週 |
| インフルエンザ菌b型(Hib) | 6週 | 10週 | 14週 |
*当国の小児定期予防接種は、WHOの拡大予防接種計画(EPI)に基づいています。邦人は各自、自主的に医療機関を受診して接種を受けることになります。
*一部病院を除き、DPT-B型肝炎Hib混合ワクチンを使用しています。
現地校・日本語補習校入学に関しては、予防接種記録・証明書は特段必要とされません。インターナショナルスクール入学に際しては、予防接種歴を求められることもありますが、接種証明書の提出は現時点では必須ではありません。
ラオス国内において適切な乳児健診を行うことは困難です。乳児の健診を希望される場合には、タイ・ウドンタニで、乳児の健康診断(タイには日本のような乳児健診制度はないため、日本と同様ではありません)が可能な病院があります。
所在地:Kouvieng Road, Simuang, Vientiane、グリーンパーク・ブティックホテル斜め向かいのフランス大使館所有グランドの一角にあります。赤い文字で書かれた看板がありますが、小さく見落とし易いので注意してください。
電話・ファックス:(021)-214150 (ファックス共通)または (021)-215713
緊急電話:(020)-56554794
概要:日本語は不可ですが、英語・仏語で対応しています。在留邦人が普段からよく利用しています。但し、入院施設は無く、レントゲン設備もありません。入院・精査が必要と判断された場合には、タイの病院への紹介、必要に応じ救急車の手配を行ってくれます。診療は土曜日は午前中のみ、日曜日は休診、平日も曜日により診療時間が異なるため、受診前に電話で確認を。夜間・休日の緊急時には医師が持つ緊急携帯電話に連絡するシステムになっています。小児の受け入れも可能で、予防接種、マラリアの診断、治療も行うことができます。歯科が併設されており、歯科受診時は予約が必要です。支払い方法は基本的に現金払いですが、一部の海外旅行保険の取り扱いは可能です。
所在地:Fa Ngum Road, Kao Nyot, Sisattanak, Vientiane、 International clinic(インターナショナルクリニック)の建物はFa Ngum通り(メコン川沿い)に面し、救急室の建物はMahosot通りに面しています。
電話:(021)-214022 (International Clinic)、(021)-214023(マホソット病院救急室)
(021)-214018(マホソット病院代表)、
ファックス :(021)-214020(International Clinic)
概要:マホソット病院は救急室およびインターナショナルクリニックを開設しており、インターナショナルクリニックでは多少英語のわかるラオス人医師が診療を行っています(入院施設・レントゲン設備有り)。インターナショナルクリニックの診療時間は月曜から金曜の8時から12時、13時から16時で、それ以外はマホソット病院救急室対応となります。
所在地:1159/4 Moo 2, Prajak Rd., Nongkhai、Thailandメコン川友好橋近辺
電話:+66-(0)42-465201 (66はタイの国際電話番号)
ファックス:+66-(0)42-465210
概要:ビエンチャン特別市内から最も近いタイ東北部の病院です。メコン川友好橋の国境で出入国手続きを行った後、タイに入ると車で5分程度の場所にあります。規模は小さいですが、入院施設があり、CT等の画像検査も可能です。歯科が併設されています。
所在地:555/5 Posri Rd., Amphur Muang Udonthani, Thailand ウドンタニ駅近辺
電話: +66-42-342555, +66-81-9540954(English Speaker)
ファックス : +66-42-341033
概要:友好橋から車で約1時間程度の場所にあります。国際サービス部門(英語可)を有し、ラオス在留の邦人も日頃より利用しています。ある程度のレベルを有する総合病院ですが、さらに高度な治療が必要な場合には、バンコクやコンケンなどへ搬送されます。ラオスからは公共交通機関の便が良くありませんので、緊急時には病院の救急車を手配するか、自家用車を利用する必要があります。歯科が併設されており、また小児科医が常駐していますので、乳児の検診が可能です。
在ラオス日本国大使館ホームページ http://www.la.emb-japan.go.jp/index_j.htm ![]()
当館ホームページには、鳥・新型インフルエンザ関連情報を始め、各種感染症流行状況を掲載していますので、常に最新の情報入手に努めてください。
医師 タンモー
飲み薬 ヤーキン
注射 サックヤー
頭痛 チェップ フア
胸痛 チェップ ウック
腹痛 チェップ トーン
下痢 ロン トン
発熱 ペン カイ
吐気 プアット ハーク
傷 バー
マラリア カイ ニュン ライ
デング熱 カイ ルア オック
寄生虫 メ トーン
具合が悪い フースック ボー サバーイ
病院へ連れて行って欲しい ヤク ハイ パー パイ ホンモー