平成20年度 あなたの目で見る国造りの現場 ODA民間モニター報告書 Official Development Assistance
バングラデシュ人民共和国 People's Republic of Bangladesh
1. ジャムナ多目的橋建設計画(有償資金協力)
視察プロジェクト概要
実施年度
供与限度額
実施機関
平成6年度
21,562百万円
ジャムナ多目的橋建設公団
(JMBA: Jamuna Multipurpose Bridge Authority)
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実施目的
必要性
 バングラデシュの中央を流れるジャムナ川は、同国の3大河川の1つであり、国土を東西に分断する形で南北に流下している。当時、ジャムナ川を渡河する唯一の手段であったフェリーは、本事業地の上下流2区間で運航されていたが、天候によりその運航が左右されていたほか、片道の運行時間が2時間を超えていた。また、乾季・雨季毎の水位・川幅の変化が激しいため、フェリー施設拡充が難しい状況にあり、渡河する車両のうち6割以上を占めるトラックがフェリーに乗船するための待ち時間は平均36時間となっていた。そのうえ、ジャムナ川を渡河する交通量は1998年まで年平均6%以上、1999年以降も5%以上の増加が見込まれていた。
 このようにジャムナ川は東西間交通のボトルネックとなり、西側穀倉地帯で栽培された農作物の東側消費地への運搬に支障をきたしていたうえ、西部地域は東部に遍在したガス・電力・通信などのインフラの恩恵をこうむることができず、西側地域の開発が取り残される状況となっていた。このような状況から、1971年のバングラデシュ独立以降、ジャムナ川への架橋計画は国民の悲願となっていた。
事業概要
 事業内容は(1)本橋梁本体の建設(約4.8km、片側2車線)、(2)アプローチ道路の建設(東側:16km、西側:14km)、(3)河川制御の実施(東西各岸約2.2kmの護岸工事)、(4)上記土木工事の施工監理および実施機関職員トレーニングに係るコンサルティング・サービスからなる。
 なお、本事業の資金のうち、世界銀行、アジア開発銀行、国際協力銀行が均等に200百万ドル相当をジョイント・ファイナンス方式により融資、バングラデシュ政府が残り分である96百万ドルを負担している。
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効果  ジャムナ川にガスパイプライン、送電線、鉄道、通信も敷設された橋梁が建設されたことにより、増加する東西交通量に対応し、輸送上の問題の解決を図ると共に西側地域の経済活動を活性化することによって東西間の地域格差の是正が図られている。
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モニターからの意見・感想
澤井 史郎
 視察の主な目的を(1)ジャムナ多目的橋完成による経済効果の有無、(2)ジャムナ多目的橋の建設に伴う住民移転計画の達成状況として訪問した。(1)については、多目的橋の建設により東西地区の経済交流が盛んになり経済成長につながっていることを確認することができ、日本のODAが有効であったと評価できる。(2)については、住民からは以前よりも生活が改善されたという意見も聞かれたが、以前より土地が狭くなり生活は苦しくなったという相反する意見も聞かれたので、今後とも継続して評価し、移転した住民の生活改善のためにコミュニティーの確立や医療、教育の充実等で支援を継続していく必要があることを強く感じた。
松本 莉佳
 物流が円滑化され、さらに同時に西側地域において農業発展を超えた発展を可能にする、バングラデシュの長期発展を見据えた素晴らしい計画であった。またこのジャムナ橋利用者増加による政府の増収が、さらなる社会福祉事業に繋がればと願う。しかしながら唯一の問題は、橋建設に伴い移転せざるを得なかった住民の生活である。今迄自給自足で得ていた食糧を現金で得なければならなくなったが、実際今できる仕事は人力車のみであり、生活は苦しい。ジャムナ橋への感謝を述べつつも「食べ物をくれ」とジェスチャーで訴えられたことが忘れられない。それを考えると、橋維持において彼らの雇用機会を増やすなど今後も雇用拡大が重要課題であろう。
谷口 稜子
 ジャムナ橋は車線が計4つと鉄道の線路がある大きな橋です。以前は川を渡るために長時間フェリーを待たなければならなかったということでしたが、建設後には人・物・ガス・情報の移動が活発に行われるようになったそうです。これにより、東西の食糧格差、資源格差が減りましたし、橋の通行料により利益も出ています。以上より、ジャムナ橋建設は必要であり適切な資金援助であったと考えます。しかし、移転住民のアフターケアについては不十分であったと思いました。農業ができなくなりリキシャの仕事をするしかなくなったという声もありました。
神島 宏一
 この橋は現地通貨の100タカ紙幣の挿絵にもなっていることから、このプロジェクトがこの国に果たしている役割の大きさを推し測ることができます。
 農産物を首都圏に運ぶのに3日かかっていたものが、6時間で運べるようになったとの説明には十分効果として納得させられました。
 しかしながら1日に平均7,384台の交通量があるとの説明でしたが、実際この橋を渡ってみた時の感想としては本当にそれだけの交通量があるものかと疑念が残りました。時間が許せば異なる曜日、時間帯で交通量の効果を確認したいところでしたが残念です。
