
平成18年8月
1. 概要
(1) 7月31日と8月1日、外務省は内閣府と国連開発計画(UNDP)との共催にて、「UNDP・日本WID基金シンポジウムおよびワークショップ」を国連大学に於いて開催した。
(2) 7月31日のシンポジウムでは、ミレニアム開発目標(MDGs)とジェンダー平等を実現するためのツールとしての「ジェンダーに配慮した予算(注)(GSB)」の可能性を検証し、それを推進していくことを目的に、国際的に著名な専門家による基調講演や開発実務者による報告等が行われた。
(3) 政府関係者、大学、NGO等を中心として100名程度を集め、活発な意見交換が行われた。
(4) 8月1日のワークショップでは、政府や援助実施機関の担当者レベルを主たる対象として「ジェンダーに配慮した予算」の基本的な概念に関する講演や具体的取組の事例の紹介等が行われた。
2. シンポジウムの概要
(1)開会の辞
(イ) 西本昌二UNDP開発政策局長より、ジェンダー平等に対する取組として、これまでWID基金の活動を通じ、総額1697万ドル、71件のプロジェクトを実施し、様々な分野で成果を上げていることについて報告があった。また、本シンポジウムの議題でもある「ジェンダーに配慮した予算」の重要性について発言した。
(ロ) 猪口邦子内閣府特命担当大臣(少子化・男女共同参画)より、男女共同参画社会の構築に向けた国内の取組について紹介があった。また、本年6月30日及び7月1日に16ヵ国・2国際機関を招いて東アジア男女共同参画担当大臣会合を東京で開催し、東アジアの各国が連携して男女共同参画の実現を目指して取り組んでいくこと、GSBを推進していくことや、本閣僚会合を年次開催するプロセスを立ち上げる決定を含む旨の東京閣僚共同コミュニケを採択した等、発言があった。
(ハ) 杉田伸樹審議官より、外務省としてGADイニシアティブの実施に向けて、ODA関係者の意識改革を図ると共に、ジェンダー統計の整備やジェンダー分析の強化に取り組んでいること、開発途上国への支援について日本は、ジェンダー関連活動において比較優位を有する国際機関や他ドナー、NGOs等との連携を重視していること、特にUNDP内に設立した日本WID基金については、「ジェンダーに配慮した予算」の研修を含め大きな成果を上げており、こうした成果を活用しながら、GADイニシアティブの実施に努めていく旨、表明した(開会の辞別添)。
(2)基調講演
ダイアン・エルソン エセックス大学教授より、「ジェンダーに配慮した予算(GSB)」に関する基調講演が行われた。GSBを導入することの効果として、政府のプログラムの透明性、効率性、公平性、説明責任の向上に寄与することが説明された。
(3)基調報告
セリム・ジャハンUNDP開発政策局貧困削減顧問より、日本WID基金により、モンゴルやネパール、南アフリカ、ウガンダ、CIS諸国等で実施されたGSB(Gender Sensitive Budgeting)に関するプロジェクトがどのように行われ、いかなる成果を上げたか等について報告がなされた。また、ジェンダー主流化のためには、資金を配分するだけでなく政策や制度をリンクさせることが重要であり、GSBは、予算と政策や制度をリンクさせる上で、重要なツールとなりえる等、説明がなされた。
(4)フィールドからの報告
UNDP・日本WID基金の支援による地域別人材養成研修に参加したセネガル、グルジア、フィリピンの3ヵ国より、同研修のフォローアップとして各国でどのような取組が行われたかについて報告が行われた。
(5)パネル・ディスカッション
(イ) 目黒依子上智大学教授(国連婦人の地位委員会日本政府代表)をモデレーターとし、ミレニアム開発目標の達成に向けて、「ジェンダーに配慮した予算」がどのように貢献するかについてパネル・ディスカッションを行った。
(ロ) パネリストとして、ダイアン・エルソン エセックス大学教授、岡庭健経済協力局開発計画課長、村松安子東京女子大学名誉教授、セリム・ジャハンUNDP開発政策局貧困削減顧問が参加し、それぞれの組織における取組やパネリスト自身の経験等について発表し、意見交換を行った。
(ハ)参加者からは、男女共同参画社会の構築のためには、エンパワメントとジェンダー主流化の両方を実施していくことが重要であり、そのためにも定量的な指標が必要である。今後、ジェンダー主流化を定量的に示す指標を検討していく必要があるとの発言がなされた。
また、「ジェンダーに配慮した予算」については、ジェンダーに対する意識の向上、開発援助の効率性や公平性の向上により、ジェンダー平等やMDGs達成のためのツールとしての可能性が示されたが、それを評価するための指標が必要であるとの発言がなされた。
3.ワークショップの概要
(1)西本昌二UNDP開発政策局長より、近年のUNDPのジェンダー分野における取組について説明がなされた。
(2)斎藤万里子UNDP・日本WID基金担当官より、WID基金実績とイノベーションの紹介がなされた。同基金では、新しい課題に対して革新的な取組をプロジェクトレベルで実施していることが特徴であり、現在、マクロ経済、ICT(情報通信技術)、ガバナンスを重視した取組を行っている等、説明がなされた。
(3)村松安子東京女子大学名誉教授より、「ジェンダーに配慮した予算」の概要として、その展開過程や分析ツールについて説明がなされた。
(4)大崎麻子開発政策コンサルタントより、「ジェンダーに配慮した予算」について、その政策ツールとしての可能性について実務的な観点から説明がなされ、GSB導入のためのトレーニング・マニュアルの紹介がなされた。
4.評価
(1)今回のシンポジウムは、100人近い参加者があり、日本政府が2005年3月に「ジェンダーと開発(GAD)イニシアティブ」を策定し、ODA全般にわたってジェンダー主流化に努めていること、GADイニシアティブの実施に向けて、ODA関係者の意識向上や体制整備に努めていること等について広報することができた。
(2)UNDP・日本WID基金は、95年以来、UNDPの知見と経験を活かして先駆的な取組を積極的に実施してきている。今回のシンポジウムのテーマであるGSBに関しては、各国政府関係者の能力強化のための研修を実施している。UNDP及び参加者より、日本政府が10年以上にわたり、同基金に対して拠出し続けていることに対して高い評価が示され、今後の継続的な拠出に対して期待が寄せられた。
(3)なお、参加者からも本シンポジウムが、内閣府、外務省、UNDPとの共催により開催されたことで、ジェンダーの重要性を広く認知せしめることができたと本シンポジウム開催への高い評価が示された。また、今回のシンポジウムにより、国内外の男女共同参画社会の構築のためのオーナーシップの強化につながることが期待されるとの発言もあった。
(注)ジェンダーに配慮した予算とは、国、地方自治体等の予算をジェンダー平等という視点から分析し、現実の予算がジェンダー平等政策を推進するように配分されているか、配分が既存の男女間の不平等に如何なる影響を及ぼすか、ジェンダー平等社会形成へのニーズを満たす予算配分になっているか等を査定・評価する手法のこと。
1995年の第4回世界女性会議において採択された北京行動綱領では、ジェンダーに配慮した予算をジェンダー主流化の手段として位置付けており、1984年のオーストラリアでの取組を端緒として、世界の約50ヵ国で実践されている。