 環境配慮や移転補償を工事と同じくらい重視されたようですが、移転した住民へのインタビューで移転に対し一部の方から不満の声が聞かれたことも残念でした。
南川 俊英
 100タカ紙幣やコインの絵柄にもなっているジャムナ多目的橋の建設は大変な難工事であったようだ。軟弱な地盤のため橋げたを支える杭は地中深く83mも打ち込み、頻繁に川の流れが移動するために護岸工事を施し川の流れを一定にするなど、ちなみに橋梁本体工事よりも護岸工事の費用が大きかったとのこと。現在では、交通量も1日あたり平均7,000台を超えており総事業費750億円に対し毎年の通行料金23億円の収入があると聞き返済の可能性も高いと思われる。ましてや、以前はフェリーだけに頼っていた東西の経済交流がスムーズになり物資輸送や人的交流が進みバングラデシュの発展に大いに貢献できている橋だと実感した。
堀江 徹
 交通(車両、鉄道)、ガス、電力、通信の多目的橋建設により、大河川による国土の分断を克服するという本事業は、途上国でまず確立が求められるインフラ基盤づくりを大きく進めるものとして援助価値が高いと評価できる。
 興味を引いたのは初期段階から事業実施による影響を把握し対策するプログラムが組み込まれていたことである。その調査結果や視察した移転住民の状況からはまだ改善の余地はあるように思われるものの、自然環境等への悪影響は折角の大事業の価値を大きく減損しかねないわけで、経済効果、効率のみに止まらない複眼的な視点からの援助評価のあり方を学んだ。
吉村 哲彦
 ジャムナ橋の通行料収入から維持管理費などをさし引いた収支が黒字であることから、プロジェクトとしては成功しているという説明を受けました。しかし、実際に橋を渡ってみると、もっと多くの車両が通行できる余裕があるのに、あまり車は走っていないという印象を受けました。この橋の通行料である1,000タカ(中型トラック)や400タカ(乗用車)はバングラデシュの物価水準からみれば極めて高額です。この橋によって物理的にバングラデシュの東西がつながったとしても、日本の四国に架かる橋と同じく、高額な通行料が新たなバリアーになっているのではないかと思われました。ジャムナ橋の通行料を一時的に下げてみて、需要や収支の変化を調べる社会実験を行ってはどうかと思いました。
山田 貴子
 100タカの紙幣に描かれるジャムナ橋。ジャムナ橋によって東西の交通だけでなく送電線やガスパイプライン等により経済発展に大きく寄与できているのは明らかであった。しかし、この橋を作る際に移転を強いられた住民がいた。彼らは、昔の生活の方が良く移転することは嫌だったが、橋が出来たことはとても良かったと話をしてくださった。生活が大きく変わってしまい不満があったとしても、彼らにとっても、この橋の存在が大きいものであるということを確かめられたことでジャムナ橋がいかに意味のあるものなのか理解することができた。だが、西側では所得が減少し、移転地から去っていた人々が4割近くいるということを考えると、住民移転後のフォローがきちんと出来ているのか、そういった部分が今後も課題となっていくのではないかと感じた。
明瀬 李花子
 ジャムナ多目的橋はバングラデシュを東西に結ぶライフラインであると感じました。素人でも、その建設の緻密さを感じることができます。「橋を架ける」ということは、単に橋それ自体を建設するのではなく、その周辺に十分な土台を築かなくてはなりません。特にジャムナ川は両岸が非常に不安定で、その岸を固定し、川幅を安定させるため、護岸工事に多くの建設費がかけられています。またその橋に続く道も東西に建設されており、こういった部分に日本のODAの建設段階からのきめ細やかさがあると思いました。ジャムナ橋は紙幣の模様でもあり、バングラデシュの方々にとって、「希望への架け橋」なのだなと思いました。
横治 久美男
 国家の顔である紙幣や硬貨にデザインされたジャムナ多目的橋はバングラデシュのシンボルといえる。日本は円借款約215億円を拠出している。対岸の住民の話では、橋は東西の交通輸送、雇用の創出、電力ガス通信の活性化に貢献しているようだ。また住民移転問題は、適正な補償により住民に評価されていることもわかった。橋にはテロ防止のための警備員の常駐も確認した。橋上の交通往来の支障防止のために歩行者禁止は理解できるが、東西の人的交通活性化のためにも無料の歩行者部分の建設を第二のジャムナ橋には考慮されてもいいのではと感じた。今やジャムナ橋はバングラデシュにとって国内経済格差の是正、持続的経済発展に不可欠な存在である。
杉浦 美恵子
 西部の農作物を東部に、東部に集中したガス、電力、通信を西部に輸送する大きな意味での橋渡しとしてジャムナ橋は大きな使命を担っていた。日本のこの有償資金協力はたいへん有効であった。フェリーの待ち時間8~48時間に及び、渡河時間がさらに2時間半かかっていたところをなんと12分に短縮したことは効果絶大であったと考える。
 この地点を選択した説明を受け、総合的にみて経済効果が高いこの地は適当であったと考える。橋の西側住民移転の苦い教訓を生かし、次回は移転住民の数を減らすこと、移転先を早く確保することを反省点として今後活動することがさらにバングラデシュの経済発展に寄与するであろう。
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